
Image:Bentley
| ベントレーは意外や「最速」記録にこだわっている |
「氷のサーキット」を制した2.5トンのモンスター
世の中には「記録に無頓着」な自動車メーカーが存在する反面、「記録に固執する」自動車メーカーも存在します。
そして英国紳士の国を発祥とするベントレーは意外にも後者なのですが、今回ベントレーは、北極圏からわずか160kmに位置する世界最北のアクティブなレースコース「ドライブセンター・アリーナ」(スウェーデン北部・フェルフォシュ)にて、新型「フライングスパー スピード」を用いて2分58秒という驚異的なタイムを叩き出し、新たな「ウィンター・ラップレコード」を樹立したと発表することに。
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この記事の要約
- 前人未到の記録: 厚さ30cmの氷と雪に覆われた2.05マイルのコースを2分58秒で走破
- 驚異の最高速: わずか450mの氷の直線で時速193kmに到達
- 最強のハイブリッド: 782馬力のV8ハイブリッド搭載、スパイクタイヤ以外は「完全な市販仕様」
- ヘリテージへの敬意: 名車「ターボR」の40周年を記念した伝統のグリーンを纏っての快挙
広大な雪原が広がるスウェーデン北部、かつての軍事基地を改装した「ドライブセンター・アリーナ」は冬季でも稼働する世界最北サーキット。
ベントレーはこの過酷な環境に最新の「フライングスパー スピード」を持ち込み、路面が完全に氷と雪に覆われた低ミュー状態であるにもかかわらず物理法則をあざ笑うかのようなパフォーマンスを見せつけ、氷上でのサーキット最速記録を塗り替えることに成功しています。
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記録を支えた「ウルトラ・パフォーマンス・ハイブリッド」
今回の快挙を成し遂げた「源」はベントレーが誇る最新のハイブリッドシステム。
- 心臓部: 600馬力の4.0L V8ツインターボ + 190馬力のエレクトリックモーター
- トータル出力: 最高出力 782 PS / 最大トルク 1,000 Nm
- 駆動制御: 今回の記録はあえてESC(横滑り防止装置)を完全にオフにして計測される
本来なら制御不能に陥るはずの氷上で、リア寄りの重量配分(48.3:51.7)と、後輪操舵、そして電子制御LSDを組み合わせた「ベントレー・パフォーマンス・アクティブ・シャシー」が、圧倒的なトラクションと回頭性を生み出しており、その優秀さが改めて証明されています。
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主要スペックとパフォーマンス
記録を樹立した車両は、21インチのスパイクタイヤを装着した以外、すべて標準の市販スペックです。
| 項目 | スペック詳細 |
| ラップタイム(氷上) | 2分58秒(ウィンター・レコード) |
| 氷上到達最高速 | 193 km/h |
| 0-100km/h加速 | 3.5秒 (公称値) |
| EV航続距離 | 最大 76 km (WLTP) |
| 合計航続距離 | 829 km |
| 車両重量 | 約 2,500 kg 超 |
「スパイクタイヤ」の進化と限界
今回の記録で使用された21インチのスパイクタイヤ(Studded Tyres)は、氷上でのグリップを確保するために不可欠ですが、現代の高性能車ではタイヤの進化だけでなく、「モーターによるトルク制御」が大きな役割を果たします。
エレクトリックモーターは1000分の1秒単位で出力を調整できるため、ガソリン車よりも遥かに緻密にスリップを抑制でき(ガソリン車は1階の燃焼に4つのサイクルを減るのでそこまで細かいトルク制御ができない)、この「EV技術×AWD」の融合こそが氷の上で2.5トンの巨体を矢のように加速させる秘密というわけですね。
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40年前の伝説「ターボR」へのオマージュ
今回の記録車両(登録番号:Y15 BML)は、1985年に登場した名車「ターボR」の誕生40周年を祝う特別仕様。
1986年、ベントレー・ターボRは英国ミルブルック・テスティンググラウンドにて1時間の平均速度225km/hという当時のセダンとしては異例の記録を打ち立てており、今回の氷上アタックはその「タフで速いベントレー」のDNAを現代に蘇らせたものだと説明されています。
ボディカラーの「ブルックランズ・グリーン」とイエローの細いライン、そしてリネンとカンブリアングリーンの内装は、まさにヘリテージ・コレクションのターボRそのものを反映しています。
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結論:究極のグランドツアラー、その真価
「フライングスパー スピード」が示したのは、単なる速さだけではなく、マイナス数十度の極寒、そして予測不能な氷の上であっても「ドライバーが意のままに操り」最高峰のラグジュアリーを享受できるという「全天候型パフォーマンス」の真髄です。
新型フライングスパーは超高級セダンでありながら、スーパーカーをも凌駕する動力性能を保有すること、そして日常の移動を冒険に変える”地球上で最も多才な一台”であることを証明したわけですね。
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参照:Bentley

















