| 本当にこの性能を出せるのか? |
さて、コロナウイルスの影響にてほぼ全てといってもいいくらいのメジャーな自動車ショーが中止または延期となってしまった2020年。
ただしコロナウイルス発祥の地でもある中国だけは異なるようで、なんと9月26日から北京モーターショー(オートチャイナ)が開催されることとなっています。
そして北京モーターショーに向けて各自動車メーカーとも様々な準備を進めており、ニューモデルも続々アナウンスされているという状態ですが、今回は中国最古の自動車ブランドにして国有ブランドの一つ、紅旗より”中国初”となるハイパーカー「S9」、そして最高級サルーン「H9」、フラッグシップSUV「E-HS9」が発売されています。
なお、いずれもコンセプトモデルもしくはプロダクションモデルが”発表”されてはいたものの、”発売”が明言されたのは今回が初なのだそう。
紅旗S9は1400馬力
まずは紅旗S9。
これは2019年にコンセプトカーとして発表されていたハイパーカーが実際に発売されるもので、デリバリーは2021年、価格は1000万人民元(邦貨換算で1億5500万円)、出力はなんと1400馬力。
エンジンはV8ターボで、これにモーターが組みわせられるPHEVとなるそうですが、驚くべきは0-100km/h加速が1.9秒、最高速は400km/hということ。※当初はピュアエレクトリックの予定だと聞いていたが、やはり技術的に難しかったようだ
この「1.9秒」は(まだ発売されていないものの)世界最速を標榜するテスラ・ロードスターやリマックC_Twoと同じレベルの数字でもあり、これらは加速に有利なピュアエレクトリックカー。
よって、本当にこの数字を達成できれば、紅旗S9は(PHEVといえど)ガソリンエンジン搭載車としては「世界一の加速」を持つことになりそう。
正直なところ、この性能を実現するのは難しいだろうと思うものの、紅旗は毛沢東の意向によって設立されたブランドでもあり、中国共産党幹部御用達ブランドでもあるので、「国家の威信をかけて」実現してくるのかもしれません。
ちなみにこのS9の生産台数は70台に絞られるそうですが、一体誰が買うんだろうなという印象も。
もしかすると愛国心の強い中国人富豪が購入するのかもしれません。
こちらは紅旗S9のインテリア。
アルカンターラや鍛造カーボンファイバーが使用され、なかなかに格好良い仕上がりですね。
紅旗H9はロールスロイス・ファントムと真正面から激突?
紅旗の最高級サルーン、H9もすでに発表はなされていたものの、今回ようやく「発売」に。
その価格は309,800中国元(約4800万円)~538,900中国元(約8300万円)に設定されており、ざっとロールスロイス・ファントムと同じくらいということになりますね。※ただし中国では輸入車に関税等の税金が加算されるので、中国国内に限ってはファントムよりはずっと安いクルマということになり、実際にはメルセデスAMGのアッパークラスセダンやBMW M5、アウディRS7あたりの現地価格に近いと思われる
ちなみに現在の紅旗でチーフデザイナーを務めるのはロールスロイスで長年デザイン部門を率いてきたジャイルズ・テイラー氏。
この紅旗H9に積まれるのは2リッターターボ(252馬力)もしくは3リッターV6スーパーチャージド(283馬力)。
トランスミッションは7足デュアルクラッチ、そしてボディサイズは全長5,137ミリ、全幅1,904ミリ、全高1,493ミリだとされています。
なかなかに立派な体躯を持ち、高級感溢れるデザインを持っているとは思うものの、2リッターエンジン搭載車に5000万円はちょっと払えない、というのが偽らざる心境。
ちなみに中国のサルーンやSUVのデザイン的傾向として、「フロントは大きなグリルで威圧的、しかしリアはクーペ風」というものがあるようで、たしかに現地でホンダが販売するSUV「アヴァンシア」もそんな感じですね。
E-HS9はピュアエレクトリックSUV
そしてSUVにおけるフラッグシップ、E-HS9もやはり「前がドーンと立派で、後ろはスマートなクーペ風」SUV。
ロールスロイスっぽい顔つきを持っていますが、これはやはり紅旗の意向でもあり、そのため(この顔つきをデザインするため)にジャイルズ・テイラー氏をスカウトしてきたのだと思われます。
ボディは全長5,209ミリ、全幅2,010ミリ、全高1,731ミリとやはり迫力のあるサイズを持ち、ホイールは標準で21インチ、オプションでは22インチを用意。
このE-HS9は「ピュアエレクトリックカー」であることも一つの特徴で、出力は218HPと333HP。
333HPのほうだと0-100km/h加速3.9秒、そして一回の充電あたり走行可能距離は500~600kmくらいだと言われます。
ちょっと不思議なのは、ハイパーカーのS9を除けばH9ともども出力が低いということで、中国の顧客は出力をあまり気にしないのかもしれません(それよりも、押し出しの強いルックスや豪華な室内のほうが重要なのかも)。
これについてぼくが思うのは、中国にて自動車が普及し始めた頃はすでに高出力エンジン、さらに直噴やターボ、デュアルクラッチといった先端技術が外国から当たり前のように流れ込んでおり、日本の自動車黎明期のように「30馬力」といったような非力でクルマを走らせるのに困ったり、ハイパワーな外国車を羨むような時代を経験していないわけですね。
よって、パワーやスピードに対する飢餓感がなく、むしろステータスシンボルとしての高級感に対する渇望のほうが強いのかもしれません。
なお、インテリアの画像はないものの、4シーターのほか6シーター、7シーターが選べるようで、「超高級」だという情報も。
参照:CARNEWSCHINA