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2021年4月の中国ではテスラが「一人負け」。現地ではテスラに対する逆風が吹き荒れ、テスラは上海工場の拡張を凍結

2021/06/01

日本でもテスラの販売が値下げにより急増

| 新しく現地で改定された「消費者権利保護法」により、テスラ・モデルSの不具合に起因し、車両価格の3倍の賠償金を獲得したユーザーも登場 |

アップル製品と同じく、力をつけた中国メーカー製品に「その地位を奪われる」?

さて、テスラの「中国販売がヤバいんじゃないか」という報道が相次いでいる模様。

テスラは2020年に50万台の車両を販売していますが、そのうちの15万台近くが中国市場にて販売されており、つまり中国はいまやテスラにとって屋台骨を支える「巨大市場」となっているわけですね。

しかしながらAFPによると、テスラの中国市場における販売台数は25,845台にとどまり、これは3月に比較すると1万台も少ない、とのこと。

その一方で中国自動車メーカー「3強」であるNIO(上海蔚来汽車)、Li Auto(理想汽車)、Xpeng(小鵬汽車)の販売は伸びており、テスラが「一人負け」だとも報じられています(ただ、テスラの昨対、中国EVメーカーの具体的な販売台数が報じられていないので、単純にこれを鵜呑みにすることはできない)。

やはりきっかけは上海モーターショー

なお、この販売失速のきっかけとなったのはやはり「上海モーターショーにて、中国人女性が抗議を行った」という例の一件。

これは、該当女性の父親がテスラ・モデル3を運転していたところ、ブレーキが効かなくなり事故を起こしたというもので、その後のテスラの対応に納得が行かなかったことからたびたびの抗議活動に転じています。

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参考までに、これ以前にも「車内カメラ」のセキュリティ問題に関連し、中国の政府機関と軍事施設にテスラ車の立ち入りが禁じられたという件もあり、さらには中国当局から消費者への対応のまずさを指摘されることがあり(テスラ幹部が当局に呼び出されたとも言われる)、中国政府の主催するシンポジウム、会合を欠席することがあった、とも。

なお、中国は「(最近のアリババを見てもわかるように)政府の以降によって」いかようにも企業の運命が左右される傾向にあり、こういったテスラの「強気」な態度は非常にマズいのかもしれません。

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米国企業は、他の国においても「米国と同じ展開」を好む

参考までに、米国企業の多くは自国の商慣習や文化、権利を諸外国の展開に際しても持ち込む傾向が強く、日本においても「(米国企業が)参入→撤退」となるケースがいくつか見られます。

細かい例を上げるとキリがありませんが、簡単に言うと「その国や消費者の嗜好に商品やサービスを合わせるのではなく、アメリカでの展開と同じ製品とサービスを他の国でも均一に行い、それにその国の商慣習や消費者を従わせる」ということですね。

ただ、業種や業態によってはこれが奏功する例もあり、成功したものだと「スターバックス」、失敗したものだと「ウォルマート」。

中には、サブウェイやケンタッキー・フライドチキン(KFC)のように、日本市場にあわせた展開を行って日本市場に適応した企業も存在します。

テスラは今回の事例を受け、最近になって中国の関係する機関との連携を強め、政府への対応を行うチームを強化するなど、中国にあわせた動きを開始しているとも伝えられますが、もし、テスラが中国政府の機嫌を損なうようなことがあれば「中国市場から締め出される」ことも現実的に起こり得ると考えられ、ここは慎重な対応が要求されるところですね。

テスラ・モデル3

中国では消費者の権利があまりに強い

なお、中国では消費者が強く保護されており、たとえば2019年6月25日には「消費者権利保護法」が改定されており、その骨子としては消費者が被った損失の賠償を(メーカーが)行わねばらないというもの。

実際に「600万円で購入したテスラ・モデルSの不具合発生につき、車両返却と1800万円の賠償金を支払うよう」という判決が2020年12月4日に下されており、基本的に賠償額は損害の「3倍(改定前は1倍だった)」。※テスラは控訴している

つまりこのケースだと、600万円のテスラをまずは返品し、その代金を受け取った上で、600万円の3倍である1800万円を(消費者が)受け取るということになり、中国では「退一賠三(返品に加えて3倍の補償)」とも言われているようですね。

奇しくもテスラは、この新しい消費者権利保護法の判決第一号となったそうですが、おそらくは現地でこれが大きく報道され、それによって「自分もテスラの不具合を主張すれば大金が手に入る」と考えた人がニョキニョキと出てきた可能性もありそうです。

参考までに、テスラの「クレーム率」は実際には高くなく、2020年におけるクレーム率だと、テスラ・モデル3は1万台に対して0.7件に留まっており、現在中国のEV市場において「ダントツの1位」を独走する宏光MINI EVはモデル3の倍近い「1.3」。

そのほかBYD「漢」は3.2という高率を記録しており、実際にテスラの製品にさほど問題があるというわけではないようです。

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これらの状況を見るに、現在中国では「中国の自動車メーカーを持ち上げ、外国の自動車メーカーを貶める」構図ができあがりつつあるようにも思われ、「スマートフォン黎明期にはiphoneがもてはやされるも、その後中国のスマホメーカーが技術力を付けてくると、アップルが一気に蹴落とされた」という状況にも似ているのかもしれません。

参照:AFP, 現代ビジネス

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