| 今回の新型メルセデスAMG SLには見どころが多い |
新型メルセデスAMG SLがこれまでで「最高のSL」であることは間違いない
メルセデス・ベンツがついに待望のフルモデルチェンジ版「新型SL」を発表。
今回のR232世代のSLについてはトピックが多く、まずはメルセデス・ベンツブランドからメルセデスAMGブランド専売となったこと。
そしてリトラクタブルハードトップからソフトトップに戻されたこと、そして70年近い、長い歴史の中で初めて4WD(4MATIC)を獲得したこと。
その他にも「アクティブアンチロールスタビライザー付きAMG ACTIVE RIDE CONTROLサスペンション」、「リアアクスルステアリング」、「AMGセラミックハイパフォーマンスコンポジットブレーキシステム(オプション)」、「プロジェクション機能付きデジタルライト」採用など見どころが多く、その内容を見てみましょう。
メルセデス・ベンツSLは70年近い歴史を持つ
すべてのルーツとなるメルセデス・ベンツ300SL(W194)は今から遡ること約70年前、「モーターレースでの成功を通じてメルセデス・ベンツブランドの可能性を広げるというビジョンのもとに」誕生していますが、実際にモータースポーツにおいて、ル・マン24時間レースではワン・ツー・フィニッシュ、ニュルブルクリンクのグランド・ジュビリー・プライズでは1位から4位までを独占するなど輝かしい成績を収め、これによって瞬く間に「伝説」へ。
1954年には300SLの市販スポーツカー(W198)が登場し、これは「ガルウイング」ドアを採用したことでも知られており、他にも「パゴダ」(W 113、1963~1971年)、18年間製造された不朽の名作「R 107」(1971~1989年)、その後のモデルでは、印象的なウェッジシェイプから自動車の彫刻とも言われる「R 129」など、歴史に残る名車が揃っているのがSLの系譜です。
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メルセデス・ベンツにてマーケティング&セールス部門を担当するブリッタ・ゼーガー氏によれば、 「SLはアイコンです。約70年にわたり、この個性的なスポーツカーは、世界中のあらゆる世代のメルセデスのお客様に喜ばれてきました。メルセデスAMGからロードスターが復活したことで、新型SLはこれまで以上に時代を超えた魅力の象徴となっています」とコメント。
さらに「新型SLは、初代SLの持つスポーティな遺伝子と、AMGらしいドライビングパフォーマンスを融合させています。同時に、絶対的なトップレベルのラグジュアリーと快適性を実現しています。この組み合わせは、スポーツカーセグメントでは独自の存在でありであり、エクステリアのみではなくインテリアにも反映されています。最高レベルの快適性と品質がスポーティさと融合しているのです」とも。
加えてメルセデスAMGの取締役会長であるフィリップ・シーマー氏は「アナログの世界と最先端のデジタル機器の高品質な組み合わせは、新型SLが現代のアイコンとして生まれ変わったことを明確にしています」と語り、ダイムラーグループのチーフデザインオフィサーであるゴーデン・ワグナー氏は「新型SLでは、これまでのSLのデザインを再構築しました。表情豊かなエクステリアは、軽やかでピュアな印象を与え、官能的な美しさと贅沢なデザインを見事に調和させています」と述べ、さらにメルセデスAMG社の最高技術責任者であるヨッヘン・ヘルマン 氏は「私たちメルセデスAMGは、このスポーツカーのアイコンともいえるモデルの新バージョンを開発する機会を得たことを大変光栄に思っています。新型SLの開発全体を任されたとき、私たちは既存の構造をベースにすることなく、ゼロからスタートすることができました。その結果、アファルターバッハ(AMGの本拠地)の技術力の高さを改めて示すことができたと自負しています。この新しい2+2コンセプトは、俊敏なドライビング・ダイナミクスと、高いレベルの快適性、そして日常生活での制限のない適合性を兼ね備えていまるのです」と自信を見せるなど、新型SLはメルセデス・ベンツ全体の大きな期待を背負って誕生したことがわかります。
新型メルセデスAMG SLのエクステリアはこう変わった
そこでまずは新型メルセデスAMG SLの外装から見てみたいと思いますが、新型メルセデスAMG SLは、その刺激的なデザイン、最先端のテクノロジー、卓越した走行特性により、高級スポーツカーセグメントの新たなスタンダードとなるモデルだと表現されており、エクステリアデザインは、現代のメルセデス・ベンツのデザイン哲学である「官能的純粋さと、AMGらしい「スポーティさ」、そして特徴的な「ディテール」の完璧な三位一体で構成されています。
ボンネット上の2つのパワーバルジは、初代SLを彷彿とさせるもののひとつであり、さらに全体的な外観を視覚的に軽やかで低く見えるようにすることで、新型SLがそのルーツに戻ったことがわかるようした、とのこと(もともとSLとはスポーツ、ライトを表している)。
ボディデザインの特徴は、ロングホイールベース、ショートオーバーハング、ロングボンネット、強く立ち上がったフロントガラスと後方へと押しやられたパッセンジャーコンパートメント、そして力強いリアエンド。
その結果、SLらしいプロポーションが生まれることになり、ボリューム感のあるホイールアーチと相まって、ロードスターらしいパワフルでダイナミックな外観を実現しています。
ルーフは上述のとおり「ソフトトップ」に回帰していますが、幌は「シームレス」構造を持ち、そのコンパクトさがピュアでスポーティな印象を際立たせているようですね。
もちろん、ソフトトップ化によってルーフ全体が軽くなり(-21キロ)、車体の重心が下がることでドライビングダイナミクスが向上しています。
このソフトトップは3層構造を持ち、ヒーター付きリアウインドウが与えられるなど高い耐候性を確保し、時速50キロまでの速度で開閉を(もちろん自動で)行うことができる、とのこと。
AMG専売となることでフロントには「パナメリカーナグリル」が与えられ、これはフロントのワイド感を強調するとともに、14本のバーティカルスラットは、SLモデルの祖先である1952年の伝説的なレーシングスポーツカー「300SL」を連想させます。
スリムでシャープな輪郭を持つデジタルLEDヘッドランプ、同じくスリムなLEDリアランプも「ワイドさ」を強調しているようですね。
サイドから見ると、フロントフェンダー上のサイドギル、フラッシュマウントとなったドアハンドルの形状がなんとも優雅なデザインを持ち、車体にマッチしていることがわかり、サイドステップは「ボディ中央をシェイプしているように見せる」べく、中央がボディ側に食い込んだデザインとなっています。
リアだとクワッドエキゾーストに大きなデフューザーが「AMGモデル」であることを強調し、トランクリッドには5段階に角度調整が可能なアクティブスポイラーも。
このスポイラーは走行状況に応じて自動的に調整されますが、その際に制御ソフトウェアは多くのパラメータを演算するといい、走行速度、前後左右の加速度、ステアリングスピードなどを反映し、80km/hから動作を開始することで操縦安定性を最適化します。
エアロダイナミクス面だと、メルセデスAMGが幅広いモータースポーツ活動にて得た経験が反映されており、フロントとリアにはアクティブ・エアロダイナミクス・エレメントが採用され、空気抵抗係数はCd 0.31となり、これはオープントップのスポーツカーとしては非常に優れた数値なのだそう。
加えて新型SLのエアロダイナミクスは、操縦安定性、空気抵抗、冷却性、風切り音といった複雑な要件をバランスさせており、幌を降ろしても上げても車両の性格や運転特性が変わることはなく、この均一なエアロバランスは高速走行中の急な回避行動など、危機的な運転状況を和らげるのに役立っているようですね。
エアロ開発における技術的なハイライトは、2ピースのアクティブ・エア・コントロール・システム「AIRPANEL」だとされ、1つ目のパーツは、フロントエプロンの下部エアインテークの後ろに隠された垂直ルーバー。
2つ目のパーツはアッパーエアインテークの後ろに位置して水平方向のルーバーを備えており、通常、すべてのルーバーは閉じていますが、この状態では空気抵抗を減らし、アンダーボディに向けて空気を送ることが可能となってフロントリフトが減少する模様。
一方でコンポーネントが一定の温度に達し、冷却が必要となった場合にのみ、ルーバーが開き(2つ目のシステムは180km/hからのみ)、ラジエターに最大の冷却空気が流れるようになります。
オプションでは「アクティブ・エアロダイナミクス・エレメント」が用意され、アンダーボディに設置されたパーツがAMGドライビングモードの設定に反応し、時速80kmになると自動的に約40mm下方に伸び、これによっていわゆるベンチュリー効果が発生して車が路面に追加で吸い付けられ、フロントアクスルのリフトが減少することになり、ドライバーはカーブやサーキットでより正確に、より安定してステアリングを切ることができるとされています。
なお、新型SLには、「空気力学的に最適化された」19インチ、20インチ、21インチホイールを設定していて、特にプラスチック製のエアロリングを装着した20インチホイールは、軽量化にも貢献している、と紹介されています(このエアロリングの画像は公開されていないようだ)。
新型メルセデスAMGのインテリアはこうなっている
新型メルセデスAMG SLのインテリアは、初代300SLロードスターの伝統を現代風にアレンジし、「スポーツ性とラグジュアリー性を完璧に融合させた」ことが特徴。
上質な素材と緻密なフィニッシュが最高レベルの快適性を担保しており、コックピットデザインは、センターコンソールの「角度調整可能な」センターディスプレイを見ても分かる通り、あくまでもドライバーオリエンテッド。
同時に、2+2シートを備えた全く新しい室内空間コンセプトは、これまでのSL以上に広いスペースと機能性を提供していると紹介され、リアシートは”日常的な実用性を高めた”結果、身長150cmまでに対応します(今までは何センチまでの対応だったのかが気になる・・・)。
インテリア全体のデザインモチーフは上述のとおりかつての300SLロードスターで、そのミニマルなインテリアは、新型SLのインテリアデザイン過程におけるデザイナーのインスピレーション元となっていますが、その結果として「アナログの幾何学性とデジタルの世界がエキサイティングに融合し」、このハイパーアナログ・インテリアが誕生しています。
各々のパーツを見てゆくと、立体的なバイザーに組み込まれたフルデジタルメーター(12.3インチ)、外光の反射によって見えにくくなることを防ぐため角度調整が可能なインフォテイメントシステム(11.9インチ)、AR(拡張現実)技術を搭載したヘッドアップディスプレイ、電動調整式AMGスポーツシート、フロントヘッドレストに通気口を設けたネックレベルヒーティングシステム”エアスカーフ”、AMGパフォーマンスステアリングホイールといった装備も見られ、まさにアナログとデジタル(ハイテク)の融合といった感じですね。
新型メルセデスAMGのエンジンラインアップはこうなっている
新型SLには、2種類の出力レベルを持つAMG製4.0リッターV8ツインターボエンジンが搭載され、このエンジンは、アファルターバッハにある同社の工場で、「ワンマン、ワンエンジン」の原則に基づき全て手作業で組み立てられているといい、トップモデルの「SL 63 4MATIC+」では、最高出力430kW(585ps)、最大トルク800Nm版が搭載され、0-100km/hまでの加速はわずか3.6秒、最高速度は315km/h。
SL 55 4MATIC+には、350kW(476ps)の出力と700Nmの最大トルクを発揮するV8ツインターボが搭載され、こちらの0-100km/h加速は3.9秒、最高速度は295km/hだとアナウンスされています。
今回はハイブリッドモデルについて発表されていないものの、メルセデスAMGは「開発中」だとコメントしており、こちらについては大幅なパワーアップが期待できそうですね。
これらエンジンに組み合わせられるトランスミッションは「AMGスピードMCT 9Gトランスミッション」で、これは新型SLに合わせて開発されており、トルクコンバーターの代わりに湿式スタートオフクラッチを採用し、軽量化と低慣性化によって、特に急発進や負荷変動時のアクセルペダル操作に対するレスポンス最適化を実現しています。
そして駆動系における最大のトピックは、約70年の歴史の中で、SLに初めて4輪駆動システムが搭載されたこと。
今回発表された両モデルとも全輪駆動技術「AMGパフォーマンス4MATIC+」が標準装備され、フロントとリアのアクスルに完全に可変のトルク配分を行うことで、物理的な限界まで最適なトラクションを確保し、いかなる状況下でも高い操縦安定性と高い安全性を実現しています。
現在、新型メルセデスAMGの価格については公開されていませんが、追ってなんらかのアナウンスがあるものと思われます。