| マクラーレンはこれまで「SUVは絶対にない」と主張していたが |
ただし創業当初はセダンを含むフルラインアップ自動車メーカーになることを目指していた
さて、つい先日マイク・フルーイットCEOが電撃辞任したマクラーレン。
今回は6月にアナウンスしていた「エクストリームE(エレクトリックオフローダーのレース)」参戦用車両のティーザー画像を公開しています。
マクラーレンはこのエクストリームEの2022年シーズンに参加する計画を持っていますが、これはもちろん、豊かなモータースポーツの歴史を持つマクラーレンにとっても「初の」オフロードレース。
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なぜマクラーレンがオフロードレースに?
そこで疑問が湧くのが「なぜマクラーレンがオフロードレースに参戦するのか」?
マクラーレンは「他社のように、金儲けのためにSUVはやらない」と公言しており、しかもそれはマクラーレンの従業員すべてに浸透していたポリシーであり(マクラーレンのトップはもちろん、現地法人までも全く同じコメントを行っていたので)、その環境においてSUVのレースに参戦というのは違和感があるわけですね。
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参加する理由としては、この競技が「フルエレクトリック車両で競われる」ということで、現在ハイブリッドスポーツ「アルトゥーラ」を発売し、今後エレクトリック色を強めるマクラーレンがそのプロモーションを行うことを意図しているとも考えられます。
ただ、そうするにしても、ポルシェなどのライバルが存在するフォーミュラEに専念して勝利を獲得するほうがずっと意味があるように思われ、やはり「マクラーレンがSUVレースに参戦する意味」を見出すのが難しい状況。
しかしながら、マクラーレンがSUVのレースに参戦し、そこで勝利を築き、「オフロードもマクラーレンのモータースポーツにおけるDNAのひとつである」ということを示した後に「公道版SUV」を発売するとなるとまた話は別で、ぼくとしてはやはり「マクラーレンがSUVを発売することに対し、エクストリームEで免疫を(顧客に)作り、これまでのマクラーレンの発言を正当化する下地を作るんじゃないかと考えているわけですね。
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今と以前ではマクラーレンを取り巻く環境が異なる
マクラーレンはコロナ前までは「破竹の勢い」で成長してきたものの、コロナ後に一気に失速。
売上が大きく減少し本社売却、従業員解雇、その他大きな組織変更を強いられていますが、この失速の理由については「マクラーレンのスーパーカー、ハイパーカーが飽和した」ことが考えられます。
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そしてこれら以外の選択肢を用意していないマクラーレンは状況の打開策を見出すことが難しく、ウルスを持つランボルギーニとは異なる運命をたどることになったのだと思います。
このとき、マクラーレンの経営者や株主が思ったのが「SUVがあれば、こうはならなかっただろう」ということだったのは想像に難くなく、株主は自らの利益を守るため、そして経営者は株主に対する責任をまっとうするため「どうやって今までの発言を正当化してSUVを発売するか・・・」と考えたのかもしれません(趣味ならともかく、従業員の生活がかかっている巨大企業ならば、これ以上スーパーカーとハイパーカーのみというラインナップに固執することが正しい選択とは思えない)。
よってその解が「エクストリームE」だったんじゃないかということですが、エクストリームE参戦が発表されたのは6月なので前マイク・フルーイットCEO体制化ということになるものの、同氏の辞任によって「新体制による新方針」を打ち出し、そこでSUVを発売するという環境を構築しやすくなったのでは、とも考えられます。
参考までにですが、(現在の)マクラーレン・オートモーティブ創業当時は(このときはマイク・フルーイット氏がCEOではない)スポーツカー専業を目指していたわけではなく、セダン等を揃えるフルラインアップメーカーを目指しており、しかし「スポーツカー専業」を強く主張するようになったのはマイク・フルーイット氏がCEOに就任してからなので、同氏の退任とともになにかが変わる、ということも十分にありえます。
エクストリームEはどんなレース?
エクストリームEは上述の通りオフロードレースであり、使用されるSUVはすべて同一仕様(各チームがシリーズから提供された同じSUVのバージョンを入手することになる)。
つまり公道走行バージョンのクルマを改造して性能を競う競技ではなく、公道用のホモロゲーションを取得する必要もないということですね。
よってこの競技に使用されるクルマが市販モデルとして登場することはないものの、マクラーレンは未知の分野に挑戦することになり、そこには相当な困難が待ち受けているものと思われます。
このレースで使用されるオデッセイ21は、最高出力500ps(507PS/373kW)以上を発揮して0-62mph(0-100km/h)を4.5秒で走り、最大52度の傾斜にも対応し、地球上で最も危険な地形を走破することが可能だとされ、まさに「エクストリーム」の名にふさわしいマシンです(下の画像はヒスパノ・スイザのエクストリーム参戦用車両)。
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参照:McLaren