| フェラーリを運転するのは、馬との対話を行いながら乗馬をするのによく似ている |
対してランボルギーニは「闘牛」のようにクルマとの戦いである
さて、フェラーリF8スパイダーに試乗。
今回試乗させてもらったのは神戸のフェラーリ正規ディーラー、オートカヴァリーノさんの計らいによるもので、比較的長い時間と距離を走らせてもらっています。
フェラーリF8スパイダーはすでに新規受注が停止されているのであらたに注文することはできませんが、その価格は3657万円に設定され、車体ミッドに搭載される3.9リッターV8ツインターボエンジンを搭載して720馬力を発生し、7速デュアルクラッチを介して後輪駆動するスーパースポーツ。
0−100km/h加速は2.9秒、最高速はじつに340km/hというトップクラスの加速性能を誇りますが、電動格納式ハードトップを持ち、快適性にも十分に配慮されたという、まさに「現代ならではの」スーパーカーだと言えます。
フェラーリF8スパイダーはこんなクルマ
ボディサイズは全長4611ミリ、全幅1979ミリ、全高1209ミリ、ホイールベースは2650ミリ、乾燥重量は1,400kg、前後重量配分はフロント41.5%、リア48.5%、ホイールは前後20インチ、タイヤサイズはフロント245/35、リアが305/30サイズを装着しています。※ランボルギーニ・ウラカンよりも44ミリ全高が高い
なお、フェラーリF8スパイダーは488ピスタ・スパイダーから多くを受け継いでおり、しかし「488ピスタ・スパイダーほどの過激さを求めない人」に向けたモデルという位置づけとなるもよう。
一方で488ピスタ(クーペ)に比較して進化した部分もあり、たとえばビークルダイナミクスを司るFDE+(フェラーリ・ダイナミック・エンハンサー・プラス)は488ピスタのデビュー時に搭載された「FDE」の機能を拡張したものだとアナウンスされていますね。
ちなみにリトラクタブルハードトップは14秒にて開閉を完了し、時速45キロまでにおいて動作が可能です。
フェラーリF8スパイダーで走ってみよう
今回はオートカヴァリーノさんの計らいにて比較的長い時間試乗させていただくことができ、三宮付近の「ブティックショールーム」から六甲アイランドにあるオートカヴァリーノさんのショールームへと向かい、そこでショールームやファクトリーを見学してまた戻ってくるというルートを走ります。
まずはフェラーリF8スパイダーに乗り込みますが、サイドステップがさほど張り出していないこと、そして比較的ルーフが高いこともあり、「スーパーカーにしては」非常に優れる乗降性を持つようですね。
そして乗り込んだ後にシートを調整し、ステアリングホイール上にあるエンジンスターターボタンを押してエンジンをスタート。
その後には右のパドルを引いてギアを「1」に入れ、あとはアクセルを踏めば自動にてパーキングブレーキが解除されて車体が動き出します(ただしクリープはなく、このあたりは同じスポーツカーであってもポルシェやランボルギーニとは異なる)。
なお、走り出してすぐに気づくのは「けっこう振動が抑えられている」ということと「すぐにギアがシフトアップする」ということ。
おおよそ1000回転ちょっとでポンポンとシフトアップしますが、このあたりは燃費対策だと考えて良さそうです(フェラーリはけっこう早い時期からアイドリングストップの採用にも動いていた)。
ただ、低い回転数でも十分以上のトルクを発生していて、このあたりは「ギアによって過給圧を変え」NAらしく感じるように設定を行っているだけのことはある、と感じます。
そしてちょっと走ってみてすぐにわかるのが「ターボラグ”ゼロ”」。
これはフェラーリが常々主張していることではありますが、このV8ツインターボエンジンはどんどん進化しているようで、最新のF8スパイダーでは488時代に比較してさらに変速時のラグが小さくなり、ほとんどゼロだと言っていいかもしれません。
なお、ブレーキのタッチはかなり独特で、踏み始めからかなり強力な制動力を発揮するため、「ゆっくり踏んでゆくにつれ効いてくる」ポルシェやマクラーレンに慣れた人だと、最初は「ガクっと」車体を揺らしてしまうかも。
ただしナーバスというほどではなく、これは慣れによってすぐに解決するものと思われます。
ステアリングホイールは細く小さく、そしてスポーツカーとしてはかなり「軽めの」操作感を持ち、センター付近の「遊び」はポルシェのスポーツモデルに比較するとやや大きく、そのために神経質にならずにすむ、という印象(ポルシェが神経質というわけではない)。
ただ、ステアリングホイールの軽さに反して車体はしっかりと安定しており、どんな速度からステアリングホイールを切り込んでいっても全く不安なく意のままに曲がり、これが「最新のフェラーリに乗ると、運転がうまくなったと錯覚するという怪奇現象」なんだろうな、と実感させられます。
ちなみに足回りについて、スーパースポーツとしては「かなり」柔らかく、けっこうストロークも取ってあるもよう。
高架道路の継ぎ目を越える際だと、鋭い突き上げを感じさせず、かつしっかりストロークするという印象があり、このあたり(同じように鋭さはないものの)ストロークが短くダンピングが強めのポルシェ、そしてランボルギーニとはことなるセッティングです。
ただし面白いのは、これだけ柔らかくストロークの長いサスペンションを持つのに対し、カーブではほとんどロールしないということで、このあたりはマクラーレン(のプロアクティブシャシー採用モデル)とよく似ているのかもしれません。
その後は六甲アイランドのオートカヴァリーノさんへ
そしてその後には六甲アイランドにあるオートカヴァリーノさんのショールームへと向かい、ショールーム内とファクトリーを見学し、同じ道をたどって出発地点へと戻りますが、復路はある程度運転にも慣れたため、積極的にパドルシフトを用いてシフト操作を行っています。
なお、パドルの操作感についてもフェラーリF8スパイダーはやや独特で、ポルシェやランボルギーニの「精密なスイッチ」であり「カチっとした」といったフィーリングではなく、タッチが軽く、それはポルシェやランボルギーニに慣れた身としては拍子抜けするほど(ステアリングホイールといい、パドルといい、その軽いタッチには驚かされる)。
途中、まったくノーマークだった白バイに抜かれて焦る場面もありましたが(法定速度での走行だったので問題ない)、無事に戻り、自分のウラカンEVO RWDを見ながらその横に駐車します。
ランボルギーニ・ウラカンEVO RWDと比較すると
今回、その差異がよく分かるようにとランボルギーニ・ウラカンEVO RWDに乗って行き、ウラカンEVO RWDでも今回の試乗コースとほぼ同じルートを走ってみたのですが、両者の違いは意外とはっきりしています。
簡単に言うとフェラーリF8スパイダーは軽快でしなやか、そして快適で路面とのコンタクトが密に感じられるクルマ(ある意味では繊細だと言える)。
そしてウラカンEVO RWDは(F8スパイダーに比較すると)重厚感のある乗り味を持ち、しかししなやかというよりはガッツンとくるダイレクトな乗り味を持っていて、クルマとのコンタクトを感じながら運転するというよりは、文字通り猛牛を紙一重でかわしつつコントロールする、という感じ。
言い換えるとフェラーリは洗練した身のこなしを持ち、ドライバーとクルマとの間には「余裕」があるものの、ランボルギーニはいささか粗暴でもあり、一歩間違えばどうなるかわからないという「ギリギリ」な部分も。
これはそのまま「乗馬」と「闘牛」に置き換えることができるかもしれませんが、ただ、両ブランドの生い立ちとして、フェラーリはモータースポーツに直結したバックグラウンドを持ち、ランボルギーニは「そういった、モータースポーツ直結の市販車の乗り心地が悪すぎるので、(フェラーリに対抗し)快適なGTカーを作ろうとした」というもの。
そして今回フェラーリF8スパイダーとランボルギーニ・ウラカンEVO RWDとを乗り比べてみると、その当初のコンセプトが両者で入れ替わっているようにも感じられ、フェラーリのほうが「快適でフレンドリー」、ランボルギーニのほうが「戦闘的で攻撃的」といった印象を受けたのが面白い、と考えています。
ただ、これは「良し悪し」というわけではなく、完全に「好み」の問題であり、ぼくはかつてランボルギーニ・ガヤルドLP560-4を購入する際、フェラーリ458イタリアと乗り比べてみて、(今回の両車の印象と同じく)より攻撃的なランボルギーニ・ガヤルドLP560-4を選んでいます。
今でも攻撃的で直接的なクルマのほうに惹かれることにかわりはありませんが、今回の前提条件は「ランボルギーニ・ウラカンEVO RWDを所有したまま増車」ということなので、性格の異なるフェラーリをガレージに収めてみたい、とも考えているわけですね。
参考までにですが、以前にフェラーリ458スペチアーレを運転した際には、ランボルギーニ以上の「過激さ」を感じたので、ひとことにフェラーリといっても、モデルによって大きく味付けが変わる、ということなのだと思います(458スペチアーレは、ぼくがこれまで運転した中でも最高のスポーツカーのひとつでもある)。
フェラーリF8スパイダーを試乗した際の動画はこちら
フェラーリF8スパイダーを試乗させてもらったのはオートカヴァリーノさん
上述のとおり、今回フェラーリF8スパイダーを試乗させて頂いたのはオートカヴァリーノさん。
六甲アイランドにもショールームそしてファクトリーがありますが、今回は三宮付近にあたらしくできた「ブティックショールーム」へと訪問しています。
オートカヴァリーノ神戸ブティックショールーム
住所:神戸市中央区新港町11-1-1F
電話:078-335-0790
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