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ルノーCEOも「自動車を完全にEVに切り替えるのは、地球を救うための答えにはならない」。欧州の自動車メーカーが一斉にEV化に対して疑問を持ち始めたようだ

2022/05/29

ルノーCEOも「自動車を完全にEVに切り替えるのは、地球を救うための答えにはならない」。欧州の自動車メーカーが一斉にEV化に対して疑問を持ち始めたようだ

| そこにはいろいろな理由があると思われるが、収益を圧迫しこのままでは会社が成り立たなくなるのだと思う |

政治家はEVへの変革にかかるツケを払うわけではなく、「言うは易し」

欧州委員会(EU)は2035年までにディーゼル、ガソリン、ハイブリッドエンジンなど内燃機関を搭載したすべての新車の販売を禁止しようとしており、つまりあと10年ちょっとで欧州の自動車メーカーは基本的にEVしか販売できなくなるということを意味しますが、多くの業界専門家によれば、この戦略はあまりに”アグレッシブすぎ”。

そしてこういった意見は自動車業界の中でも広がっており、トヨタ自動車の豊田章男社長、ステランティスのカルロス・タバレスCEOはこういった「急激なEVシフト」に警鐘を鳴らしている人々でもあります。

ステランティスCEO「現在のEVシフトは、政治家が選んだもので、我々自動車メーカーや消費者が選んだものではない」。なんでもかんでもガソリン車を悪にする風潮に懸念
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ルノーCEO「あまりに早すぎるEVシフトは環境に悪影響」

そして今回はルノーCEO、ルノーのルカ・デ・メオ氏がこういった動きに対して懸念を示し、「あまりに急激なEVシフトは環境や社会に悪影響を及ぼす可能性がある」というコメントを発することに。

ちょっと前までは、こういった発言をするやいなや、株主から「電動化に積極的ではない」と一斉に吊るし上げられて解任に追い込まれ、環境団体からも訴訟を起こされ、結果として企業の株価が一瞬で暴落したものですが、現在ではこういった発言が真剣に受け入れられるようになり、「わずか1−2年で時代の流れが変わってしまったな」とも感じます(ぼくはEV肯定派だが、急激なEVシフトにはそもそも無理があり、自動車メーカーや消費者に負担を強いるだけだとも考えており、もっと緩やかな移行が望ましいと考えている)。

豊田章男
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ルカ・デ・メオ氏の主張は「パーソナルモビリティを完全に電気自動車に切り替えるのは、おそらく地球を救うための答えにはならない」というもので、意図としてはEV技術にすべての資金を投入すると、化石燃料を燃やすエンジンへの投資が断たれ、より汚染度が高まる可能性があるというもの。

ただ、同氏はいまだ根強いEV信奉者に向けて「まず言いたいのは、ルノーは明らかにEVに非常に力を入れているということです」と述べ、続けて「ルノーは早くからEVに取り組んでおり、EVや水素は、ある用途では良い解決策になると信じています。しかし、データを見ると、ハイブリッド車を含む内燃機関の販売は、まだピークに達していないことが明らかです。社会的、財政的、生態学的な観点から、検討すべき課題があるのです」。

EVシフトは様々な負担があまりに大きい

このほか、ぼくが思うのは、EV製造のために必要な「バッテリー」生産には環境負荷が強くかかるということ、そして未だEVは「燃える」可能性が(ガソリン車よりも)高いために周囲や当局に負担がかかること、そして補償金額が巨額になるため保険会社や自動車メーカーに負担がかかること、EVは事故の際の修理コストが高いので消費者にとっては保険費用の負担が大きいこと。

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そのほかにも細かいことを上げればキリがありませんが、「なるべくしてなる」のではなく、「無理に」産業の構造を変えようとすれば大きな負担が発生することになり、このツケを払うのはいったい誰なのか、ということですね。

とにかく現在の(政治家がすすめる)EV推進政策は短期的な「票集め」のためにやっているという印象も否めず(具体的な政策や長期的な展望を感じられないものも多い)、そして一貫性も感じられず、ちょっとモヤっとしています。

なお、最近だと「EV化にもっとも積極的な」自動車メーカーのひとつであるフォルクスワーゲンも「業界が完全に電気自動車に移行するのは時期尚早」とコメントしており、こちらは「インフラがついてこない」という意味合いです。

フォルクスワーゲン
VWは「自動車業界がEVへと完全移行するには時期尚早」、ステランティスは「内燃機関と電動車との事業を分けて考えるのはナンセンス」。いま自動車業界で何が起きているのか

| ここへ来て様々な事情によって電動化にブレーキがかかりそうだ | インフラ拡充不足はある意味で「致命的」だとも考えられる さて、電動化への急先鋒だとも考えられるのがフォルクスワーゲングループではあり ...

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そして他社よりも早くEVに手を付けたBMWも「すぐに内燃機関を禁止すること」に否定的な見解を持っており、オリバー・ツィプセCEOは「内燃機関搭載車の販売をあまりに早く止めると、BMWやほかのドイツの自動車メーカーに打撃を与え、気候や誰の役にも立たない 」と断じることに。

BMW
BMWも急激な電動化に「待った」!「現在主流の内燃機関を捨て、市場の動向や要望を無視した電動化は環境はおろか、誰の得にもならない」

| 現在、いくつかの大手自動車メーカーが「あまりに早すぎる電動化」 に対して警鐘を鳴らしている | 結局のところ、電動化とは政治家の人気取りのためなのか さて、BMWのトップ、オリバー・ツィプセ氏によ ...

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実際のところBMWは、ガソリンエンジンの開発を終了させたライバルたちとは異なり、まだまだ「新型ガソリンエンジン」の開発を継続する意向も見せていて、他社とは異なる動きを採用するように思います。

ちなみにですが、ここ最近になって自動車メーカーがこういった「異議」を唱えるようになった背景には、「EVの開発には思ったよりもコストがかかる」「その割にEVは(価格のせいもあるが)売れない」「EVの製造原価が上がり続け、(バッテリー価格が生産量に比例して安くなるという)想定とは逆の事態が発生している」「このままの状態だと会社を維持できない」という現実がリアリティをもって目の前に迫ってきたからなのかもしれません。※ただ、各社ともその「異議」の理由が少しづつ異なるのが面白い

BMW 4シリーズ グランクーペ
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参照:Autocar

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