ぼくが小学生のころですが、同級生に渋谷という男がいて、これがなかなか面白いヤツでした。
「みんなの歌」をこよなく愛し、言動に特徴があったことで、ぼくの記憶に残っています。
ある日ぼくと渋谷は道路を横断しようと路肩にいたのですが(田舎の道なので信号機が無い)、車が途切れて道を渡ろうとしたところ、風に飛ばされて被っていたぼくの帽子が飛ばされてしまったのですね。
帽子は無事拾うことができましたが、せっかくの道路を横断できるチャンスを逃してしまい、またしばらく車が途切れるのを待つはめに。
ぼくがそのことを謝ると、彼は「気にするな。いい男には何度でもチャンスがある」と言い放ったわけです。
その時の渋谷はとても格好良く見えましたが、その「いい男」とは渋谷を指したのか、ぼくを指したのかは不明(たぶん渋谷は自分のことを言ったのだと思う)。
ぼくはその時のことを鮮明に覚えていて、それ以来何かチャンスを逃したとしても「気にするな。いい男(自分)には次のチャンスがある」と言い聞かせています。
そうすることで、少なくとも逃したチャンスを後悔することも、そのチャンスをつかんだ他人を羨むことも妬むこともなく、ぼくは「自分らしく、自然体で」過ごせているのですね。
ある意味座右の銘に近いものがあるかもしれませんが、その一言は今に至るまで大きくぼくの考え方を支配している、とも言えるかもしれません。