| 日本ではEVに対する関心がとにかく薄く、EV購入のメリットはほぼ感じられない |
軽自動車やハイブリッドなどランニングコストの安いクルマを安く購入でき、EV購入後の優遇もほとんどない
さて、東京都が日本で初めて「2025年以降、新築マンションにはEV用充電器の設置を義務付ける」ことを検討しているとの報道。
これはもちろんEVの充電を促進するための策ということになりますが、デベロッパーに対して補助金を出すことも議論されているといい、これが決まると新築マンションは「駐車場台数の20%の充電器」を設置することが必要となります。
東京都は2030年までに60,000台の充電器を設置したい意向
報道によれば東京都は60,000台の充電器を2030年までに設置する意向だとされ、2021年度末の充電器の台数が393台であったことに比較すると実に150倍という計算に(さすがに現在はもっと増えていると思うが)。
ちなみに東京都では人口の70%がマンションに住んでいるという統計があるそうですが、東京都はこういった数字を見て「EVを普及させるにはマンションに充電器を設置するのが一番の近道である」と考えたのかも。
なお、東京都は2023年度の予算にて、すでに40億円を調達しており、この予算をもって都内の集合住宅に3,100台の充電器を設置するとも報じられ、この「3,100台」というのは2022年に設置された充電器の15倍に相当するのだそう。
ただし現実的には課題が残る
ただ、こういった施策を導入したとしてもEVが普及するかどうかは疑わしく、大きな理由としては「EVを買う理由がないから」。
高価で充電に困るEVを買わねばならない理由は日本のどこにもなく、たとえばガソリンが高くなったとしても「軽自動車に乗ればいい」と考える人が大半だと思われます。
さらに日本では「環境への投資」という考え方がほぼ根付いておらず、それは国や自治体でも同じなので、たとえば北欧の一部の国のように、「EVであれば駐車料金割引」といった優遇、さらにカリフォルニア州のように「EV優遇レーン」といったメリットもないので、消費者としてはEVを買っても正直モトが取れないわけですね(しかもEVは売却時に二束三文となるが、軽自動車は高く売れる)。
そして今回の施策についても「デベロッパー任せ」という姿勢が見え見えであり、本気でEVを普及させたいのであれば、もっとEVに対するメリットを打ち出さねば消費者の心は動かないのかもしれません。
今回のマンションの件についても、実際はあまり消費者のメリットにはならないとも考えていて、マンション内に充電器があったとしても「充電器をめぐるトラブル」となる可能性が非常に高く(充電が完了しているのにどかないなど。結局充電したいときに充電できない)、これを当て込んでの購入はあまり考えられないのかも。
そしてデベロッパーにとっては、「20%ぶんの充電スペース」を作らねばならず、本来であればそこを駐車場にできたはずの場所を公共の場所として供する必要があり、となると大きく利益を逸失してしまう可能性もあり、どこにもメリットが存在しないのでは、と考えたりします。
であれば、先日報じられたサブウェイのように「ファストフード店の駐車場にEV充電スタンドを設置する」ほうがよほど現実的でもあり、多くの人にメリットをもたらすのかもしれません。
-
米にてサブウェイがEV用充電施設、公園を併設したチャージングオアシスを展開する」と発表!今後「ファストフード+EV充電器」はスタンダードに?
| これが実現すれば、文字通りすべての人々にとってメリットのあるものに | ファミレスでも同様の試みを行うケースが登場するかもしれない さて、サブウェイ(米)が新業態として「サブウェイ EVチャージン ...
続きを見る
合わせて読みたい、EV関連投稿
-
米国と欧州でEV販売比率が増加、それぞれ新車販売のうち5.1%と12%がEVに。なお日本ではわずか1.5%にとどまり、名実ともにEV後進国へ
| たしかに日本国内でEVが走っているのを見る機会はそれほどない | 来年は米国、欧州ともさらにEV販売比率が大きく伸びると言われているが さて、米国と欧州ではEVの販売が好調に進んでいる、とのこと。 ...
続きを見る
-
やはり値下げの効果は大きかった?中国にてテスラの販売が急増、そして米国では新規投入した廉価グレードが一瞬で完売。これからEVは仁義なき価格競争に突入か
| テスラはこの状況を見越して「値下げ競争下でも生き残ることができる」ようにコスト管理を行ってきたようだ | おそらくは「ついてこれない」新興EVメーカーが大量に倒産することになるのかも さて、テスラ ...
続きを見る
-
通年におけるEVの世界販売が2022年にはじめて10%を超える!中国だと20%、ドイツは25%、アメリカは5.8%、日本は(単月で)1.5%にとどまって完全にEV後進国に
| 日本のガラパゴス体質がこんなところにもあらわれていた | それにしても世界と日本との差が激しすぎる さて、2022年における電気自動車(EV)の世界販売が780万台にのぼり過去最高となったそうです ...
続きを見る
参照:Nikkei Asia