BMWとVWがテスラに追いつくため「なりふり構わず」EV開発のために資金を投じているとの報道。今までは「すぐに潰れる」と侮っていた新興自動車メーカーが最大の脅威に

｜　ともすると、テスラとの競争に敗れれば会社が潰れかねない　｜

まさかテスラが登場したての頃、自分たちが必死でテスラを追う立場になるとは想像していなかっただろう

さて、テスラはかつて「EVが主流になるとは誰も考えていなかった」10年以上も前に電気自動車を投入し、（初代ロードスターはさておいて）モデルSというたった1台のクルマで自動車業界を変えてしまった会社です。

それでも、モデルSが話題になり始めた頃には多くの既存自動車メーカーが「テスラはすぐに倒産する」とタカをくくり、しかし世界中のセレブや富裕層がモデルSをこぞって購入するようになってはじめて焦りを感じはじめ、ここでようやく「モデルSのライバル」を投入しようと考えたわけですね。

ただしテスラは「その先」を行っていた

ただし他社がモデルSのライバル、もしくはそれらしきものを発表する頃、テスラはモデル3を投入してさっさと別の市場へと移行しており、残されたライバルたちがその市場内にて互いに食い合うといった状況が発生しています。

さらには他社がモデル3のライバルを作ればこんどはモデルY、そしてサイバートラック、さらには25,000ドルのEVといった感じで「追われれば、追われるよりも速い速度で前に行く」のがテスラという会社。

そして今回報じられているのが、BMWとフォルクスワーゲンが「テスラに追いつくために、なりふり構わずお金をつぎ込んでいる」ということ。

テスラは生産効率の最適化にもっとも注力しており、その製造コストをどんどん引き下げていますが、そのためトヨタは「このままだと、全く競争力を失ってしまう」としていったんEVに関する計画をほぼ白紙まで撤回し、そこからテスラに対抗できるEVを開発しようとしているとも報じられていますが、それくらいテスラの進化に関する速度は常識を超えており、他の会社が1歩進むうち、テスラは2歩も3歩も先に行ってしまう、といったイメージなのかもしれません。

BMW、フォルクスワーゲンは巨額をEV開発に投資

今回の報道だと、BMWは今週、過去最高の78億ユーロ、つまり収益の5.5％をEV開発に割り当てると発表したとされ、すでに予算が組み込まれていた（2025年に発売予定の）ノイエクラッセの開発資金とあわせると収益の11％にまで拡大するもよう。

BMWはトヨタと同じく「EV以外の選択肢」を信じる会社であり、ガソリンエンジンの開発を継続する傍ら水素にも投資を行っていますが、それでも電動化に乗り遅れると未来はないと考えているのだと思われ、テスラに（EV市場の）覇権を握られてしまう前に一定のシェアを確保したいのかもしれません。

そしてこの傾向はフォルクスワーゲンのほうが顕著であり、フォルクスワーゲンは2014年にe-GolfにてEVの世界に足を踏み入れていますが、その1年後に起きたディーゼルゲートによって「脱内燃機関」が加速しています。

日本ではすでに誰も覚えていないレベルのディーゼル不正事件ではあるものの、欧州や米国ではいまだ根強く社会に根づいているといい、フォルクスワーゲン自身も「電動化は、このイメージを払拭できる100年に一度のチャンス」だとコメントしたことも。

そのためほかメーカーに比較しても速いペースでの「ピュアエレクトリックへの移行」を目指すといった事情があるわけですが、なんと5年で1800億ユーロもの資金を電動化に投じると報じられ、ポルシェのIPOによって獲得した資金の約半分（96億ユーロ）がやはり電動化に費やされるとも報じられていますね。

なお、ポルシェのIPOは「コロナ禍、そしてインフレ懸念、ロシアのウクライナ侵攻」という非常に悪い状況の中で強行されており、それでもポルシェの親会社であるVWがポルシェのIPOを決行したのには「今すぐにでも電動化の資金が欲しい」と考えたからなのかもしれません。

こういったBMWやフォルクスワーゲンの行動は「極端」に見えるかもしれませんが、しかし両者はそれくらい焦っていると捉えることもでき、そしてその焦りは「正しい認識」だとぼくは考えていて、というのも現在中国の自動車メーカーが非常に力をつけており、今の段階で一定のシェアを確保しておかなかれば、あとからEV市場に「食い込む」ことが至難の業だと思われるため。

もちろんトヨタはじめ既存自動車メーカーの多くが同様の危機感を抱いているのだと思われますが、現在の状況において「わずかな遅れ」は致命的なビハインドとなる可能性もあり、それが大きく今後の勢力図に影響することになりそうです。

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参照：The Wall Street Journal