| もしかするとトヨタは判断を誤ったか |
この1−2年で自動車メーカーの勢力図が大きく変わる可能性も
さて、現在世界中にて原油価格の高騰が続き、さらにはサプライチェーン問題にて新車価格が上昇したり新車の供給が難しくなっており、これに起因して中古車の価格も大きく上昇しています。
なお、アメリカ市場ではこの混乱に乗じて販売を伸ばしたセグメントがあって、それはご想像の通り「EV」。
2021年第2四半期の118,235台に比較すると2022年第2四半期では196,788台まで登録が増加しており、数値としてはなんと「66.4%増」。
上半期に絞って見てみても、2021年上半期の216,927台から2022年上半期では370,726台と75.7%の増加を見せ、今までアメリカ市場ではまったく売れていなかったのがウソのようにEVが売れに売れているという状態です。
一方で新車市場全体は縮小
そして注目すべきは、EVの伸びに比較して(ガソリン車含む)新車の販売自体が20%減少していることで、この数字を見ると「EVの販売は、相対性を考慮すると、数字以上に伸びている」ということに。
そしてEV人気を裏付ける数値ももうひとつあり、ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車でさえも前年同期比で10.2%減少しており、つまり消費者は「ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車よりもピュアエレクトリックカー」を選んだということになりますね。
ちなみにですが、PHEVに限ると第2四半期に最も売れた車両はジープ・ラングラー 4xeであったものの、PHEV全体の55%はなんとトヨタとレクサスが占めているといい、これはこれで驚きでもありますね(ただ、PHEVがマーケットシェアのどれくらいを占めるのか不明であり、見方を変えると、多くのメーカーはPHEVに見切りをつけてピュアEVにシフトしているのに、トヨタとレクサスはPHEVに固執しているだけと捉えることもできる)。
やはりEVの伸びは新型車が増えたことが大きい
なお、EVの急激な伸びについては「EVの選択肢が増えたことが大きい」とも考えられ、昨年では「購入可能なEVが19モデル」だったのに対して今年は33モデル。
そして約20万台だった第二四半期のEV販売のうち、今年のニューモデルが3万台を占めているそうですが、これも見方を変えると「ニューモデルのモデル数増加率にほど、ニューモデルの販売シェアが増えていない」ということもわかり、つまりニューモデルの中にも「負け組」がいるのかもしれません(デリバリーや生産が遅れているモデルも多いと思われ、必ずしもこの考え方は当てはまらないかもしれない)。
ただ、既存モデルの販売台数が多かったことも事実として存在し、2022年第2四半期のベストセラーはテスラ・モデルYの59,822台、次いでテスラのモデル3の54,620台(この2モデルでEV販売の半数以上を占める)、次いでフォードのマスタング・マッハEの10,941台、ヒョンデ・アイオニック5の7,448台、キアEV6の7,287台という順番。※この構成を見ても、顧客は(日産リーフのような)エコなだけで面白くないEVを求めていないようだ
そしてもう一つ注目に値するのは、EVの平均販売価格は6万6,000ドルで、これは市場全体の平均よりもかなり高く、利益率はそう高くないかもしれませんが、自動車メーカーの「売上高」を伸ばすことには貢献していそう。
トヨタ、ホンダはすっかり出遅れた
そしてここで思うのは、当面ガソリン高は続くものと思われ、となるとEVはさらに売れ続けるだろうということ。
そうなると量販EVを持たないトヨタやホンダの立場は非常に苦しくなり、北米市場においてはアメリカの自動車メーカー(テスラ、GM、フォード)、そしてヒョンデ、キアといった韓国勢のシェアが必然的に高くなってきそう。
トヨタは「EVはそもそも消費者が求めていない」としてEVに対して消極的でしたが、ここへきて市場の要望が急激に「EVへ」と傾いており、よって消費者に対するトヨタそしてホンダの求心力が一気に低下することも考えられます。
ただ、アメリカ市場はけっこうガソリン価格に敏感であり、かつて「ハマーが売れずにブランドを廃止した」のも原油価格が(当時)高騰したからで、トラックやSUVの人気が拡大したのはその後ガソリン価格が下がったからだと言われています。
よって、現在は原油高にてEVへと人気が集中していますが、仮に原油価格が下がると「EVを売り払ってトラックへ」とシフトする可能性も否定できず、そうなると中古市場に大量のEVが出回ることになりそうで、そうなるとEVの新車販売にもブレーキが掛かるということも考えられます(とくに中古価格が下がったモデルについてはその傾向が強くなる)。
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参照:Cox Automotive,