| ただし使用できるのは代替燃料のみ、ガソリンを使用する新車は2035年以降の販売はできない |
年間1,000台以下の規模にとどまる自動車メーカーはガソリン車を継続販売可能、そして販売済みのクルマは規制を受けない
さて、ロイターによれば、「ドイツと欧州連合(EU)は、2035年からの燃焼式自動車の禁止案について妥協に達した」とのこと。
これは「2035年以降にはガソリンエンジン含む内燃機関を積んだ自動車の新車販売を禁止する」というEUの計画に対し、ドイツはじめいくつかの国が反対していたもので、しかし今回の妥結によって、EUの自動車メーカーは2035年以降も内燃機関を積んだ自動車の販売を引き続き継続でき、しかし合成燃料(Eフューエル、代替燃料)で走行する必要があるという条件がついています。
今後は「合成燃料」に関する取り決めが行われることに
そこで今後の流れについて、今回の妥結を受けてEUは「合成燃料のみで走行できる新しい車両カテゴリーを設けることに合意」しており、しかしこれは本日ベルギーのブリュッセルで行われる投票によって詳細が決まるとのこと。
この新しい車両カテゴリーに属するクルマは「合成燃料以外では走行できないよう」調整された内燃機関を持つ必要があり、つまりガソリンでは走行できないようにしなくてはなりませんが、もともと合成燃料はが剃りエンジンとの互換性があり、よって自動車メーカーとしては「欧州で販売する車両には、なんらかのプログラムにて、(センサーで検知した)ガソリンを使用できないようにする」制御を行い、それ以外の(ガソリン車販売が禁止されていない)国々向けとしてはその制限を解除するという方法を採用することになるのかもしれません。
そうすればフェラーリやランボルギーニ、アストンマーティンといった自動車メーカーは今後も「内燃機関搭載車」を製造販売することができるようになるため、これは「非常に大きな変化」だと言えそうです(これまでの流れだと、ピュアエレクトリックカーへとシフトする以外の選択肢がほぼなかった)。
ただ、引き続き「年間1,000台以下の生産規模にとどまる」自動車メーカーは規制の対象外でもあるので、パガーニやケーニグセグといった自動車メーカーはガソリンエンジンを積んだクルマの販売が可能であり、そしてこの規制は「新車のみ」に適用されるので、すでに販売済みのクルマもまた対象外(となると、2034年にはとんでもない駆け込み需要が発生しそうだ)。
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それでも合成燃料を使用するクルマが「ごく一部」にとどまるのは間違いない
ただ、今回の「妥協案」にもかかわらず、内燃機関搭載車が現在のように大量に販売されるかといえば「そうではない」とも考えており、というのも合成燃料は非常に高価だから。
各種機関やトヨタの試算では、最も効率的な方法で生産し、かつ大量生産が可能となって価格が下がったとしても「ガソリン価格の1.5~2倍」になるとされていて、となると日常的に乗るクルマにこれを注入するとは考えにくく、よって合成燃料を使用して走行するクルマは「たまにしか乗られない、”趣味の”クルマ」だったり、燃料代を気にしなくても済む富裕層が購入するクルマ(スーパーカーやハイパーカー)ということになりそうです。
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加えて、この合成燃料の生産は複雑なプロセスを経るために大量生産が(今の技術では)難しく、まず二酸化炭素を回収し、再生可能エネルギーから水素を製造するプロセスを経る必要があるのですが(走行中に燃焼し発生した二酸化炭素は大気中に戻るので、結果的にカーボンニュートラルとなる)、すでにパイロット生産をはじめたポルシェによれば年間1億4,500万ガロンまで増強できるとしているものの、これは2021年に米国で使用された1,348億3,000万ガロンのガソリンに比較すれば「1300分の1」にしかすぎず、今後多くの企業がここに参入したとしても必要十分な量を生産できないかもしれません(そして、現段階ではどれくらいの需要があるのかわからない。そもそもガソリン禁止の国や地域にて、そして合成燃料の使用が認められている場合にしか需要がない。設備投資に莫大なコストがかかるので、需要を疑問視して参入をためらう企業も多いかもしれない)。
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これまでの流れはこんな感じ
そこでいま現在までの流れをおさらいしてみると、まず2022年10月、欧州連合が内燃機関搭載車の段階的な廃止を開始するための最終的な取り決めを発表し、これは「電動化以外は認めず2035年以降に販売する新車は内燃機関を積んではならぬ」というもの。
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参照:Reuters