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【試乗】状況やスキルに関係なく安定した高性能を発揮する、AMG C63に試乗する

2015/08/04

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メルセデスAMG C63セダンに試乗。

ベースとなるメルセデス・ベンツCクラスは発表以降非常に高い評価を受けており、そのAMG版であるC63も世界各国でかなり高く評価されていて、ずっと気になっていた一台でもあります。

新型C63では大排気量NAエンジンを捨て、476馬力を発生する4リッターV8ターボに7ATをドッキング。

なおATはトルクコンバーター式から湿式クラッチを用いたAMGスピードシフトMCTに。
ターボエンジンはAMG GTと共通設計のM177型で、それまでも6.3リッターNAエンジンとのリプレイスとなります。
なおAMG製エンジンの特徴として、エンジン一基につき担当する一人の職人が手作業で組み上げ、そのネームプレートが装着されるというものがありますが、その伝統もしっかり守られています。

パワフルなだけではなく、ディストロニック・プラスやプレセーフ・ブレーキなどを統合する「インテリジェント・ドライブ」を備えるのはAMGの特徴で、いかなるときも安全性を重視するというメルセデスの真面目なクルマづくりがあらわれているところ。

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一方で「コンフォート/スポーツ/スポーツプラス」といった走行モードを選べるAMGダイナミックセレクトも装備し、気分や環境によって車の反応を変化させることができるデバイスももちろん実装。
そしてなんとダイナミックエンジンマウントも装備するうえ、C63Sではデフが電子制御になるという、スーパーカー並みのスペックを誇ります。

外観の特徴ですが、前後AMG専用バンパーを装着する他、フェンダーは幅広のタイヤ(19インチサイズ)を収めるために片側15ミリづつワイド化。
15ミリというと「ちょっと」のような気もしますが、両方で3センチなのでけっこう見た目が変わり、低められたサスペンション、大径ホイールとともに車の凄みを強調しているように思えますね。

ドアを開けて乗り込みますが、ドアを閉める時の音がいかにも精度の高そうな機械を連想させます。
内装はAMG専用のパフォーマンスシート(レッドのステッチ入りで気分が盛り上がる)、パフォーマンスステアリングが専用装備。
細部の仕上げ、質感は「さすがメルセデス」といったところ。
センターコンソールに取り付けられるアナログ式の時計はなんとIWC製(IWCとAMGはパートナーシップを結んでいる。IWCからはインヂュニアのAMG版を発売)。
ダッシュボードやドアのトリムに用いられるウッドや、金属調パーツの質感も高く、メルセデスにしか出せない高級感がありますね。

そしてあまり触れられることはありませんが、メルセデスに採用されるスイッチ類のタッチは非常に優れており、ここはBMWに比べて大きくリードしているところではないかと考えています。

エンジンのスタートはダッシュ下部に設けられたスタートボタンをプッシュ。
そこからコラム式のシフトレバーにてDレンジ(AMG GLA45ではベース車のGLAがコラムシフト、AMG版ではセンターコンソール上にシフトスイッチがあった)に入れ、車をスタートさせます。
アクセルペダルを踏めば自動でパーキングブレーキが解除される仕様ですね。

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ステアリングは思いのほか軽く、これは今までのAMGとは味付けの異なるところ。
最近はハイパフォーマンスカーといえどもステアリングの操作感がどんどん軽くなるのがトレンドで、ランボルギーニ・ウラカンやフェラーリ・カリフォルニアTも驚くほど軽快になってきています。

ちょっと気になったのはウインカーレバーがステアリングホイールから遠いこと。
ぼくはさほど指が短くはないと思いますが、このあたり「ドイツ仕様」なのかもしれません。
ただしAMG GTではこの「距離」に違和感を覚えなかったので、C63特有の配置なのかもですね。
なおステアリングホイールの両脇にはアルカンタラが使用され、スパルタンな雰囲気です。

足回りはやや硬さを感じますが、これはおそらく「コンフォート」ではダンピングとスプリングとのバランスがマッチしていないのかもしれません。
というのも、コンフォートモードではゴツゴツとしたあたりが感じられるのですが、いったん「スポーツ」にするとダンピングレートとスプリングとの硬さがバランスするのか、逆に乗り心地が良くなるように感じたためです。
要はコンフォートの際にはスプリングの硬さの方が勝っているのでしょうね。

なおこういったハイパフォーマンスセダンについて、(スポーツ走行に耐えるため)足回りを締め上げることで失われる乗り心地を「シートの柔らかさ」で相殺しようとするメーカーも見られますが、それはある意味本末転倒のようなものだとぼくは考えています。
もちろんメルセデス、そしてこのC63はそのような安易な方法を取らず、高いボディ剛性と、きっちり動くサスペンションをもって車の挙動と乗り心地の良さを両立しているのでしょうね。

普通に乗っているとまさに「普通」なのですが、いったんアクセルを踏み込むとツインターボV8が唸りをあげ、怒涛の加速を見せます。
振動やノイズがほとんどなく、姿勢の変化もほぼ無いまま(今までのAMGであればノーズが盛大にリフトし、エンジン回転数とともにノイズが盛大になっていったと記憶)加速するので、気がついた時には信じられない速度に達してしまうことも。

AMG GTほどドラマティックでは無いですが、それはC63という車の性格によるもので、いかなる時も、どんな人が運転しても安定してパフォーマンスを発揮するという安心感はありますね。
ハンドリング、ブレーキともにずば抜けたものは無いものの、当然ながらまったく不足はなく、第一級の性能を持っていると言えます。

これはC63がスポーツカーというよりも、「ハイパフォーマンスなサルーン」を標榜しているためと考えられ、ロードインフォーメーションを受け取りながらも車との対話を楽しみつつ運転する「スポーツカー」を目指したわけではない、ということなのでしょうね。

おそらくはドライバーのインプットに対して「いかなる状況でも」それに忠実なアウトプットを行うことを目的としており、スポーツカーのような「車とのやりとりと、ドライビングスキルの反映」を目指したのではないと思われます(ときには状況を無視した操作に対しても正確に反応できるよう)。

やはりC63はセダンということもあり、疲れている時やビジネスで急ぐ場面があるでしょうし、そういったときはただ単に余計なことは考えず、車に思い通りに動いて欲しい、と考えるかもしれません(ぼくもそういった時はある)。

そのあたりの作り分けというかセッティングの差は見事で、これは他のメーカーでは意図したとしても、ここまでの「差」を演出することは難しいと思われ、メルセデスAMGならではの底力を見た気がします。

セダンというだけで前後の重量配分や車高、その他もろもろパッケージングに起因する「不利」なところがありますが、それをひとつひとつ丁寧に解決しているという印象があり、単に「馬力があって、足回りが硬い」ことでスポーティーさを出している車とはまったく別次元の車であり、本質的なスポーツカーであることは疑いようがない、という印象を受けました。

ちなみにC63の排気音はセダンといえども「AMG」で、スポーツモード以上では常識的に考えられないほどの勇ましい音がします。
雰囲気的にはアメリカンマッスルのような排気音ですが、スポーツモード・プラスではこれがさらに大きな音に。
正直これは笑いが止まらなくなるほどの快音で、この音のためにAMG(のV8エンジン搭載モデル)を購入する価値があるのではないかと思えるほど。

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C63の価格は1195万円から。
幅は1810、長さ4690ミリと現代ではコンパクトな部類に入り、日常使いも十分に可能なサイズだと思います。

当日はAMGモデルの試乗会で、AMG GTはじめGLA45、C63、C63 Sステーションワゴン、S65クーペが勢ぞろい。
C63 Sステーションワゴンは希少な「Edition 1」で、オレンジのアクセントが鮮やか。
メーカー純正にてホイールの外周部分にカラーを入れるのは非常に珍しく、そしてメルセデスという真面目なイメージの先行する巨大メーカーがこういった仕様を発売するのはかなりな衝撃ですね。

なおGLA45もEdition 1を用意するなど、非常に豪華な試乗車ラインナップです。
後で気付いたのですがV12ターボを搭載するS65クーペの試乗車もあり、お願いして乗せてもらえばよかったとちょっと後悔。

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現行世代のAMGではこのC63、GLA45、AMG GTを運転してたことになりますが、それぞれ性格が異なるのが面白いところ(当然ではありますが)。
意外と一番乗り心地が良いのはAMG GTで、けっこう暴力的な加速を見せるのはC63。
GLA45は非常に安定しており正統派のスポーツカー、といった印象です。

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これまでの試乗レポートは下記のとおり。
最新の試乗レポートはこちらにあります。

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