| プレミアムカー市場は「中国車の進出」「高級品需要減退」のダブルパンチである |
ただし今後このまま衰退するのか盛り返すのかはわからない
さて、フォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツ、ポルシェに続きBMWも「中国市場における需要が弱い」とコメント。
さらには中国での軟調に加え、コンチネンタル社から供給を受けていたブレーキシステムに関する不具合(150万台以上に影響)を受け、2024年通年の利益率を従来予想の「8-10%」から「6-7%に引き下げる」と発表し、この発表後にBMWの株価が2年来の安値を記録するという事態に陥っています。
市場では「BMWの悲観的な見通しですら生ぬるい」とする声も
しかしながら驚かされるのは「BMWのこういった下方修正は楽観的」というアナリストの声が聞かれることで、その理由は「BMWは中国依存度が高く、現在の中国の自動車市場は需要そのものが減退しつつあり、かつ中国車のシェアが急速に高まっているから」。
なお、中国では現在普及価格帯の中国製EVが多数登場しており、そしてこれらは日米欧のクルマを上回るパフォーマンスや装備、そしてなによりも中国で好まれるデザインや仕様を持っていて、正直なところ「既存自動車メーカーでは太刀打ちできない」状態です。
よって価格的に競合するビュイックやフォルクスワーゲン、シトロエン、そしてトヨタや日産、ホンダはそのシェアを奪われ続けている状況ですが、逆にこれら中国ブランドは「BMWやアウディ、メルセデス・ベンツ、ポルシェ」といったプレミアムカーメーカーとは価格的・ブランドバリュー的に重複しにくく、よって直接の競争が生じにくいとされていたものの、現在ではこれらプレミアムブランドに勝負を挑む中国車も少なくはなく、さらには中国市場において(景気の減退とともに)ルイ・ヴィトンやグッチなど高級ブランドの販売減が報じられることでもわかるとおり、「高価各製品が売れなくなっている」わけですね。
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「グッチが衝撃的に売れなくなり、時価総額が一瞬にして1.3兆円も減少」。いったいなぜグッチが売れなくなったのか、ボクはグッチ自らが暗黒時代を招いたと考える
| 早い話が「近年のグッチはその派手さでニューリッチやインフルエンサーに支持されたが、もうイケてるブランドではなくなった」 | さらにはその成功を上書きできるだけの製品をリリースできず、「その他大勢」 ...
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つまりこれまで中国市場での苦戦は主に「普及価格帯のクルマ」であったものの、現在では「プレミアムカー」にまで及んでおり、そしてこの傾向は2023年後半からさらに「加速」しているため、アナリストは「今後、BMWが中国市場にて販売を回復させる見込みは低い」「プラスの要因を見つけることが難しい」とも述べている、ということに。
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ポルシェの2024年第1四半期の販売はついに減少に転じ-4%。2大市場の中国と北米がそれぞれ24%と23%減少し、厳しい年の幕開けに
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ただ、中国における事情は「たった1日にして」簡単に変わってしまうことがあり、これまでも「中国経済が壊滅的状況に陥る(バブル崩壊)」と何度も言われつつも実際にはそうなっておらず、よって今回の「高級品市場の減速」についても何らかのテコ入れが行われ、一瞬にして回復してしまう可能性もありそうです。
加えて、中国車が伸びてきたのはこの数年の話なので、ここからの数年でもし「中国車はすぐに壊れる」「中国ブランドはすぐに消滅してメンテを受けられるなくなる」「中国車は売却価格が安い」といった印象が発生し一般化したならば、「やっぱり安心できる日米欧の自動車メーカーのクルマでないと」と考える消費者が増えるのかもしれません。
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