| フェラーリの場合、いずれの特許の内容も「特定の目的」に集約されている |
これらが即座に、そしてそのまま市販車に採用されるわけではないが、進む方向を示唆していることは間違いない
さて、フェラーリはこれまでにも様々な特許を出願していますが、その多くは「スポーツカーの(パフォーマンスにおける)限界を押し広げるエンジニアリング」「そしてクルマとドライバーとのエンゲージメント」に集約されるように思います。
そして今回出願が確認されたのが「ステアリングホイールがコラムごと左右に移動し、左右どちらでも(あるいは真ん中でも)運転できる」ようにするという特許で、一部の特殊な作業に従事するクルマが持つ構造にも似ています(映画「トータル・リコール」にもこの構造を持つクルマが登場した)。
この特許は以前に出願されたものの進化版
この内容については「前にも聞いたことがあるな」と思う方も多いかと思われ、それもそのはず、フェラーリは今年2月にも同様の特許を出願しているから。
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フェラーリが「シートとペダルとステアリングがセットになって左右にスライドし」センターシートレイアウトを実現する特許を出願
| フェラーリは常にドライビングが「ファン」になる要素を追求し続けている | そしてフェラーリはそのために様々なテクノロジーを活用することを厭わない さて、フェラーリはこれまでにも様々な特許を出願して ...
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ただしその際には構造についての詳細に触れておらず、しかし今回はダッシュボードに内蔵された(スライド用)レール、そして「ステアバイワイヤ」、アクセルのみならずブレーキをも「バイワイヤ」化したペダルセットが明確に示されています。
さらにはシートも一緒にスライドすることになりますが、これらシート、ステアリングホイール、ペダルなど、すべての運転コントロールがコーナーを曲がるときのGによってずれないようにするための安全装置付きのロック機構についても示されており、前回の特許をさらに現実的なものとしているあたり、フェラーリは本気でこれを実用化しようと考えているのかもしれません。
この構造にはたしかにいくつかのメリットがあり、まずは「センターシート配置」とすることでクルマのロールセンターを適正化でき、サーキットにおける運動性能が向上すること。
そしてもちろんクルマの中央に自分が座ることでドライビングエクスペリエンスが改善されることとなり、よりダイナミックなドライブが可能となります(ゴードン・マレーT.50やマクラーレンF1 / スピードテールがこのセンターシートレイアウトを採用するのも同じ理由からである)。
加えて生産時に「右ハンドルと左ハンドルを作り分ける」必要もなくなり、これによって設計・製造コストを抑えることも可能となるわけですね。
一方、デメリットや懸念がないわけではなく、ダッシュボードを中心としてインテリア全体のデザイン的自由度が損なわれること、そもそもセンタートンネルのないクルマでしか実現できないこと(プロペラシャフトがフロアを貫通しないミドシップであっても、車体剛性確保のためにセンタートンネル的なものがあり、フロアはフラットではない)、そしてシートをスライドさせることを考慮(公道を走ってサーキットへ向かい、サーキットではセンターシートにする場合など)すれば「シートを1つしか装備できない」こと、スライド式ステアリングコラムの強度をどうやって確保するのかなど。
ただしフェラーリはこれまでにも(カスタマイズ可能なステアリングホイールや体に密着するシートなど)様々な特許を出願し、可能な限りインターフェースを「パフォーマンスとドライバー寄り」にしたいと考えていて、よってこの特許もどこかで(サーキット走行を主眼に置いたスペチアーレなどで)実際に導入されることとなるのかもしれません。
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