| フェラーリが考えるのはただひとつ、「いかにドライバーとマシンのエンゲージメントを高め、双方のパフォーマンスを最大化するか」である |
この特許はICONAシリーズなど限定ハイパーカーに向いているものと思われる
さて、フェラーリは様々な特許を出願していることがこれまでにも報じられていますが、今回は「シートベルト」に関する特許。
簡単に言うならば「ほとんどの国や地域で禁止されている4点式ハーネスを合法にするための構造」で、これによってドライバーは公道においてもしっかりと体をシートに固定することが可能となり、よりクルマの挙動をダイレクトに感じることができるわけですね。
なお、フェラーリはドライバーへのフィードバックを非常に重要視しており、これまでにも「振動でクルマの限界を知らせるシート」「視覚的に(かつ瞬間的に)車両の情報を把握できるヘッドアップディスプレイ」「ドライブトレーンの状況を把握しにくいEV用として、回転数を聴覚的情報として届けるためのシステム」などが出願されています。
そしていずれにも共通するのは「サーキットをより速く、クルマの性能を100%引き出し、かつ安全に走ることができるよう」考えられたものだということで、「ガソリン車を模倣するため」疑似サウンドを合成し、それをパテントとして出願する他社とはまったく目的や意味合いが異なるわけですね。
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フェラーリの出願した「シートベルト」関連特許はこんな感じ
そこで今回フェラーリが出願した特許を見てみると、「事故の際に衝撃を和らげることをできる4点式ハーネス」。
4点式ハーネスはもともと体をガッチリとシートに固定し、いかなるGがかかろうともペダルやステアリングホイールの操作を確実にできるようにするためのもので、その反面「遊び」がなく、一般道を走行する際には全く不向きです。
加えて事故の際には「頭がガックン」となってしまい確実にむち打ちとなってしまうことも想像に難くなく(もちろんモータースポーツで使用する場合はHANSシステムと併用されるのでこの心配はない)、こういった様々な理由から「4点式ハーネスを禁止」する国や地域が大半となっているわけですね。
よって、現在の状況だと、公道では通常のシートベルトを使用し、サーキットでは別途取り付けた4点式ハーネスを使用するというオーナーも少なくはなく、しかしこれはある意味「無駄」でもあり美しくもない、とフェラーリは考えているのかもしれません(ぼくもそう思う)。
そこで今回出願された特許は「通常の(行動用)シートベルトの役割も果たし、サーキット走行時には4点式シートベルトとして使用できる構造を持つシートベルトについて示していますが、特許図面を見ると「見た目は完全に4点式シートベルト」。
装着着方法も4点式シートベルトと同様で、体を「シートにくくりつける」という目的も変わらないのですが、唯一異なるのは「事故を起こしてしまった際のシートベルトの動き」。
正確に言うならばこのシートベルトそのものが何らかの動きを見せるわけではなく、事故の際には「シートベルトを縫い付けてあるステッチが外れて(ショルダー、ウエスト部分ともに)シートベルトが段階的に伸びる」ことで「首ガックン」となるのを防ぐという考え方です。
このステッチは3段階の強さでステッチが外れる構造を持っていて、事故の衝撃に合わせてシートベルトが「緩む」のと同じ効果を演出し、これによって各国の定める放棄をクリアしようということになるわけですね(ただ、クラッシュにてシートベルトのステッチが外れてしまうと、修理の際にはシートベルトそのものを交換しなくてはならないのかもしれない)。
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参照:CARBUZZ