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電気自動車は本当にエコ?「バッテリーの製造と廃棄」だけではない、EVが普及してきた今だからこそ見えてきた「新しい、そして知られざる環境負荷と隠れた問題点」とは

電気自動車は本当にエコ?「バッテリーの製造と廃棄」だけではない、EVが普及してきた今だからこそ見えてきた「新しい、そして知られざる環境負荷と隠れた問題点」とは

| EVは本当に環境に優しいのか? |

この問題提起については様々な角度から様々な議論がなされてきたが

多くの人は「EV=排気ガスがゼロ=環境に優しい」と考えがちですが、現実はもう少し複雑です。

確かに電気自動車は走行中に排気ガスを出さず、都市部の大気汚染軽減には効果があり、しかしその普及につて、製造工程・充電インフラ・電力供給源・タイヤ摩耗など、さまざまな要因が環境負荷につながっていることも指摘されています。

もちろんこの議論は今に始まったことではなく、EV登場黎明期から「バッテリーの製造と廃棄にかかるCO2発生量の大きさ」が論じられてきたものの、EVが一般的な存在となりつつあるいま、さらなる別の角度からの問題提起がなされているという状況もあるもよう。

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意外な汚染源:急速充電ステーション

UCLA公衆衛生大学院の調査によれば、ロサンゼルス郡の50カ所の急速充電ステーション周辺では、PM2.5(微小粒子状物質)の濃度がガソリンスタンドより高いことが判明しています。

これはオカルト現象ではなく「事実」であり、その原因となるのは”充電器を冷却するためのファン”。

これが道路上の粉じんやタイヤ摩耗粉を巻き上げ、空気中の粒子濃度を上げてしまうと結論付けられているわけですが、急速充電網が急速に拡大している今、これは見逃せない課題といえそうです。

さらに、EV用充電器は「新しく」設置する必要があり、工事にかかる環境負荷は「いまある設備(ガソリンスタンド)を利用できるガソリン車の比ではない」という指摘もあるようですね。

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バッテリー劣化と環境負荷

EVのもう一つの問題は(以前からよく言われている)バッテリーの寿命。

充電方法や温度条件によって劣化速度が変わり、特に急速充電の多用は寿命を縮める要因とされています。

ただし近年の研究では、年間の劣化率は平均1.8%程度と改善しており、10年使用しても容量の80%以上を維持できるケースも報告され、しかし交換となれば、約100万〜300万円という高額な費用に加え、製造・廃棄による環境負荷も大きいのが現実です。

現段階で「バッテリーが劣化してEVが使い物にならなくなった」という話はほとんど(というか全く)聞いたことがありませんが、後10年もすれば「また事情が変わってくる」のかもしれません。

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電力とバッテリー製造の影響

EVを走らせる電力自体も「クリーン」とは限らず、米国では依然として石炭や天然ガスが発電の大部分を占めており、それらは(バンバン火を燃やすので)つまるところ大きなCO₂排出源でもあり、「クリーンなEVを走らせるために電力を作らねばならず、その過程でCO2を発生させている」という現状(矛盾)も。

さらに、リチウムやコバルトなどの採掘は水質汚染や大気汚染を引き起こすという問題もかねてより指摘され、EVは製造過程での環境負荷を相殺するまでに(平均的な走行距離を考慮すると)約8年の走行が必要とする調査結果もあるようですね。

ただ、近年ではリチウムやコバルトの使用量を最小限に抑える、あるいは使用しないバッテリーの開発も進められており、将来的にはこの問題が「解消に向かう」可能性も論じられています。

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タイヤ摩耗による微粒子汚染

EVはバッテリーそのものの重量により、同サイズのガソリン車よりも重い傾向があります。
そのためタイヤ摩耗が激しく、これが微粒子汚染の原因とされ、英国の調査では、タイヤ摩耗による粒子汚染はICE車の排ガス粒子の1850倍に達すると報告されていますが、さらにその粒子の一部は2.5ミクロン以下と非常に小さく、肺に入りやすいため健康被害が懸念されています。

しかしその一方、EVは従来の自動車が採用する「摩擦ブレーキ」の使用割合が低く(回生ブレーキを多用するため)、この摩擦ブレーキ経由での微粒子汚染がある程度「タイヤ摩耗による微粒子汚染」を相殺することについて言及せねば”フェア”ではないのかもしれませんね。

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ただ、汚染は別にして、「タイヤの減りが早く、オーナーに経済的負担をかける」という点で不利な状況にあることは間違いないのかも(これについても、エンジンオイルやトランスミッションオイルなど、油脂類の交換が不要であるというトレード要素を考慮しなくてはならない)。

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その他にはこんな「EVに関する問題」も

これらに加え、現在指摘されているのが「既存の立体駐車場ではEVの重さに耐えることができない」という問題。

現在の立体駐車場の多くは(自走式、エレベーター式にせよ)EVの重量を想定して設計がなされておらず、自走式だと「駐車するクルマの一定割合がEVになれば」倒壊の恐れがあり、エレベーター式だと「そもそも利用できない」という問題も。

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よって、これらの多くはEVに対応できるよう「建て替え」「入れ替え」の必要が出てくるのですが、たとえばニューヨークやロンドンなどでは「そもそも(都市や建物の構造上)建て替えや機械類の入れ替えができない」例もあるといい、EVの普及による「予想外の課題」が表面化しています(歴史的建築物の多い都市でも同様の指摘がある)。

ハマーEVは「環境に優しい」クルマとなるはずだったが・・・。実際はガソリンエンジン搭載セダンよりも多くのCO2を排出し、環境に負荷をかけるという試算結果
英国にて「このままEVが増えると、一部の古い立体駐車場はその重さに耐えることができず倒壊の危機がある」ことが表面化。駐車場の構造設計が見直されるという事態に

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さらに別の問題として「(酷暑や戦争による)電力不足」も度々報じられ、その場合は先に”生活に必要な”部分へと電力を優先供給するためにEVの充電ができない例も発生しており、これもまた想定の範囲を超える事象なのかもしれません。

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より良いEV社会を構築するために

そしておそらく、ここからのEV普及については、ある程度「未知の領域」に突入することは間違いなく、環境やコスト、人々の生活、インフラなど様々なジャンルにおいての議論がなされることになりそうですが、もちろんEVの良い面も取り上げ、より良い社会を築くための議論が戦わせられるべきであると考えます。

電気自動車は「万能の解決策」ではないものの、課題を正しく理解したうえで選択し、改善を続けることが持続可能なモビリティ社会への一歩となる(なにぶんEVは発展途上の乗り物である)、という認識を皆が持つことがなによりも重要なのかもしれませんね。

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参照:Jalopnik

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