
| クルマの価値は「数字」のみで語られるべきではないが |
はじめに:新型プレリュード、驚きの「9秒台」報道が波紋
復活を遂げたホンダのスペシャルティクーペ「プレリュード」。
スポーティーなデザインで注目を集める一方、そのパフォーマンスについては、発売前から様々な憶測が飛び交っていましたが、少し前には「目標の8倍」の受注を集めるなどその人気ぶりも話題となっています。
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そんな中、日本のメディアが行ったテストにて、新型プレリュードの0-100km/h加速タイムが「9.08秒」であったことが明らかになり、多くの自動車ファンの間で議論が巻き起こることに。
これは、ベースモデルのトヨタ・カローラ・ハッチバック(北米仕様)よりも遅いタイムとされていて、「ほとんどのスポーティカー」よりも遅い数字です。
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1. 日本でのテスト結果:新型プレリュードは本当に遅いのか?
今回公開された動画では、新型プレリュード(国内仕様)の0-100km/h加速が9.08秒、スポーツモードでの計測で9.10秒を記録したとされていますが、このタイムは競合車と比較すると以下のとおり。
- トヨタ GR86:6.1〜6.6秒
- ホンダ シビック e:HEV (欧州仕様):メーカー公称値では7.8秒
- トヨタ ベースカローラ・ハッチバック(北米仕様):同0-96km/h(0-60mph)では8.3秒
- マツダ・ロードスター:6.8〜7.2秒※今回のプレリュードの数字はNAロードスターと同じくらい
【注目の論点】「ローンチコントロール」は使用されたのか?
報道されたタイムが事実であれば、プレリュードは競合のスポーツモデルはもちろん、実用車であるカローラにも加速で劣るということになり、スポーティクーペとしての評価が問われる事態となりかねない、というのが今回の争点となっているわけですね。
ただし、このテストにおいて、ホンダ車の一部ハイブリッドモデルに搭載されている「ローンチコントロール機能」が使用されたかどうかが不明確であり、これが正確な(正当な)加速性能を示すデータであるかには疑問が残ります。
2. ホンダの公式回答:「シビック・ハイブリッド並」を予想
そして驚くべきことに、ホンダはこの報道に対して公式な見解を示しており、ホンダの広報担当者によれば、0-100km/h加速の公式タイムについては「路面状況、外気温、ハイブリッド車のバッテリー充電状態(SOC)など、多くの外的要因に左右されるため、伝統的に公表していない」と説明。
その上で、新型プレリュードの加速性能について、以下のコメントを発表しています。
「プレリュードはシビック・タイプRと一部のパフォーマンスコンポーネントを共有していますが、タイプRと競合するように設計されたわけではありません。新型プレリュードは、シビック・ハイブリッドのような、当社の他の2モーターハイブリッドモデルに匹敵する加速性能を発揮すると確信しています。」
また、重要な点として、新型プレリュードには「専用のローンチコントロールモードや設定はない」ことを明言。
しかし、シビック・ハイブリッドの独立系テストでは、ローンチコントロールを使用することで0-100km/hタイムが1秒以上短縮される事例があり、この機能の有無が実際の加速タイムに大きく影響することがわかっているため、この点で「プレリュードは不利」なのかもしれません。
【予想される真の加速タイム】
参考までに、北米の専門誌『Car and Driver』のテストでは、プレリュードと同じ203PSのシステム出力を持ち、重量も近いとされるシビック・スポーツ・ツーリング・ハイブリッドが、0-96km/h(0-60mph)で6.2秒を記録。
この結果から、今回の9秒台というタイムは、何らかの理由で性能を出し切れていない可能性が高く、実際にはシビック・ハイブリッドと同様の6秒台後半〜7秒台前半の加速が期待できると推測されていて、今後さらに出てくるであろうテスト動画を確認せねば「なんとも言えない」というのが今回の数字なのでしょうね。
3. 速さよりも「ハンドリング」と「上質さ」を追求したプレリュード
新型プレリュードが最速のスポーツカーではないことは明らかで、システム出力は203PS(2.0L 4気筒+2モーターe:HEV)、駆動方式はFF(前輪駆動)、そして日本の価格は617万9,800円、車重は1,460kg。
その代わり、ホンダが注力したのは「ハンドリング」と「上質さ」、さらには「ときめき」で、さらにホンダは当初から「プレリュードはサーキットを攻めるようなクルマではない」とも述べていたため、そもそもプレリュードに速さを押し付けること自体がナンセンスなのかもしれませんね。
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そして新型プレリュードは、絶対的なパワーでGR86などの軽量FRスポーツに対抗するのではなく、高い剛性を持つシャシーとe:HEVによるリニアなレスポンス、そして高効率な燃費性能(WLTC燃費23.6km/L)を両立させた「大人のためのスペシャリティクーペ」として開発された、と捉えるのが妥当であるとも考えられるため、そもそものプレリュードの立ち位置を理解する必要があるのかも。
まとめ:新型プレリュードの価値は「タイム」ではない
今回の「9秒台」報道は、新型プレリュードがシビック・タイプRのような「純粋な速さ」を追求したモデルではないことを改めて示す結果となり、しかし、ホンダの公式見解やシビック・ハイブリッドの性能から、実際の加速性能はもっと高い可能性が高く、むしろ真の価値は、タイプR譲りの足回りとe:HEVの上質な走り、そして優れた燃費性能を両立した点にあると言えるそうですね。
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