
| ランボルギーニから送り出される「闘牛」にはこうやって魂が吹き込まれる |
やはりV12モデルは「特別」な存在であることを再確認
ランボルギーニ。その名を聞くだけでも攻撃的なデザインを思い浮かべ、そして猛牛のように獰猛なエンジンサウンドが聞こえてくるかのようですが、このイタリアが生んだ孤高のスーパーカーたちは、一体どこで、どのような人々の手によって生まれているのか、という疑問も湧いてきます。
そして今回公開されたのがイタリア・サンタアガタ・ボロネーゼにあるランボルギーニの心臓部たる本社工場の内部を紹介する動画であり、ここからわかるのは、この工場はただの製造拠点ではなく、「妥協なき性能」と「芸術的なデザイン」が融合する、まさにスーパーカーの「魂の出生地」だということ。
ぼくは昨年末にランボルギーニ本社を訪れ、その際には工場の見学も行っていますが、その際にはウルスの生産拠点してか見せてもらえなかったため、この動画は「スーパーカー製造の現場」として非常に参考になります。※ウルスの製造工場はこれまでの「スーパーカー工場」とは別に新設されたもので、ウルスのみを組み立てている
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ランボルギーニのファクトリーツアーに参加してきた。工場では大量にウルス製造中。敷地内ではテメラリオにも遭遇
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1. 情熱が形になる場所:アヴェンタドールとウラカンの製造ライン
ランボルギーニではモデルごとに製造ラインを分けており、つまるところ「V12モデル」と「これまでのV10(ウラカン)とこれからのV8(テメラリオ)。※ウルスは上述の通り別工場
これはそれぞれのモデルが持つ設計思想の違いを反映しているためで、おおまかには以下のような相違が見られます。
レヴエルト(V12モデル)ライン:徹底的な手作業の領域
ランボルギーニのフラッグシップであるレヴエルトの製造ラインは(オートメーション化よりも)職人による手作業比率が高いのが特徴です。
- カーボンファイバーモノコック: V12モデルのシャシーは、軽量かつ高剛性のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)で構成され、このモノコックへのパーツ組み付け、特に複雑な配線や内装の装着は、人間の繊細な手と目が不可欠となる
- V12エンジンの組み付け: 巨大なV型12気筒エンジンは、まさしくランボルギーニの「猛牛の心臓」。その最終的な車両への搭載工程は、非常にデリケートであり、熟練した技術者が細心の注意を払って行う必要がある
ウラカン(V10モデル)ライン:生産効率と品質のバランス
現時点ではまだテメラリオの生産が本格化していないものと思われ、動画ではテメラリオの生産風景を確認できないものの、今後はテメラリオの製造を収めた動画も公開されることになるものと思われます。
- 生産効率を重視したオートメーション化:V10モデルであるウラカン(後継モデルを含む)のラインは、より近代的な生産効率が追求されており、ウラカンは、ドイツ・アウディの技術協力のもとで開発された背景があるため、生産設備や組み立てプロセスにおいて、VWグループが持つ高い生産品質と効率化のノウハウが活かされる
- 最終的な「美観」はイタリアの美意識によって達成される:しかし、それでも最終的な内装の仕上げや外装パネルのチリ合わせなど、イタリアの美意識に関わる部分は、熟練の職人が手を加え「仕上げ」を行っている
2. ランボルギーニを支える「二つの力」:クラフトマンシップとテクノロジー
ランボルギーニのスーパーカーが世界最高峰であり続けるのは、イタリアの「情熱」、そしてそれを裏打ちする「技術」の二つの力が完璧に調和しているからにほかならず、動画では細部に至るまでのこだわりを見て取ることが可能です。
なお、ランボルギーニのみならず、フェラーリでも同様ではありますが、ボディ上のストライプについては(ドイツ車やアメリカ車のように)ステッカーではなく”塗装”にて、しかも段差が残らないように複雑な工程を経て仕上げていることからも、イタリアのスーパーカーメーカーによる美観に対すしての「こだわり」がわかろうというものですね。
イタリアの職人技(Artigianato Italiano)
- 内装の芸術: ステッチ、レザーの裁断、そしてシートの縫製。ランボルギーニの内装はクルマというよりは高級なバッグやスーツを仕立てるのに近いプロセスを経ており、職人たちは、顧客が選んだ素材を手に取り、一つ一つ丁寧に仕上げてゆくことに。この「手」による作業こそが、ランボルギーニのエクスクルーシブな価値を生み出している
- ボディの最終確認: 塗装が施されたボディパネルは、人の手によって組み付けられた後、厳しい目視チェックを受ける。わずかな色ムラや歪みも見逃さないという徹底した品質へのこだわりは、デジタルでは代替できない領域である
欠かせない最先端テクノロジー(CFRPとアウディの知恵)
ランボルギーニは、V12モデルに積極的にカーボンファイバー技術を導入してきましたが、自社でコンポジット素材の研究開発(ACRC)を行うなど、超軽量化と高剛性化において業界をリードしています。
また、前述のように、VWグループの傘下に入ったことで、特にウラカンやウルスといったモデルの製造プロセスには、アウディが培った高い工業規格と品質管理システムが導入され、これによって製品の信頼性と耐久性を飛躍的に向上させ、「スーパーカーはすぐに壊れる」という旧来のイメージを完全に払拭することに成功したのは御存知の通り。
まとめ:クルマを超えた「体験」を生み出す工場
ランボルギーニの工場内部は「熱意を持った人間と、最高精度を誇る機械が共存するという非常にユニークな場所」。
ランボルギーニが製造するクルマは極限のパフォーマンスを追求する設計と、それを確実に形にする製造プロセスによって支えられていることがわかり、それぞれのランボルギーニが誕生した背景には、イタリアの誇りに加え世界最高水準の技術力が詰まっていることを再認識できるかと思います。
そう考えるならば、エンジンに火を入れ、あの咆哮を聞く時、そのサウンドには「サンタアガタの情熱が含まれている」のだと考えてよく、ちょっと感慨深いものがありますね。
ランボルギーニの本社工場を紹介する動画はこちら
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