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「パワステ」の登場は1951年。いまや「重ステ」は完全に過去のもの、「ステア・バイ・ワイヤ」導入でステアリングホイールは「コントローラー」へと向かう未来を考える

「パワステ」の登場は1951年。いまや「重ステ」は完全に過去のもの、「ステア・バイ・ワイヤ」導入でステアリングホイールは「コントローラー」へと向かう未来を考える

| 「ステア・バイ・ワイヤ」が変えるクルマの未来 |

【この記事の3点まとめ】

  • 「筋肉」から「電気」へ: 腕力を必要とした「アームストロング時代」から、指1本で操れる電動アシストへの劇的進化
  • 2026年、メルセデス・ベンツが革新: ドイツ車初、物理的な接続をなくした「ステア・バイ・ワイヤ」を市販車に投入
  • 究極の自由度: ハンドル形状や操作感がソフトウェアで自由自在に。ゲーム感覚で運転する時代の幕開け

駐車場は「ジムのよう」だった?重いステアリングホイールの苦闘史

若い世代には信じられないかもしれませんが、かつてクルマには「パワーステアリング」が備わっておらず、通称「重ステ」と呼ばれる非常に重いステアリングホイールとの格闘を強いられたものです。

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特に駐車時の操作は「筋トレ」そのもので、パワーステアリング(パワステ)が普及する前、重い車体を狭いスペースで曲げるには文字通り腕力が必要であり(さらには微妙なクラッチ操作によってクルマを少しづつ動かしつつ)、ドライバーの間では自嘲気味に「アームストロング(強い腕)式」と呼ばれていた時代があったほど。

とくにスポーツカーにおいては、操舵感を重視するという意味においても重ステを操作することを”修行”と捉える向きが少なくはなく、クイックな操作を実現しようと小径ステアリングホイールに交換すればするほど強い腕力を要求されたことも思い出されます。

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しかし現在、フェラーリやランボルギーニといったスーパーカー、ブガッティのようなハイパーカー、そしてVWゴルフGTIのようなホットハッチであっても指先ひとつで軽々とステアリングホイールを操作できるように。

そしてこの装備があまりに普通になってしまったため、そもそも「パワステ」という言葉自体が語られなくなり、「重ステ」の存在を知らない世代のドライバーがなんらかの機会にて旧車に乗ると、そのステアリングホイールの重さから「このクルマ、壊れてる」と感じるという笑い話も聞かれます。

今回はそのパワーステアリングについて掘り下げてみたいと思いますが、この魔法のような進化の裏には、100年にわたるエンジニアたちの執念があったことも忘れてはなりません。

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1951年、すべてを変えた「クライスラー・インペリアル」

パワステの歴史を語る上で欠かせないのが、エンジニアのフランシス・W・デイビスです。

彼は1920年代に世界初の油圧式パワステを開発(発明)するものの、大恐慌の荒波に揉まれ、普及には時間がかかってしまったという歴史的・環境的な背景も。

そしてついに1951年、クライスラー・インペリアルが市販車として初めてパワステを搭載することになるのですが、これによって、クルマは「力でねじ伏せる鋼鉄の獣」から「意のままに操れる相棒」へと進化することに。

ステアリング技術の進化系統

方式特徴主なメリット
マニュアル補助なし(直結)構造が単純、ダイレクトな路面情報
油圧式 (Hydraulic)エンジン動力でオイルを加圧自然な操作感、強力なアシスト
電動式 (EPS)モーターでアシスト低燃費、メンテナンスフリー、自動運転との相性
バイワイヤ (SbW)物理的な接続なし(電気信号)レイアウトの自由、究極のカスタマイズ性
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なお、上述の通りパワステの「パワーアシスト」には油圧式と電動式(EPS)とが存在し、油圧式は「油圧を発生させる」動力源をエンジンから拝借するのでエンジンパワーをロスする傾向にあり、しかし電動式だと独立したエレクトリックモーターがパワーを発生させるのでその心配がないというメリットが存在します(燃費向上の観点からも電動パワステのほうが有利であり、環境性能が重視されるという時代の要求も伴って、電動パワステはいま急速に普及している)。

フェラーリ
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一方、エンジンパワーをロスしないという利点を持つ電動式であっても「操舵感がイマイチ」「センターが安定しない」という指摘がスポーツカーを中心になされたことがあり、ポルシェ911のモデルチェンジにおいても過去にこれが争点となったことが記憶に残ります(ただ、ポルシェはその課題を克服したのちに新型911を発表したため、その懸念は杞憂に終わっている)。

電動パワーステアリング(EPS)の4つのタイプ

一口に「電動パワステ」と言っても、実は車種によって仕組みが異なっていて、簡単に分けると以下の通り。

  • コラムアシスト式: ステアリングホイールのすぐ近くにモーターを配置。小型車に多く、コストに優れる
  • ピニオンアシスト式: ギヤボックス付近でアシスト。中型車向けで、より自然な感覚が得られる
  • ラックアシスト式: タイヤに近いラック部分を直接押す。高出力で、スポーツカーや大型車に採用されることが多い
  • ベルト駆動式: 重い電気自動車(EV)や高級車向け。最も滑らかで強力な操作感を実現できる
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2026年、メルセデス・ベンツがが切り拓く「ステア・バイ・ワイヤ」の新時代

そしてここからが「ステアリングホイールの未来」。

「重ステ」→「油圧パワステ」→「電動パワステ」と進化してきたパワーステアリングではありますが、現在まったく異なる概念を持つステアリングホイールが登場しており、それが「ステア・バイ・ワイヤ(SbW)」。

実際のところ、自動車業界は新たな転換点に立っていて、メルセデス・ベンツは2026年、ドイツの自動車メーカーとして初めて、完全な「ステア・バイ・ワイヤ(SbW)」を量産車(新型EQSなどが有力)に導入することを発表しています。

https://www.flickr.com/photos/110074903@N02/55078790671/in/dateposted/

Image:Mercedes-benz

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ステア・バイ・ワイヤ(SbW)とは?

これまでのクルマは、ステアリングホイール(ハンドル)とタイヤが金属の棒(ステアリングシャフト)で繋がっていて、しかしステア・バイ・ワイヤにはそれがなく・・・。

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Image:Mercedes-benz

  • 仕組み: ハンドルを切るとセンサーが動きを検知。電気信号が瞬時にタイヤ側のモーターへ送られ、タイヤの向きを変える
  • メリット: 路面からの不快な振動を完全にシャットアウトできるほか、低速では少し回すだけで大きく曲がり、高速では安定感を増すといった「可変ギヤ比」が自由自在

つまるところ、ステア・バイ・ワイヤにおけるステアリングホイールは「ハンコンと同じ」ということですね。

参考までに、メルセデス・ベンツはブレーキを同様に「スイッチ」化し物理的なリンクを排除した「ブレーキ・バイ・ワイヤ」をいち早く導入した実績があり、さらにはステアリングホイールの代わりに「ジョイスティック」を用いたコンセプトカーを発表するなど、インターフェースの進化に対しては(伝統を守るという印象とは裏腹に)非常に積極的な会社なのかもしれません。

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Image:Mercedes-benz

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結論:ハンドルは「コントローラー」へと進化する

かつて「運転の楽しさ」は、路面の凹凸が手に伝わるダイレクト感にあったとも考えられますが、しかし自動運転(レベル3以上)やEVへの転換が進む2026年、ステアリングホイールは「情報の伝達手段」から「快適なインターフェース」へと姿を変えようとしています。

物理的なシャフトやギアがなくなることで、ステアリングホイールの配置における自由度が高まるうえ、その形は円形である必要すらなくなってしまい、自由にステアリングホイールを左右に動かして「(席を変わらずに)他の乗員にクルマの操作を移動させる」ことができるようになったり、自動運転中にはダッシュボードに収納される未来もすぐそこに迫っています。

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Image:Mercedes-benz

ぼくらが「クルマを運転している」という感覚そのものが、デジタルによって再定義されようとしているのが現在ということになりますが、ぼくはこういった変化に対してはポジティブに捉えていて、「再定義による新しい価値観」が創出されることを大きく期待しています(前に進むためには、過去のものを置いてゆかねばならない)。

ポルシェ
ポルシェが「ステアバイワイヤシステム」を研究中。フィードバックを正確に返すのではなく、むしろ「不要な情報は伝えない」方向を採用するもよう

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知っておきたい新知識:なぜ「バイワイヤ」は安全なのか?

物理的な繋がりがないと不安に感じるかもしれませんが、実は逆。

メルセデス・ベンツのシステムでは、センサーや配線、電源がすべて「二重(リダンダント)」に設計されています。

万が一システムの一部が故障しても、もう一つの系統が即座にバックアップを行い、さらに、ESP(横滑り防止装置)と連携し、片輪にブレーキをかけることで車両を曲げる「第3のバックアップ」まで備わっています。※このあたりのバックアップシステムの構築については、かつてブレーキ・バイ・ワイヤで痛い目を見た際の教訓なのかもしれない

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Image:Mercedes-benz

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参照:CARBUZZ, Mercedes-Benz, etc.

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