
| F1に使用される技術はモータースポーツの枠を超え、社会の発展に大きく貢献している |
さらには輸送やビジネスモデル、人材育成やプロモーションなど関連する分野は幅広い
F1は「モータースポーツの頂点」と言われますが、それはスピードだけではなく、そこに用いられる技術やチームの運営、戦略までを含めてのこと。
かつてのF1は「規制がゆるく」一時期は「何でもあり(6輪やファンカーなど)」で毎週のようにびっくりどっきりメカが相次ぎ登場し、それはそれで楽しかったものの、現在は使用される技術やパワートレーン、タイヤ、はては予算までもが厳しく制限されています。
そういった状況につき、ぼくは一時期「面白くなくなったな」「無制限に技術を発展させたほうが楽しいのに」とも考えていたのですが、ここ数年はそういった「制約の中でいかにアドバンテージを構築するか」という技術革新の速度が加速化したためか、あるいはマシンそのものに加え「戦略」の重要性が増したためか、今までにないほどF1が面白くなっているのでは、とも感じているわけですね。
そこで今回は「厳しい制約の中で、なんとか少しでも他のチームより速く走ろうとして」生み出された、かつそれがぼくらの生活の中に取り入れられた」技術につき、いくつかの例を見てみましょう。
この記事の要約
- F1にて開発された技術は、「自動車分野」だとパドルシフト、ダウンサイジングターボ、燃費向上技術に生かされている
- 自動車以外の分野だと、スーパーマーケットの冷蔵庫の冷却効率向上から病院での患者の状況把握、患者の搬送にまでF1の技術が生きている
- 2026年以降の新レギュレーションからのフィードバックにより、いま世界中を走るガソリン車が排出するCO2を大幅に削減する可能性を秘めている
自動車テクノロジー:燃費と操作性の革命
F1マシンの熱効率は、市販車の常識を遥かに超えています。
- 熱効率の差: 一般的な市販車のガソリンエンジンの熱効率が約30%〜35%であるのに対し、最新のF1ハイブリッドユニットは50%以上に達しています。この「究極の燃費」を追求する過程で生まれた技術が、現代のハイブリッド車やダウンサイジングターボの礎となっています。
- パドルシフトの普及: 1989年にフェラーリが導入したセミオートマチック・ギアボックスは、わずか数年で市販車(1997年のフェラーリ F355 F1)へ転移。現在では、軽自動車から高級セダンまで、新車のオートマチック車の多くにこのF1由来の操作インターフェースが採用されています。
非自動車分野:医療とスーパーマーケットの救世主
F1の技術は、サーキットの外でも驚くべき成果を上げています。
1. 医療現場での「ピットストップ」改革
- 小児科手術のミス削減: グレート・オーモンド・ストリート病院は、マクラーレンやフェラーリのピット作業を参考に、手術室から集中治療室(ICU)への患者の引き継ぎプロセスを再設計。その結果、引き継ぎ時の技術的なエラーが42%減少したという統計が出ています。
- リアルタイム・テレメトリー: F1マシンが1周あたり数百万のデータポイントを送信するのと同様の技術が病院での新生児のモニタリングに活用されています。これにより、医師は離れた場所からでもリアルタイムで患者のバイタルを精密に監視することが可能となっています。
2. スーパーマーケットの省エネ
- ウィリアムズのエアロフォイル(翼): ウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリングが開発した冷蔵庫用エアロフォイルは、スーパーのオープン冷蔵庫から冷気が漏れるのを防ぎます。
- 統計的な効果: セインズベリー(英大手スーパー)はこの技術を4,000店舗以上に導入し、年間で8,763トンものCO2削減に成功。各冷蔵庫のエネルギー消費量は15%〜25%削減されており、中には最大41.5%のエネルギーカットを記録したケースもあるのだそう。
3. 公共交通:ロンドンバスの燃費向上
ウィリアムズがレース用に開発し、パッケージングの問題で不採用となった「フライホイール式KERS(運動エネルギー回収システム)」。しかしこの技術は無駄にならず、ロンドンの象徴である「赤いに階建てバス」に再利用されることに。
- 燃料節約率: このシステムを搭載したハイブリッドバスは、発進と停止を繰り返す都市部の走行において、燃料消費を最大30%削減できることが実証されています。
結論|F1は「未来のインフラ」を創っている
F1が年間数億ドルを投じる開発競争は、一見すると贅沢な遊びに見えるかもしれません。
しかし、そこで培われた「1ミリを削るための精度」や「膨大なデータを瞬時に処理する能力」は、医療ミスの削減や地球規模の省エネに直結しています。
2026年からは、F1は100%持続可能燃料(サステナブル燃料)へと完全に移行することになりますが、これが「ドロップイン燃料(既存のエンジンでそのまま使える燃料)」として普及すれば、現在世界中を走る「約18億台」といわれるエンジン車の排出ガスを劇的に減らす可能性を秘めており、F1が「世界を一変させてしまう」未来すら見えてくるわけですね。
そういった視点からF1を見てみると、今までとは異なる、新しい気付きが得られ、F1が違ったものに見えてくるのかもしれません。
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参照:Motor1
















