
Image:Cangan
| やはり「バッテリー革命」はいつも中国発である |
記事の要約(ポイント3選)
- 寒さに異常な強さ: マイナス40℃で容量の90%を維持。冬場の航続距離減少というEV最大の弱点を克服
- 圧倒的な安全性: 釘刺しや破砕テストでも発火・煙が出ない。熱暴走のリスクを極限まで低減した新化学
- コスト革命の予感: 希少なリチウムではなく、安価でどこにでもある「塩(ナトリウム)」が主役。EVの低価格化へ
EVの「冬の常識」が今日、覆される
「冬になると航続距離が半分になる」「スキー場に行ったら充電が全然進まない」。
そんなEVオーナーの切実な悩みを、文字通り「溶かす」技術が現実のものとなり、世界最大の電池メーカーCATLが同社初のナトリウムイオン電池(Sodium-Ion Battery / Naxtra)を「中国・長安汽車(Changan)の新型セダン『Nevo A06(ネヴォ A06)』に搭載し、2026年内に量産を開始する」と発表。
これまで「次世代技術」として語られてきたナトリウムイオン電池がついに消費者の手の届くところへやってくるわけですが(CALTがこのナトリウムイオン電池のアナウンスを行ってからも数年が経過している)、なぜこれが「ゲームチェンジャー」と呼ばれるのか、その衝撃の性能を見てみましょう。
Our first sodium-ion battery will power the Chery EV models. The award-winning technology breaks the bottleneck of limited raw materials and provides a cost-effective solution. pic.twitter.com/yWLEQJ4e3B
— CATL (@catl_official) April 16, 2023
なぜ「ナトリウム」が選ばれたのか?
現在主流のリチウムイオン電池はリチウムという希少で高価な金属に依存しており、その一方、ナトリウムは塩の主成分なので地球上のどこにでも存在します。
しかしナトリウム採用の理由は「単に安から」だけではなく、今回CATLが実用化した「第2世代ナトリウムイオン電池」はエネルギー密度で既存のLFP(リン酸鉄リチウム)電池に匹敵する175 Wh/kgを達成。
それでいて、低温環境下での放電パワーはLFPの約3倍という驚異的な数値を叩き出しています。
なお、CATLは世界最大のバッテリーメーカーではあるものの、ソリッドステートバッテリーの実用化については否定的な見解を示しており(もちろん全固体電池の研究を続けていて、その上での”短期的には難しい”という判断)、しかしその代替として様々なバッテリーを開発しており、今回のナトリウムイオンバッテリーもその一つ。
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おそらくは今後もいろいろな「目的特化型」バッテリーが登場するものと思われますが、こういった事実を見るにつけ、ソリッドステートバッテリーの重要性が相対的に低下しているように思います(有用なのは間違いないが、その性能に比較してのコストが見合わないものとなってきている)。
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車種概要・スペック(Nevo A06 ナトリウムイオン版)
世界初の「塩で走る量産乗用車」となるNevo A06の主なスペックは以下の通りですが、気になる価格については現時点で発表されておらず、「車両コストの60%を占める」と言われるバッテリーにおいて、どれほどのコストダウンが実現されているのかに注目が集まります。
主要スペック一覧
| 項目 | 詳細スペック (想定含む) |
| モデル名 | Changan Nevo A06 (ナトリウムイオン版) |
| バッテリータイプ | CATL製 "Naxtra" ナトリウムイオン電池 |
| バッテリー容量 | 45 kWh |
| 航続距離 (CLTC) | 約400 km (約249マイル) |
| 低温時性能 | -40℃で容量の90%以上を保持 |
| 安全性 | 破砕、穴あけ、切断テストでの発火・煙ゼロを確認 |
| 販売時期 | 2026年内発売予定 |
リチウムイオン電池 vs ナトリウムイオン電池
従来の電池と何が違うのか、主要なポイントで比較してみると・・・。
- 寒冷地での信頼性:
LFP電池は氷点下で急激に性能が落ちるものの、ナトリウムイオンは-50℃まで安定動作が確認されており、北海道や北欧、北米の寒冷地ではナトリウムイオン電池こそが「正解」になる可能性がある - 安全性:
リチウムイオン電池が抱える「熱暴走(火災)」のリスクについても、ナトリウムイオンは化学的に安定しており、物理的な破壊に対しても極めて高い耐火性能を持っている - 航続距離:
現時点ではハイエンドな三元系(NMC)リチウム電池には及ばず、そのため、当面は「街乗り用の手頃なEV」や「寒冷地特化モデル」としての棲み分けが進むと予想される
結論:2026年は「電池の多様化」元年になる
長安汽車のNevo A06への搭載は単なる一車種のデビューではなく、CATLはすでにBMW、ヒョンデ、ホンダ、トヨタ、テスラといった主要メーカーへ電池を供給しており、この技術が数年以内に世界中のメーカーへ波及するのは確実です。
「安くて、安全で、冬に強い」。
ぼくらがEVに抱いていた不安をナトリウムという身近な要素が解決しようとしており、高価で希少なリチウムを奪い合う時代から多様な選択肢を持つ時代へ。
2026年、EVシフトは新たなフェーズに突入したと言えそうです。
関連情報:さらに広がる「ナトリウム」の波
参考までに、CATLは「チョコ・スワップ(Choco-Swap)」というバッテリー交換ステーションを中国全土に3,000カ所以上展開する計画を持っていることも報じられ、特に寒冷な北部地域(600カ所以上)には、このナトリウムイオン電池パックを重点配置される予定なのだそう。
「充電を待つ」のではなく「凍てつく寒さの中でも、数分で満タンの寒冷地仕様バッテリーに交換して走り去る」。
そんな未来が、すぐそこまで来ているというわけですね(中国のいくつかのブランドは「充電」ではなく「バッテリーをその場で交換」というスタイルを採用している)。
— CATL (@catl_official) February 3, 2026
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参照:CATL, Changan











