■そのほか自動車関連/ネタなど■

ソリッドステートバッテリー量産に遅れ?専門家が語る「現実的な課題」と今後の展望。もはや全固体電池の必要性が薄れているという指摘も

中国車

| 【2025年時点の最新動向】各メーカーの量産計画に疑問符、普及にはさらに5年? |

中国自動車フォーラムで専門家が指摘、「4つの重大課題」

次世代の「理想のバッテリー」として期待されるソリッドステート(全固体)バッテリー。

高エネルギー密度、高速充電、安全性といった特長を備えながら、実際の量産・搭載が想定よりも大幅に遅れる可能性が指摘されています。

なお、現時点における「想定」すらも当初の予定よりも大きく遅れており、このソリッドステートバッテリーが話題となり始めた頃は「2020年には実用化される」という内容であったと記憶しています。

ただしそこから実用化が大きく伸びて現在に至っていて、この状況を考慮して「そもそも全固体電池の実用化は不可能」「もっと実用化が先になることを見越し、過渡的技術を応用した次世代バッテリーの開発を行うほうが現実的」という話が出ているのが現在の状況でもあるわけですね。

トヨタ
トヨタや日産、BMWが実用化を進めるソリッドステートバッテリー(全固体電池)とは何なのか?そのメリットや短所、実現可能性は?

| ソリッドステートバッテリーは実用化できない、もしくは実用化しても普及しない可能性が大きく、代替技術のほうが有用だと考えられる | 加えてこれまでの流れとは異なり、今後ガソリンエンジンが生き残る可能 ...

続きを見る

現時点で中国は「バッテリー製造の最先端」である

そこで今回開催された「中国自動車フォーラム」にて、中国汽車技術研究センターの主任科学者・王芳氏が「ソリッドステートバッテリーが直面する4つの技術的障壁を次のように指摘」することとなったのですが、中国は現在バッテリーの生産や技術においては「最先端」を走っており、よってこの指摘は「的を射ている」のかもしれません。

  1. イオン伝導経路の不明確さ
  2. 製造プロセスの複雑さ
  3. 安全制御の未確立
  4. 大量生産体制の未整備

これらは、材料・技術・コストの各面で未解決な問題であり、短期的な解決は困難と見られています。

EV用バッテリーシェアNo.1のCATLが「ソリッドステート(全固体)技術はEV業界が考える特効薬ではない」と衝撃発言。実現の難しさ、その危険性について言及
EV用バッテリーシェアNo.1のCATLが「ソリッドステート(全固体)技術はEV業界が考える特効薬ではない」と衝撃発言。実現の難しさ、その危険性について言及

| 早ければ2020年に実現するとしていたメーカーも存在したが、現時点では実用化の目処は立っていない | もしかすると、このまま永遠に実現できない「幻の技術」となる可能性も Image:CATL さて ...

続きを見る

DSC07266

【各社の量産計画一覧】2026年〜2030年が目標も現実は厳しい?

参考までに、現時点での大手自動車メーカーの「ソリッドステートバッテリー実用化」スケジュールはこういった状況となっていて、現在の予定であっても中国が他の国の自動車メーカーに先んじていることがわかりますね。

自動車メーカー計画バッテリーメーカー計画
BYD2027年:デモ車、2030年:本格展開CATL2027年:小規模生産
Chery2026年:実証運用開始、2027年:市場投入CALB2028年:量産開始
トヨタ2030年:量産予定Penghui2026年見込み
SAIC(上海汽車)2026年:量産計画Farasis2025年末:60Ah 硫化物型バッテリー量産
GAC(広州汽車)2026年:量産Talent New Energy2027年:バッチ生産
長安汽車2026年:検証開始、2027年:量産化へEVE Energy2026年:量産、2028年:次世代投入
BMW2030年前:本格量産Svolt2030年以降

メルセデス・ベンツがソリッドステートバッテリー(全固体電池)搭載プロトタイプの公道テストをついに開始。一回の満充電あたり航続距離は約1,000km、EV新時代の到来か
メルセデス・ベンツがソリッドステートバッテリー(全固体電池)搭載プロトタイプの公道テストをついに開始。一回の満充電あたり航続距離は約1,000km、EV新時代の到来か

Mercedes-Benz | 現時点では多数のバッテリーメーカー、自動車メーカーがソリッドステートバッテリーの実用化に王手をかける | ただし「実現」できたとしても価格や生産ボリュームなどの課題も残 ...

続きを見る

安全性に関する懸念:「一線を越えたら液体電池より危険」

王芳氏は「全固体電池は液体より安全性の“幅”は広いが、限界を超えると液体より危険になる」と指摘しており、近年EV火災の報道が相次ぐ中、メーカー各社は国の基準を上回る安全試験を実施しているものの、現時点ではラボレベルのデータに過ぎず、実車での検証は「まだまだこれから」という段階です。

DSC07685

BYD
ソリッドステートバッテリー(全固体電池)でも中国が独走?チェリーに続きBYDが「2027年から市販車に搭載」と発表

| ただし依然として生産コストは高く、今後しばらくは既存のバッテリー技術が主流になることについても言及 | これに対し日米欧の自動車メーカーは同時期に「試験生産」をようやく行うという段階である さて、 ...

続きを見る

新たな競合技術:PHEVと急速充電でソリッドステートの必要性が低下?

なお、ソリッドステートバッテリーは一般に「リチウムイオンバッテリーの3倍のエネルギー密度を持つ」とされ、しかし現時点ではリチウムイオンバッテリーの性能も向上していて、PHEVやEREV(レンジエクステンダーEV)であれば「より安価に」ソリッドステートバッテリー同様の航続距離を実現できる例も登場しています(現在の中国では「1,000km無給油・無充電走行」がひとつの目安である)。

実際のところ、中国においても「より現実的な選択肢」としてPHEVやEREVが急成長しており、2025年上半期には前年同期比で以下のような増加を記録していることも明らかに。

種類成長率(前年比)
BEV(純EV)+42.5%
PHEV(プラグインハイブリッド)+5.1%
EREV(航続距離延長型)+26.2%
NEV全体+28.3%

また、BYDの「eプラットフォーム」やZeekr / Huaweiの1.5MW超急速充電、NIOのバッテリー交換ステーション(3,000拠点)といった代替技術の進化により、ソリッドステートバッテリーの「必然性」は後退しつつあり、この流れが続くならば、「研究開発費がかさみ、実用化できても高額な選択肢となるため、販売上のメリットもさほどない」であろうソリッドステートバッテリーの開発から撤退する例もあるかもしれません。

ソリッドステートバッテリー(全固体電池)搭載市販車第一号は中国から?チェリー(奇瑞汽車)が全固体電池生産のため世界初のGW/h級工場建設を開始、コンセプトカーも公開
ソリッドステートバッテリー(全固体電池)搭載市販車第一号は中国から?チェリー(奇瑞汽車)が全固体電池生産のため世界初となるギガワット級工場建設を開始、コンセプトカーも公開

Image:Autohome | ソリッドステートバッテリーは「ある種の危険性」をどうしても排除できず、車載が困難だとされている | いずれのメーカーも「あと一歩」のところまで来ているとは言われるが ...

続きを見る

コストは従来の3倍以上、「高級車専用装備」から脱却できるか?

コンサル企業「Battery Intelligence」によると、ソリッドステートバッテリーのコストは1,200元/kWh(約2.6万円/kWh)。

これは従来の液体リチウム電池の3倍以上に相当し、コスト面でのハードルは依然として高いままとなっていて、この価格が「現在の、EVに対する低い熱量しかない市場」で受け入れられるかどうかは大きな疑問として残ります。

DSC08669

フルモデルチェンジ版 新型マセラティ・グラントゥーリズモの電動版「フォルゴーレ」のフロントデザインが明らかに!MC20っぽい顔つきでなかなかカッコいいぞ
マセラティ「ソリッドステートバッテリー(全固体電池)は性能上の懸念があり、我々は使用しないことを決定した」。EVであっても各社各様の考え方があって面白い

| どうやらソリッドステートバッテリーは「一気にパワーを放出すること」に向いていないようだ | 一方では軽量性や安全性、密度に優れるというメリットも さて、現在は多くの自動車メーカー、そしてバッテリー ...

続きを見る

結論:5年以内の普及は「楽観的すぎる」?

いくつかの中国メディアによれば、これらの技術的・性能的・コスト的課題により、2026~2027年という各社の量産目標は実現が難しいという見方が強まっており、本格的な普及には、少なくともあと5年はかかるというのが一般的な予想です。

そして技術の進歩著しい現在、「5年」先にはまた自動車を取り巻く環境、そして既存バッテリーに関する技術、もちろんソリッドバッテリーに関する技術もなんらかの変化を迎えているのかもしれません。

バッテリー製造最大手、CATLが「電動旅客機も実現できる」新型蓄電池の実用化を発表!ソリッドステートバッテリーの実用化前にそれ以上の性能を実現できそうだ
バッテリー製造最大手、CATLが「電動旅客機も実現できる」新型蓄電池の実用化を発表!ソリッドステートバッテリーの実用化前にそれ以上の性能を実現できそうだ

| 今年後半から生産が開始されるといわれるものの、実際に車両に採用されるまではそれを信じることが難しい | バッテリーメーカーが言うのであれば間違いはなさそうだが さて、バッテリー製造最大手のCATL ...

続きを見る

合わせて読みたい、ソリッドステートバッテリー関連投稿

シャオミが全固体電池(ソリッドステートバッテリー)の課題を解決する特許を出願。明確なブレイクスルーを示し実用化に王手か
シャオミが全固体電池(ソリッドステートバッテリー)の課題を解決する特許を出願。明確なブレイクスルーを示し実用化に王手か

Image:Xiaomi | シャオミが全固体電池に本格参入──特許公開で示した次世代EV戦略の一手 | シャオミ、全固体電池の特許を初公開 スマートフォンメーカーとして知られるXiaomi(シャオミ ...

続きを見る

BMW
ソリッドステートバッテリーのトップランナーであったBMWでもその実用化に苦慮。「2030年まで量産はできないだろう」とし、ノイエクラッセは全固体電池抜きで発売

| ソリッドステートバッテリーはノイエクラッセにおける目玉のひとつであったが | 現在の各社の対応を見ていると、2030年でも「実用化は怪しい」ように思われる さて、EV関連技術に関してもっともホット ...

続きを見る

トヨタ
トヨタのソリッドステートバッテリーは実用化できたとしても「わずかな台数しか生産できない」?そのためゲームチェンジャーとはならない可能性も

| ただし他の自動車メーカーのソリッドステートバッテリー搭載車も同じような状況だと思われる | そもそもソリッドステートバッテリーの実用化すら「怪しい」 さて、先日トヨタはバッテリーに関する戦略を発表 ...

続きを見る

参照:CarNewsChina

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

-■そのほか自動車関連/ネタなど■
-, , ,