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フェラーリ初のEV「ルーチェ」のデザインに対して”元身内”、かつて同社CEOを努めたモンテゼーモロが「中国人もコピーしない」「跳ね馬のバッジを外すべき」と酷評

フェラーリのEV、ルーチェのエクステリア〜リア

Image:Ferrari

| ただしルーチェの発表によってフェラーリは一気に「これまでリーチしなかった層にその名を轟かせる」ことになる |

さらにイタリア副首相までもがルーチェに対して批判的な発言を行って驚かせる

世界中の自動車ファンや投資家が固唾をのんで見守る中、ついにベールを脱いだフェラーリ初の100%電気自動車(EV)「ルーチェ(Luce)」。

しかし、その革新的なスタイリングを巡り、かつてないほどの嵐が巻き起こっているのもまた事実であり、ネット上のファンによる批判だけでなく、フェラーリの黄金期を築いた伝説の元CEOやイタリア政府の要人までもが公の場でこの新型EVをバッシングする異例の事態に発展し、各自のコメントが話題を呼ぶことに。

フェラーリのEV、ルーチェのインテリア〜ステアリングホイール
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この記事の要約・ポイント

  • 元トップからの酷評: 1991年から2014年までフェラーリを率いたルカ・ディ・モンテゼーモロ元CEO / 会長が、新型EV「ルーチェ(Luce)」の外観を「跳ね馬のバッジを外すべき」「伝説を破壊するリスクがある」と強く批判
  • イタリア政府要人も参戦: イタリアのマッテオ・サルヴィーニ副首相兼インフラ運輸相もX(旧Twitter)で「まったくフェラーリに見えない」と不快感を表明
  • 市場の冷ややかな反応: 発表直後、フェラーリの株価はイタリア市場で8.4%、米国市場で5.26%下落し、投資家やファンの間での困惑が浮き彫りに
  • デザインの功罪: 元Appleのチーフ・デザイナー、ジョナサン・アイブ氏率いる「LoveFrom」が手掛けたミニマルなエクステリアが物議を醸す一方、物理スイッチを多用した内装は高く評価
フェラーリのEV、ルーチェのエクステリア〜フロント正面

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「跳ね馬バッジを外せ」。モンテゼーモロ氏が投げかけた痛烈な一言

新型ルーチェの発表直後、イタリアのメディア「Askanews」の取材に対し、フェラーリの元会長兼CEOであるルカ・ディ・モンテゼーモロ氏は一切のオブラートに包むことなく不満を爆発させ、この発言が非常に大きな話題を呼んでいます。

「本当に思っていることを口にすれば、フェラーリを傷つけることになるだろう。フェラーリはレジェンド(伝説)を破壊するリスクを冒しており、非常に残念に思う。せめてあのクルマから『跳ね馬』のバッジを外してくれることを願うよ。このルーチェのデザインであれば、少なくとも中国人は真似(コピー)しないだろうね」

この「中国人もコピーしない」という発言には強烈な皮肉が込められていて、この背景にあるのは中国のシャオミ(Xiaomi)が発表した新型SUV「YU7」が、フェラーリ初の4ドア4人乗りモデル「プロサングエ」に酷似していると世界中で話題になったこと。

そして今回、モンテゼーモロ氏は、「プロサングエのような美しい伝統的造形は中国に真似されるが、このルーチェのような奇抜なデザインは誰も真似したくならないだろう」と、現代のフェラーリのデザインの方向性を暗に批判したというわけですね。

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イタリア副首相もSNSで批判、株価は一時急落

批判の波は政治の世界にも波及しており、イタリアのマッテオ・サルヴィーニ副首相兼インフラ運輸相は自身のX(旧Twitter)アカウントで以下のようにポストしていて、しかしタイミング的にこれはフェラーリがイタリア首相に対してルーチェをお披露目した直後だとも考えられます。

「まったく(フェラーリに)見えない。これが『イノベーション』だというのだろうか。エンツォ・フェラーリが生きていたら何と言うか、知る由もない」

フェラーリのEV、ルーチェのインテリア〜ステアリングホイール
フェラーリ初のEV「ルーチェ」がローマ教皇に”謁見”。実際に試乗しステアリングホイールを贈呈、さらにイタリア首相にもお披露目されて株価は1%回復

Image:Ferrari | 現時点では厳しい意見が多数を占めるものの、ある意味で「これまでにフェラーリと接点がなかった人々へとニュースが届くことに | そしてこれは「フェラーリの狙い通り」なのかも ...

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この身内や国家要人からの容赦ないフィードバックに連動するように市場も即座に反応し、ルーチェ発表当日、フェラーリの株価はイタリア市場で8.4%、米国市場で5.26%の下落を記録したというのは既報のとおり。

ただ、ここで注意を要するのは、フェラーリは「週半ば、そしてイタリア株式市場がオープンした1時間後」にルーチェを発表したこと。

このルーチェに対しては(デザインよりもピュアEVということで)批判的な意見が集まることがあらかじめ想定されたはずで、つまり株式市場がネガティブな反応を示すことを想定しつつも「取引時間中に」このルーチェを発表したわけですね。

参考までにですが、トヨタ自動車の「社長交代」は金曜日の東京証券取引所での相場が終了した後(午後4時。もう株式の売買ができない)に発表されていて、これはつまり「トヨタの株価に即座に影響を与えない」「土日を挟んで投資家が冷静になるタイミングを与える」ことを考慮したもの(スキャンダルはだいたいこのタイミングで発表される)。

フェラーリのEV、ルーチェのエクステリア〜俯瞰図

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フェラーリはこの事態を「活用」か

つまることろフェラーリは「批判を承知にもかかわらず」「株価の下落を承知で」このタイミングにてルーチェを販売したのだと考えてよく、そしてこれはフェラーリ会長、ジョン・エルカーン氏が(イタリア大統領にルーチェを紹介した際の)コメントした内容からも伺うことができ・・・。

「クィリナーレ宮殿にてマッタレッラ大統領の賓客となり、フェラーリ・ルーチェをお披露目できたことを大変光栄に思います。この新モデルは、フェラーリを世界中で一瞬にして認知させる価値観を、そのまま未来へと運ぶものです。それは、日々のブランドの歴史を形作っているすべてのフェラーリ従業員の情熱、専門知識、そしてコミットメントの結晶にほかなりません。フェラーリの全員を代表して、大統領の温かい歓迎と、私たちの国を一つにする価値観への揺るぎないご支援に心から感謝いたします」

この「フェラーリを世界中で一瞬にして認知させる価値観」という部分につき、この価値観を適切な人々(環境意識の高い新しい世代の富裕層、若きテック起業家など)、そして(将来的なポテンシャルカスタマーとなる)まだフェラーリとはコンタクトポイントがない人々に対してアピールするため、フェラーリはメディアや株価含め、様々な方法を最大限に活用したということなのかもしれません。

そしてもうひとつ興味深い事実が「インフルエンサーやカーメディアがルーチェを批判していること」。

これは実は「異例」でもあり、というのもインフルエンサーやメディアが仮にフェラーリを批判すると、「次から試乗イベントに呼ばれなくなったり、取材対応が塩になる」と言われているからで、そのため基本的にインフルエンサーやメディアはフェラーリの新型車に対して批判しないという通例(というか暗黙の了解)があるわけですね(かのクリス・ハリスですらフェラーリを批判したことで長らく冷遇されたことがある)。

しかし今回は様々なカーメディア、そしてインフルエンサーがルーチェに対して批判を行っており、そしてその内容はしばしば「過激」なタイトルを伴うもので、これらを見るに、フェラーリはルーチェについて「批判を許可」したのではと捉えることも可能です。

その背景には「(ガソリンエンジン搭載の新型車であればともかく、EVなので)いい情報ばかりだとウソくさくなる」と考えたであろうことも想定できるのですが、ネット上では「ネガティブ案件ほど拡散される」という事実があるため、フェラーリはそういった傾向をも利用しようとして「批判を許可したのでは」とぼくは推測。

これはある意味、極端なプロモーションによって「良くも悪くも、3日間だけは世界で最も有名な自動車メーカーになった」ジャガーの手法ともよく似ていて、たしかにジャガーはそうでもしないと「ブランドをリブートすることすら誰にも知られなかった」可能性があり、そしてルーチェも今回のようなネガティブ情報の拡散がなければ、一般の人は「フェラーリがEVを発売したことすら知らない」ままに終わっていたのかもしれません。

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つまりすべてはフェラーリの「計算済みの行動」であり、ぼくらはフェラーリの手のひらの上で踊らされているだけなんじゃないか、とも考えられます(こういった状況に遭遇すると、ぼくはいつもオビ=ワン・ケノービの「騙されていたのだよ、我々は・・・」というセリフを思い出す)。

一方でルーチェのインテリアには高い評価も

なお、ルーチェがこれほどまでの論争を巻き起こしている理由はそのエクステリアデザインに集約され(F80のときは「パワートレイン」が標的であったが、今回は不思議なことにほとんど誰もEVということを批判していない。これもフェラーリの思惑通りなのかも)、ルーチェのデザインを担当したのは、iPhoneのシニアデザイナーとして世界に名を馳せたジョナサン・アイブ氏とマーク・ニューソン氏が率いるクリエイティブ集団「LoveFrom」。

アイブ氏は今年2月の段階で「このEVフェラーリは物議を醸すだろう」と予言しており、それは「従来のスーパーカーが持っていた「複雑なエアロダイナミクス、攻撃的なライトの造形、エンジンを誇示するようなプロポーション」をあえて捨て去り、スマートフォンのような極限まで滑らかでミニマルな「1枚の金属の塊」のようなルックを採用したからで、これがオールドファンには「イタリアン・エレガンスの欠如」「車輪のついたiPhone」と映ってしまったわけですね。

ただ、これは「新しいものを創造するには、まず何かを破壊する必要がある」というデザインの鉄則を体現するもので、やはり「ある程度の批判は想定内」であったのだと思われます。※そもそも、すべての人を満足させることはできない

フェラーリのEV、ルーチェのインテリア〜全景

Image:Ferrari

しかし、一方でインテリア(内装)に関しては称賛の声が多く上がっていて、近年のフェラーリ(296GTBやローマなど)で不評だった「ステアリングホイール(スポーク)上のタッチパネル式スイッチ」を完全に廃止し、カチッとした手触りのある上質な物理ボタンやトグルスイッチ、アルミニウム製のレバーへと回帰したことが絶賛され、「触覚のエルゴノミクス」にこだわった内装は”最高峰のラグジュアリーにふさわしい”仕上がりだと評価されています。

これについても、「携帯電話から物理ボタンを排除した張本人」であるジョニー・アイブ氏が「現在主流となりつつある非物理操作を否定して物理ボタンを復活させた」という逆説的な結果となっていて、ここからも同氏は「自分の好み」「自己実現」のためではなく、「革命を起こすため」にルーチェをデザインしたということがわかります。

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なぜフェラーリは「叩かれるリスク」を取ったのか?

これまでのフェラーリの歴史を振り返ると、実は「これまでにない新しいパッケージを提案した時は必ず猛批判を浴びてきた」という事実があり、例えば、初のV8ミッドシップである「308GT4」がベルトーネによるスクエアなデザインで登場した時も批判され、初の4輪駆動ワゴン風モデル「FF(フェラーリ・フォー)」、そして記憶に新しいブランド初のSUV「プロサングエ」の発表時も「こんなのフェラーリじゃない」「エンツォが草葉の陰で泣いている」と、今回のルーチェと全く同じ言葉で叩かれてきたわけですね。

しかし結果はどうかというと、プロサングエは現在、数年先までバックオーダーを抱える世界的大ヒット作となり、フェラーリの利益を大きく牽引しています(FFはいまだ再評価がなされていないのが残念ではあるが)。

さらには「プロサングエのコピー」と揶揄されたシャオミYU7も「絶好調」で、つまりこういった事例を見るに、「批判は必ずしも失敗を意味しない」ということに。

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フェラーリのEV、ルーチェのインテリア〜トグルスイッチ

現在の中国製EVは1,000馬力以上のスペックや巨大な液晶画面を驚異的な低価格で提供していて、フェラーリが彼らと同じ「既存の延長線上にあるかっこいいEV」を作ったとしてもスペックと価格の消耗戦に巻き込まれるだけで、よってサー・ジョナサン・アイブを起用し、あえて工業製品としての彫刻的な美しさと物理スイッチの工芸品的な価値に全振りしたのは「中国メーカーが効率重視で絶対に真似したくない、真似できないウルトララグジュアリーの領域」にブランドを避難させるための極めて冷徹かつ高度な経営判断(防壁戦略)であるとも解釈することが可能です。

結論

一方、元CEOであるモンテゼーモロ氏やサルヴィーニ副首相の言葉は、伝統的な「ガソリンを燃やし、咆哮を響かせる跳ね馬」を愛してきた人間としての、純粋かつ血の通った本音だとも言えるもの。

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その意味で今回の株価下落やネットの炎上は、フェラーリというブランドがいかに人々の感情を揺さぶる存在であるかを示す証拠でもあり(「好き」の反対は「嫌い」ではなく「無関心」という言葉が表す通り、今回の批判はフェラーリへの期待と愛情への裏返しだとも受け取れる)、しかしフェラーリの現経営陣(ジョン・エルカーン会長やベネデット・ヴィーニャCEO)が見据えているのは「今」でも「過去の再現」でもなく、10年、20年先もブランドが生き残り、かつ世界の頂点に君臨し続けるための変革です。

つまり消費者と経営陣では「見ている時間軸が全く異なる」ことが今回の批判の根本にあるのだとも考えられ、フェラーリはそれを理解しているからこそ、「批判も受け入れる」というスタンスにてルーチェをリリースしたのでは、とも考えています。

なお、オールドファン、そして市場を喜ばせることだけを考えるならば、このフェラーリ初の電気自動車は「外観をかつてのテスタロッサのままで、中身をエレクトリックパワートレインに置き換えた」クルマであれば良かったのであろうとも考えていますが(それだと多くの人は狂喜乱舞していただろう)、それだとフェラーリは「未来には行けず」、よって、やはり正解は今回発表されたルーチェの姿であったのかもしれません。

この「醜い」とまで言われたルーチェではありますが、数年後には「時代を先取りしすぎていた傑作」として富裕層に奪い合われる存在になるのか、それとも伝統主義者の言う通り、伝説の終わりを告げる1台になってしまうのか。

今の時点でそれを判断することはできないものの、時間が証明してくれることになるのだとも考えています。

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