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初のEV発表の裏でフェラーリが「水素エンジン車」の本命特許を出願。やはりフェラーリは「多様な選択肢を重視」する?

フェラーリ アマルフィのリア~Ferrariエンブレム
Life in the FAST LANE.

| 伝統のV12と快音を守る跳ね馬の逆襲が特許出願から明らかに |

フェラーリは「水素」の多様な活用方法を考えている

2026年5月、フェラーリはブランド初の市販フル電動GT「ルーチェ(Luce)」を発表して世界中に大きな衝撃を与えていますが、フェラーリが電動化(EV)の未来だけにすべての賭け金を張っていないことが最新の特許情報から明らかに。

カーメディア『CarBuzz』が報じたフェラーリの新しい特許では、フェラーリが水素をEV(燃料電池車:FCEV)のためとしてではなく、「直接シリンダー内で燃焼させる内燃機関(水素エンジン)スポーツカー」のために使用する、極めて実用的かつ革新的な「燃料タンク」に関する技術が明らかになっています。

「環境規制はクリアしつつも、エンジン特有の官能的なサウンドとパワーフィールは絶対に死守する」という、イタリアの跳ね馬による執念とも言える水素戦略の全貌を見てみましょう。

この記事の要約

  • EV「ルーチェ」発表の裏で:初の5人乗り4ドアEV「ルーチェ(Luce)」を世界初公開したばかりのフェラーリだが、完全EV化へ一本化する気は毛頭ない
  • 水素燃料タンクの革新特許:従来の重く巨大な円筒形タンクの常識を覆す、「伸縮・変形する素材」を用いた画期的な水素タンク特許が判明
  • ミッドシップの終焉!?:特許図面によると、この新型タンクは車体後部(従来のエンジンフードやトランクの位置)に高く配置され、今後のパッケージングに激変をもたらす可能性
  • 狙いは内燃機関(ICE)の延命:フェラーリの魂である「エンジンの鼓動とエキゾーストノート」を、ゼロ・エミッション時代にも存続させるための大本命技術
フェラーリ
フェラーリが水素燃料電池車に関する特許を出願。水素電池セルを車体底面に「ディフューザー的役割を担当させるべく」配置しガソリン車では達成できないダウンフォースを獲得

| さらにはこの水素燃料電池スタックが車体構造の一部を兼ねることでパーツ点数が大幅に削減される | 電動化によって「これまでできなかったこと」がアイデア次第で実現できるように さて、フェラーリはこれま ...

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ワイン箱の構造から着想?フェラーリの「可変式水素タンク」とは

水素を燃料として自動車に積む場合、最大の高い壁となるのが「貯蔵方法」。

水素はエネルギー密度が低いため、十分な航続距離を確保するには膨大な体積が必要になりますが、そのため現行の水素自動車(トヨタ・ミライなど)では、約70MPa(約10,000 psi)という超高圧に耐えられるよう、カーボンファイバーを何重にも巻き付けた強固で巨大な「円筒形(シリンダー型)」のタンクを採用するのが一般的です。

しかし、この円筒形タンクは形状の自由度が低く、スペースが限られるスーパーカーのデザインには致命的な障壁となっていたわけですね。

ちなみに比較的車両が大きなトヨタ・クラウンFCEV(燃料電池車なので水素を燃焼させる方式ではないが)であってもこの問題を解決するために「(下の画像のように)水素タンク」をいくつかに分けて搭載しており、いかに水素タンクのレイアウトにトヨタが苦労しているかもわかります。

THE CROWN 大阪千里にて、トヨタ クラウン セダン FCEV「カットモデル」のフロア

Image:Life in the FAST LANE.

「ボックス入りワイン」に似た革新的構造

そこでフェラーリが考案したのが、「容量に合わせて膨らんだり縮んだりする、変形可能な素材を使った水素タンク」で、この特許技術を分かりやすく例えるなら、「箱ワイン(バッグ・イン・ボックス)」の構造です。

  1. 外側の強固なボックス(バスケット):車体のシャシーに剛性を持たせて固定される外枠
  2. 内側の変形するバッグ(バルーン):水素の充填量に応じて膨張・収縮する特殊素材のタンク本体

高圧に耐えながらも柔軟に変形するバッグをリジッド(頑丈)な外枠で支える構造ですが、ここで問題になるのが「燃料の注ぎ口(フィッティング/接続部)」問題。

タンク本体が燃料の増減で動いてしまうと、パイプの接続部に無理な力がかかり、最悪の場合は超高圧水素のリーク(漏れ)という重大な危険を招きます。

しかしフェラーリの今回の特許は、タンク本体がどのように伸縮しても、水素を出し入れする「導管(フィラーネック)」だけは定位置にがっちりと固定し、ストレスを完全にいなすための特殊な支持メカニズムに関するというもの。

これによってスーパーカーの複雑な形状に合わせて水素タンクを安全に効率よく配置することが可能となるわけですね。

THE CROWN 大阪千里にて、トヨタ クラウン セダン FCEV「カットモデル」のフロア

性能・デザイン・スペックなどの特徴、およびパッケージングの激変

この革新的なタンク技術は安全面やスペース効率で大きなメリットをもたらす一方、フェラーリ伝統の「プロポーション(スタイリング)」や「パッケージング」に、これまでにないドラスティックな変化を強いる可能性があり、特許の図面から読み解く未来の水素フェラーリの予想スペックとレイアウトの特徴は以下の通りです。

水素フェラーリ(特許ベース)の予測特徴とレイアウト

  • 燃料重量の圧倒的な軽さ:一般的なガソリン車(例:フェラーリ12チリンドリ)が満タン時に約70〜80kgの燃料の重さを背負うのに対し、水素燃料そのものは数kg(トヨタ・ミライで約5.6kg)と極めて軽量。タンク自体の重量を考慮しても、従来のガソリン満タン状態より車両全体を軽量に仕上げられるというメリットがある(これは今までにあまり語られていない事実ではあるが、スポーツカーにとっては非常に大きなアドバンテージである)
  • タンクの配置は「リアの特等席」へ:出願された図面によると、この新型水素タンクは床下やセンタートンネルではなく、リヤの最も高い位置、つまり従来の「ミッドシップエンジンのフード」や「トランク」がある場所にマウントされている
  • ミッドシップ構造の事実上の終焉?:リヤ上部を巨大な水素タンク(またはそのカバー)が占拠するため、ぼくらがバックミラー越し、あるいはガラス(プレキシグラス)ボンネット越しに美しいV6 / V8やV12エンジンを眺めるレイアウトは不可能に。つまり、水素燃焼エンジンを積む場合、エンジン自体は「フロントミッドシップ(前装)」にせざるを得ない可能性が極めて高く、実用的な荷物スペース(ラゲッジ)もほぼ犠牲になると予想される

「リヤの高い位置にタンクを置くと重心が上がってハンドリングが悪化するのでは?」という懸念もありますが、前述の通り水素燃料自体がガソリンより遙かに軽いため、運動性能(ロールセンターや重力バランス)への悪影響は最小限に抑えられるとフェラーリは計算しているようですね。

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市場でのポジショニング

近年、欧州の環境規制(ユーロ7や2035年以降のe-fuel/ゼロエミッション規制)への対応として、ポルシェはe-fuel(合成燃料)への投資を加速させ、トヨタやマツダ、BMWは水素エンジンの実用化に向けて共同戦線を張っており、今回フェラーリが提示した特許は市場における、以下のような非常に重要なポジションを意味します。

フェラーリ296GTBのサイド(ブルー)
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1. 「逆さまエンジン」特許との繋がり

フェラーリはこれまでに、空間を極限まで有効活用するために「エンジンを上下逆さま(クランクシャフトが上、スパークプラグが下)に配置する直列6気筒・ツインスーパーチャージャー水素エンジン」という、前代未聞の特許も取得しています。

今回の可変式タンク特許は、その奇抜なレイアウトを現実のものにするための「ミッシングリンク(失われていた最後のピース)」であったとも考えることができ、つまり複数の、かつ実用的な特許の内容からすると「フェラーリはかなり本気で」水素を燃料として使用したエンジン、およびそれを搭載した車両を開発しようとしているのかもしれません。

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2. EVシフトに対するのマラネロの「本音」

Jony Ive(ジョニー・アイブ)氏率いるLoveFromとのコラボで話題となった1,050馬力のEV「ルーチェ」は、富裕層ファミリー向けの新しいビジネスの柱です。

しかしフェラーリをここまで偉大にしたのは、モータースポーツ直系の「内燃機関のパッション」に他ならず、水素を「直接燃焼」させることにより、ピストンの往復運動、マルチシリンダーの咆哮、そしてマニュアル・トランスミッションやデュアルクラッチによる変速の快感を100年後の未来にも残そうとしているのだと考えられるのが今回の特許です(EVに対して拒否反応を示す層は少なくないが、水素エンジンに対してそういった層がどういった反応を示すのかは気になる)。

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結論(まとめ)

EV「ルーチェ」のデビューによって、ついに電動化へと完全に舵を切ったかのように見えたフェラーリ。

しかし、彼らのファクトリーの奥深くではエンジンの咆哮を絶やさないための「水素コンバッション(水素内燃機関)」というもう一つの、そして新たなる情熱を宿した跳ね馬がデビューを待っているということに。

今回判明した「箱ワイン型」の可変式水素タンクは、これまでの重く不格好な円筒形タンクの常識を覆し、超高圧の水素をスーパーカーのボディへ安全に、かつスマートに収めるためのブレイクスルーとなる技術です。

リヤに輝くエンジンが見えなくなる、荷物が積めなくなるといったトレードオフはあるかもしれませんが、しかし、カーボンニュートラルを達成しつつ、あの官能的な「跳ね馬の快音」を響かせてサーキットを駆け抜ける未来が手に入るのならば、世界中のフェラーリスタ(ファン)は喜んでその変化を受け入れることとなるのかも。

環境規制にただ従うのではなく、自らの力で内燃機関の未来を切り拓くこの姿勢こそがまさに「フェラーリ」といったところでもありますね。

フェラーリ296GTBに採用されるV6ツインターボ+ハイブリッドシステム
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参照:CARBUZZ

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