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「クルマはタイヤの性能以上に速く走れない」。ブガッティとミシュラン共同による「トゥールビヨン専用タイヤ」開発の裏側とは【動画】

ブガッティ・トゥールビヨンとミシュランとの共同テスト風景(走行、正面)

Image:Bugatti

| ブガッティのレベルになると「その性能を支えることができるタイヤがそもそも市場に存在しない |

ミシュランとの「共同開発」舞台裏が明かされる

どれほど強大なエンジンや最先端の電子制御シャシーを搭載したハイパーカーであっても、そのすべてのパワーを路面に伝え、車体をコントロールしているのは「(忘れがちではありますが)わずか4箇所の、ゴムの小さな接地面」という事実。

ブガッティが新時代を切り開くために発表したのが1,800馬力を誇る新世代ハイブリッド・ハイパーカー「トゥールビヨン(Tourbillon)」で、この化け物じみた出力を「安全に、かつ狂気的なパフォーマンスとして路面に解き放つための」開発プログラムに密着した公式ドキュメンタリー「A New Era(新しい時代)」の最新エピソード「タイヤ編」が今回YouTubeにて公開されています。

スウェーデンの北極圏に近い氷上テスト、そしてイタリアの超高速周回路「ナルド」での過酷な検証を経てブガッティの開発チームが向かったのはフランスにあるミシュランの広大なテスト施設「ラドゥ(Ladoux)」。

ブガッティの歴代ハイパーカーの足元を支え続けてきたミシュランとの共同開発により、トゥールビヨン専用の「Pilot Cup Sport 2」がいかにして磨き上げられたのか、その驚愕のプロセスを見てみましょう。

ブガッティ・トゥールビヨンとミシュランとの共同テスト風景(走行)

Image:Bugatti

この記事の要約

  • 1,800馬力を路面に伝える生命線: 新型ハイパーカー「トゥールビヨン(Tourbillon)」のV16自然吸気+3モーターが放つ驚異的な出力を路面に伝えるため、ミシュランと共同で完全専用となるタイヤを開発
  • ミシュランの秘密基地「ラドゥ」での最終検証: スウェーデンの極寒テストやナルドの高速周回を経て、フランスにあるミシュランのラドゥ・テストコースへ。3年以上の仮想シミュレーションを経て絞り込まれた「3つの最終候補」から最適な仕様を特定
  • デジタル時代にあえて挑む「人間の感性評価」: 最新のコンピューター技術を駆使しつつ、最後はチーフ開発ドライバーのミロスラフ・ズルンチェヴィッチ氏による「人間としてのエモーショナルな主観フィードバック」を重視してキャラクターを調律
  • 進化する足回りの開発フェーズへ: 最適なタイヤ仕様が決定したことで、今後はこのタイヤパッケージを基準とし、ステアリング、ダンパー(サスペンション)、各種電子制御システムの緻密なキャリブレーション(最適化)へと移行する

「すべての挙動は、4つの小さな接地面で決まる」

ブガッティ・リマックのチーフ開発ドライバーを務めるミロスラフ・ズルンチェヴィッチ氏は、車両開発における自身の役割を「料理の味見係」に例えながら、タイヤが持つ絶対的な重要性を次のように強調します。

「タイヤは最も重要なパーツです。クルマと地面を繋いでいるのは、わずか4つの小さな接地面だけ。そこで何が起きるかによって、クルマの他のすべての挙動が決まってしまうのです」

先代のシロンと比較してパワー、加速力、そして最高速度にいたるまで、すべての主要な性能指標が引き上げられたトゥールビヨンには、既存のウルトラ・ハイ・パフォーマンス(UHP)タイヤの流用や小変更では到底対応できず、そのためブガッティとミシュランは車両の構想段階から完全に並行して、専用タイヤの開発を進めてきたというわけですね。

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3年間のデジタルシミュレーションから、3つの最終候補へ

今回のラドゥ・テスト施設でのミッションは、これまでにバーチャル空間で絞り込んできた複数のフロント / リアのタイヤコンセプトの中から、実車にベストマッチする「究極の1セット」を特定すること。

実車テストが行われる遥か前から、両社は3年以上にわたりバーチャル環境でのコンピューターシミュレーションを重ねてきたといい、チームがラドゥに到着した段階で候補はすでに選び抜かれた「3つの特製タイヤセット」にまで絞られていたのだそう。

施設内の専用コースでは、超高速域でのコーナリング特性や、限界領域でのハンドリングなど、あらゆるドライビングシナリオにおいて客観的なデータ(グリップ力や横Gの計測値)収集が行われることになりますが、ブガッティのクルマづくりにおいて、データと同じくらい、あるいはそれ以上に重視されるのが「ドライバーの主観的なフィーリング」。

数値として現れるグリップの違いが、ドライバーの五感にどう伝わり、トゥールビヨンという車の「人格(キャラクター)」をどう形作るか。デジタルとアナログを高次元で融合させることこそが、このテストの本質であったようですね。

ブガッティ・トゥールビヨンとミシュランとの共同テスト風景(ピット)

Image:Bugatti

ブガッティ・トゥールビヨン 専用タイヤ&車両スペック

ブガッティ・トゥールビヨンのパワーを受け止めるため、今回のテストを経て決定された専用ミシュランタイヤのスペック、および車両の驚異的なポテンシャルは以下の通り。

  • 専用開発タイヤ: ミシュラン製「Pilot Cup Sport 2」専用コンパウンド仕様
  • フロントタイヤサイズ: 285/35 R20
  • リアタイヤサイズ: 345/30 R21
  • パワートレイン: 8.3L V型16気筒自然吸気エンジン(コスワース開発) + フロント2基/リア1基の電気モーター
  • システム総合最大出力: 1,800 PS (エンジン:1,000 PS / モーター:800 PS)
  • 駆動方式: 4輪駆動(AWD)
  • パフォーマンス数値:
    • 0-100 km/h加速:2.0秒以下
    • 0-200 km/h加速:5.0秒以下
    • 0-300 km/h加速:10.0秒以下
    • 最高速度:445 km/h(スピードキー使用時)

シミュレーション全盛期に「人間の感性」を信じる理由

現在のプレミアムカー開発において、AIや高度なシミュレーターによるバーチャル開発は不可欠であり、実際に開発期間の短縮やコスト削減に大きく貢献しています。

もちろん今回のトゥールビヨンについても、3年以上のシミュレーション期間を経ていなければ1,800馬力という未知の領域のタイヤをこれほど短期間で形にすることは不可能であったのは間違いのないところ。※tsひかに「もっとも重要」なのは、それに載った人がどう感じるかである

しかし、車両運動特性(ビークルダイナミクス)の責任者であるトミスラフ・シムニッチ氏は、どれほどデジタル技術が進歩しても「最後は人間の感覚がすべてを決定する」と語ります。

「結局のところ、私たちは『人間のため』にクルマを開発しているのです。コンピューター・テクノロジーだけで何もかもを作り出すことはできません。このストーリー全体には、ドライバーと、そのエモーショナルで主観的な要素が絶対に不可欠なのです」

ブガッティ・トゥールビヨンとミシュランとの共同テスト風景(タイヤ交換)

Image:Bugatti

この哲学こそが、パガーニやケーニグセグといった他のハイパーカーブランド、あるいはポルシェなどのスポーツカーの頂点に立つブランドたちとブガッティとを分かつ境界線でもあり、単にデータ上で「速く曲がれるタイヤ」を選ぶのではなく、ドライバーが時速400kmオーバーの世界でも、あるいは穏やかなクルージング時でも、ステアリングを通じて「今、クルマと路面がどう対話しているか」を濃密に感じ取れるかどうかが、ブランドの品位として求められている、というわけですね。

結論

ブガッティの新しい夜明けを告げる「トゥールビヨン」のタイヤ開発プログラムは、目を見張るようなハイテク技術、そして職人たちのアナログな情熱が見事に融合した、クルマづくりの真髄とも言えるもの。

開発初期における最大の難敵は「タイミング」だったと言い、タイヤの開発は車両そのものの開発と常に「並行」して進めなければならず、車両の他の電子制御システムやシャシーがまだ100%の完成形(最適解)に達していない段階で「タイヤの仕様を確定させなければ量産が間に合わない」というジレンマの中、チームはシミュレーションの精度とこれまでの経験値を信じ、見事に最適解となるようミシュランの仕様を導き出したのだそう。※こういった、サプライヤーを巻き込んだ共同開発の必要性もまた、スーパーカーやハイパーカーの価格を押し上げる大きな要因だと言えそうだ

ラドゥでの主要なテストを終え、専用タイヤのパッケージが正式に決定したことで、トゥールビヨンの開発は次なる最終フェーズへと進むこととなり、それは決定したタイヤのグリップ特性をベースに「ステアリングの重さ、ダンパーの減衰力、そしてトラクションコントロールの挙動」といったすべてのシステムを1つに調和させていく、いわばオーケストラの指揮のような仕上げの作業です。

世界でわずか250台しか製造されないこの至高の芸術品が世界中の公道へ解き放たれるのはそう先のことではなく、そしてその時、オーナーたちが味わうであろう「1,800馬力を意のままに操る至福の瞬間」は、このフランスのテストコースで削り取られた、わずか4箇所のゴムの接地面から始まっているというわけですね。

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参照:Bugatti

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