>マツダ(MAZDA)

トヨタは「豊田」、ホンダは「本田」。しかしなぜマツダは「最高神の名=アフラ・マズダー」をその社名に採用したのか?最高神と創業者が織りなす神秘的な2つの起源

マツダ CX-5のステアリングホイール
Life in the FAST LANE.

| 自動車メーカーの多くは「ファミリーネーム」に由来する |

マツダの社名は「松田」のみに由来するわけではない

多くの自動車メーカーは、創業者のファミリーネーム(トヨタ、本田、フェラーリなど)、あるいは地名・組織の頭文字を組み合わせた略称(BMW、フィアット、アルファロメオなど)をそのまま社名に採用しています。

しかし、日本の自動車メーカー「マツダ(MAZDA)」の社名には、他社とは一線を画す「歴史的、かつスピリチュアル(神秘的)な深い意味」が隠されていることは「知られているようで知られていない」事実です。

マツダといえば、業界のトレンドに流されず、ロータリーエンジンやプレミアムな直列6気筒エンジン、軽量スポーツカーを突き詰める「独自のこだわり」を持ったメーカーとして世界中で愛されていて、しかしその孤高を貫く姿勢には100年以上前の一風変わった創業の歴史、そして神話にまで遡る社名の起源にまで根ざしているという事実が存在します。

ここで”知れば誰かに話したくなる”、マツダという名に隠された「神話と歴史のクロスロード」を見てみましょう。

新型マツダCX-5(グレー)のエクステリア〜
Life in the FAST LANE.
ポルシェ
究極の自動車エンブレム解説:全111ものエンブレムを調査→「紋章ベース」「イニシャルベース」「動物ベース」など5つに分類しその起源を掘り下げる【動画】

| 一見して何気ないように見えるエンブレムに隠された”秘密”も | 公共性を重視した例、あるいは極めて個人的な例も ぼくらは常に、フェラーリの跳ね馬、トヨタのソンブレロ(帽子)、メルセデス・ベンツのス ...

続きを見る

この記事の要約

  • 孤高の技術屋集団: 他社がダウンサイジング(排気量を小さくすること)を進める中、新型の直列6気筒エンジンやロータリーエンジン(発電用ハイブリッド)の開発に挑み続けるマツダは、自動車業界で異彩を放つ存在である
  • 社名の意外な始まり: 1920年に「東洋コルク工業」として創業。翌年に就任した松田重次郎(まつだ じゅうじろう)氏が機械製造へ舵を切り、のちに自動車メーカーへと発展させた
  • 「最高神」と「創業者」のダブル・ミーニング: 「MAZDA」の由来は、創業者の姓である「松田(マツダ)」の音に重ねつつ、ゾロアスター教の最高神「アフラ・マズダー(Ahura Mazda)」から取られている
  • 平和を祈る社名と戦火の歴史: 叡智や調和、世界平和の願いが込められた社名だが、第二次世界大戦中は軍の要請で小銃などの武器を製造していた。1945年8月の広島への原爆投下により、多くの社員の命を失った悲痛な過去も持つ
  • ロゴに込められた神話のシンボル: 1990年代の「ユーノス」ブランドのロゴをはじめ、マツダのエンブレムは時代ごとに「光」「後光」「翼」といった最高神のシンボルを反映しながら進化してきた

もともとマツダは「自動車メーカー」であったわけではない

マツダは最初から自動車を作っていたわけではなく、そのルーツは1920年、広島の地で設立された「東洋コルク工業株式会社」。※下の画像は当時のエンブレム(企業ロゴ)

1920

Image:MAZDA

文字通り、最初は断熱材や瓶の栓に使われるコルクの代替品を製造する会社であったのですが、転機が訪れたのはその翌年。

1921年に松田重次郎(まつだ じゅうじろう)氏が社長に就任したことで、会社はコルク製造から機械工業へとドラスティックにシフトすることになり、この松田氏の強力なリーダーシップこそが、のちに「マツダ」という名前を生み出す最大の原動力となるわけですね。

なお、この「コルク」はCX-30のインテリアにも用いられていて、マツダがそのルーツを大切にしていることもわかります。

L1270114

Image:Life in the FAST LANE.

日本語の「まつだ(Matsuda)」と英語表記の「MAZDA」は、発音においてほぼ同じ(海外ではマズダに近い発音)ではありますが、綴りはあえて異なっていて、なぜ「MATSUDA」ではなく「MAZDA」になったのか。そこには、自動車という新しい文化に対する、当時の経営陣の壮大なビジョンが存在します。

まず、東洋工業(1927年に東洋コルク工業から社名変更)が初めて自動車を世に送り出したのは1931年のことで、それが、3輪トラックの「マツダ号(Mazda-Go)」。

下は当時の企業ロゴですが、三菱マークがあるのは「販売委託先が三菱商事だったから」。

1931

Image:Mazda

その後、1934年3月に「MAZDA」として正式に商標登録され、しかし、この名前が決まる背景には、創業者の姓だけではない「もう一つの、より神聖な理由」が隠されている、というのが今回のストーリーです。

マツダの「神聖なる起源」と歴代ロゴの進化

自動車メーカーは自社のロゴや名前に隠されたメッセージを込めるのが好きですが、マツダのケースは特にロマンに満ちています。

1. ゾロアスター教の最高神「アフラ・マズダー」との繋がり

マツダというブランド名は、古代西アジアに起源を持つゾロアスター教の最高神「アフラ・マズダー(Ahura Mazda)」に由来していて、しかしこのアフラ・マズダーは「叡智(知恵)」「理性」「調和」「光」を司る神。

1930年代初頭、初の3輪トラック「マツダ号」を発売する際、社内では他にも「スメラ号(天皇・神を意味する)」や「テンシ号(天使)」といった、宗教的・精神的な響きを持つ候補が挙げられていたといい、その中で創業者の「松田」という姓に音が近く、かつ最も崇高な意味を持つ「マズダー」が選ばれたというのがその(名称決定の)経緯です。

公式な記録によると、当時のマツダ(東洋工業)はアフラ・マズダーを以下のように解釈していたとされ・・・。

「東西の文明の始まりのシンボルであり、同時に自動車文化・文明のシンボルとして捉えた。そこには世界平和への貢献と、自動車産業の発展を牽引するという熱い願いが込められている」

ちなみに以下は1936年時点の企業ロゴで、「M」がフィーチャーされており、かつ「翼」モチーフとなっていることがわかります。

1936

Image:Mazda

2. 平和の象徴と、戦争という現実のギャップ

世界平和や調和を社名に掲げたマツダではありましたが、激動の時代の中で歴史の荒波に呑まれることになってしまい、商標登録からわずか数年後、第二次世界大戦の勃発に伴ってマツダは日本軍の要請で「九九式短小銃」などの兵器や軍需品の生産を余儀なくされることに。

これは当時のフォードが爆撃機工場を作ったのと同様、戦時下の企業としては避けられない選択です。

この武器製造の歴史は、1945年8月6日の広島への原爆投下によって凄惨な形で終わりを迎え、爆心地から数キロ離れていたマツダの工場は山に遮られたことで奇跡的に壊滅を免れるものの、当時の全社員の約2割にあたる約200名もの尊い命が犠牲となったのだそう。

そして終戦直後、生き残ったマツダの工場は臨時の救護所や県庁の代替施設として開放され、広島の復興を文字通り支える心の拠り所となった、とされています。※下の画像は1959年版の企業ロゴ

1959

Image:Mazda

3. 神話のシンボルを反映してきたロゴの変遷

マツダの歴史は、そのロゴ(エンブレム)の変遷にも「神話との繋がり」を見て取ることができ・・・。

  • 1936年(三輪トラック時代): 広島の川の流れをモチーフに、マツダ(Mazda)の頭文字「M」を3つ重ね、両側に俊敏さとスピードを表す「翼」を広げたデザイン。
  • 1991年(製品マーク): マツダのラグジュアリーブランド「ユーノス(Eunos)」の展開などに合わせて導入されたマーク。円の中にひし形をあしらったこのデザインについて、マツダは公式に「アフラ・マズダーの起源である『翼』『太陽』『後光(光輪)』を想起させるもの」と説明。顧客の心を豊かにし、人間に優しい車を作りたいという願いが込められている
1991

Image:Mazda

  • 1997年〜現代: 現在お馴染みの、円の中で「M」の文字が未来へ羽ばたくウイング(翼)のように広がるブランドシンボルへ移行。2025年からはデジタル環境での視認性を高めた、よりソリッドで洗練されたフラットデザインの最新ロゴがグローバルで順位導入されている

世界の自動車メーカー「神話・星」のネーミング比較

マツダのように、神話や天体にインスピレーションを求めたメーカーが他にも存在し、それぞれの位置付けを比較してみると以下の通り。

ブランド名由来の源泉モチーフの意味・象徴企業のアプローチ
マツダ(MAZDA)ゾロアスター教の最高神(Ahura Mazda) + 創業者(松田)叡智、調和、光、世界平和創業者の名前(東洋のルーツ)と古代の神(西洋・東洋の文明の祖)の響きを融合させた、二重のストーリーを持つ。
サターン(Saturn)ローマ神話の農耕神(サトゥルヌス) + 土星天体、親しみやすさ、新時代GM(ゼネラルモーターズ)が1980年代に「輸入車に対抗する新ブランド」として設立。宇宙的な広がりと革新性を表現。
アポロ(Apollo Automobil)ギリシャ神話の光と芸術の神(アポロン)光、知識、音楽、スピードドイツの超希少なハイパーカーメーカー。圧倒的なパフォーマンスと美への追求を神の名に重ねている。
スバル(SUBARU)おうし座の散開星団「プレアデス星団(昴)」まとまって一つになる星々旧富士重工業傘下の5つの会社が統合して1つの大きな会社(現在のSUBARU)になった歴史の絆を、星の集まりに例えた。
「トヨタは織機、マツダはコルク、プジョーはペッパーミル、スズキは大工」。意外すぎる世界の自動車メーカーの起源とイノベーションの軌跡を見てみよう
「トヨタは織機、マツダはコルク、プジョーはペッパーミル、スズキは大工」。意外すぎる世界の自動車メーカーの起源とイノベーションの軌跡を見てみよう

| 世界の多くの自動車メーカーは「もともと自動車メーカーではない」別業界にルーツを持っている | 序章:異業種から自動車メーカーへの転身という物語 さて、世の中には様々な自動車メーカーが存在しますが、 ...

続きを見る

スバルのステアリングホイール
Life in the FAST LANE.

結論

マツダがなぜ他の自動車メーカーとは一線を画す「神の加護が加わったような(God-Tier)」リスペクトを集めるのか。その理由は、単に彼らが作るクルマ(ロードスターやCXシリーズなど)が魅力的だからというだけではありません。

コルク製造という泥臭い始まりから機械工具、そして自動車へ。戦火と原爆の悲劇を乗り越えて立ち上がった広島の企業精神が、「叡智と光と調和」を司る古代の最高神アフラ・マズダーの精神、そして奇跡的なシンクロニシティ(因果な一致)を起こしているからだとも考えられます。

効率性や電動化ばかりが叫ばれ、どのクルマも似通った個性に収まりがちな現代において、マツダが頑なに独自の技術(直6やロータリー)にこだわり、そして軽量なスポーツカー(ロードスター)と走る歓び(人馬一体)を追求し続ける姿は、まさに社名に刻まれた「飽くなき探究心と知恵」そのものの体現と言えそうです。

次に街中で、あるいは自身の愛車としてマツダのウイングマーク(カモメマーク)を見るとき、それは単なる工業製品のラベルではなく、東西の文明を繋ぐ「神話の光」を背負った、誇り高きエンジニアたちの歴史の象徴であることを思い出してみると良いかもしれませんね。

マツダ・ロードスターのリア(グレー)
Life in the FAST LANE.

合わせて読みたい、関連投稿

「今日からマツダは変わります」。マツダが新ロゴ(エンブレム)を発表、公式サイトもリニューアル。1920年以降の「エンブレムの変遷」も見てみよう
「今日からマツダは変わります」。マツダが新ロゴ(エンブレム)を発表、公式サイトもリニューアル。1920年以降の「エンブレムの変遷」も見てみよう

Image:MAZDA | マツダの社名の由来はゾロアスター教の最高神「アフラ・マズダー」から | 1991年にはゾロアスター教由来のエンブレムを採用したことも さて、マツダは次世代モデルを示唆する「 ...

続きを見る

スバル
スバルのロゴに隠された意味とは?「統べる」と「スバル」とがかけられた社名、そして「六連星」が示す歴史とSTIバッジの秘密、WRブルーとは

| この六連星」を外してほしいと訴えるオーナーも少なくないとは聞いているが | スバルは実に「語るべき歴史」が多い自動車メーカーである さて、スバル車のフロントに燦然と輝くのが6連星(むつらぼし)。 ...

続きを見る

モータースポーツを彩るナショナルカラーの物語:F1黎明期から現代まで、起源と変遷、そして深遠な理由を徹底解説
モータースポーツを彩るナショナルカラーの物語:F1黎明期から現代まで、起源と変遷、そして深遠な理由を徹底解説

| いまや失われつつある「ナショナルカラー」ではあるが | そのナショナルカラーにはこういった起源がある かつてのレーシングカーの車体色には「単なるデザイン以上の意味」があり、たとえばフェラーリの象徴 ...

続きを見る

参照:Mazda, Jalopnik

->マツダ(MAZDA)
-, , , , , ,