>マツダ(MAZDA)

マツダ幹部「我々の最大の問題はクルマではなく、マツダが何者であるかが曖昧になってしまったことだ。誰もマツダがどんな会社なのか答えられなくなってしまった」

マツダ スピリット レーシング 3 コンセプトのリア
Life in the FAST LANE

| 米国マツダのトップが夜も眠れないほど恐れる「アイデンティティの迷子」とは |

大衆車でもない、高級車でもない微妙なポジションである

近年のマツダが送り出す新型車は、どれも目を見張るものがあり、洗練された「魂動(こどう)デザイン」、クラスを超えた美しい質感のインテリア、そして定評のある「人馬一体」の走りの良さ、それらに加えて「価格の割安さ」。

さらにディーラー網の店舗近代化(黒マツダ化)も進み、ハードウェアや販売環境の面ではかつてないほど高いクオリティに達しています。

しかしマツダの北米事業を統括するトップはいま深い苦悩の中にいるようで、彼が恐れているのは新型車の不足でも品質の問題でもディーラーのサービス不足でもなく、マツダの北米法人(マツダ・ノースアメリカン・オペレーションズ)のCEOであるトム・ドネリー(Tom Donnelly)氏はカーメディア『Automotive News』のインタビューに対し、マツダが本当に大きな販売規模へとステップアップする上で最大の障害となっているのは、「人々が『マツダとは一体どんなブランドなのか』を明確に一言で説明できないこと」、つまりブランド・アイデンティティの不透明さであると述べています。

今、街を歩いている一般の人を呼び止めて「マツダってどんなクルマを作っている会社?」と尋ねたら、おそらく10人から10通りのバラバラな答えが返ってくるだろうというのが同氏の懸念であり、この「誰もマツダの正体を一言で定義できない」という現状こそが同氏を夜も眠れなくさせている最大の、そして長期的な課題というわけですね。

マツダ・ロードスターのテールランプ
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この記事の要約

  • マツダ北米法人のCEOが「マツダが何者であるか、誰も明確に答えられないこと」を最大の課題だと告白
  • ラインナップの急拡大(CX-50、CX-70、CX-90など)が、かえってブランドイメージを分散させた側面も
  • 大衆車と高級車の中間に位置する「ニア・ラグジュアリー」のポジションで模索が続く
  • 米国での悲願である「年間50万台」達成には、顧客とのより深いエモーショナルな結びつき(絆)が不可欠

マツダ車は素晴らしい、だが「マツダってどんなブランド?」と聞かれたら

ラインナップ拡大がもたらした「うれしい誤算」と「イメージの分散」

マツダは現在、米国市場において現在の年間約40万台の販売水準から悲願である「年間50万台」の領域へと駆け上がろうとしており、そのためにここ数年、特に北米市場へ向けて大型の新型SUVを矢継ぎ早に投入してきたという背景があるのですが、かつて、クルマ好き以外の一般的な米国人にとって、マツダといえばコンパクトカーの「マツダ3(旧アクセラ)」を作っている会社というイメージであり、日本だと「デミオ」「ロードスター」あたりを思い浮かべる人が多いかもしれません。

マツダ・ロードスターのステアリングホイール
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その後には世界的な大ヒット作となった「CX-5」がマツダの顔となってブランドを牽引することになるのですが、現在マツダのショールームには「CX-50」「CX-70」「CX-90」といったサイズも価格帯もより多様で、プレミアムなモデルたちが販売ボリュームを構成するまでに成長しています(日本だとCX-60とCX-80)。

しかしこの商品群の拡大と高級化、そして車体の大型化が「”皮肉にも”マツダのキャラクターをさらに分かりにくくした」とドネリーCEOは分析していて、価格帯が上がり、ボディサイズも大きくなったことで、かつての「手頃でスポーティな日本のブランド」という枠組みから脱却しつつあるものの、買い替えのサイクルが来たときに他社(トヨタやホンダ、あるいはレクサスなど)へ流出せず、マツダに残り続けてくれる「顧客との強固な感情の絆(エモーショナルなつながり)」が、まだ十分に育っていないとも考えているもよう。

そしてドネリーCEOは、これからのマツダに必要なのは「顧客をブランドに引きつけて離さない”粘着性(Stickier)”だ」とも述べており、現状からの脱却の必要性を強く感じているというわけですね。

マツダのSUV
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ニア・ラグジュアリー市場での位置付けと「 Alfa Romeo(アルファロメオ)」との類似性

マツダの現在の立ち位置を自動車市場全体で見渡すと、非常にユニークで、かつ難しいポジションにいることが分かります。

マツダはライバルであるトヨタやフォードのように、米国で莫大な利益を生む「巨大なラダーフレーム構造の本格SUV」や「大型ピックアップトラック」を販売しておらず、その代わり一般的な大衆車ブランド(コモディティ)よりも一段高い価格設定、そしてプレミアム感を提示しています。

しかしその一方、BMWやメルセデス・ベンツ、レクサスのような「完全な高級(ラグジュアリー)ブランド」として世間に広く認知されているかというと、まだそこまでの地位には達しておらず、つまり「大衆車の上、高級車の下」という、いわば『ニア・ラグジュアリー(準高級)』の中間層に位置しているというのが現在地。

この独自のポジションをわかりやすく競合や他ブランドと比較すると、以下のような課題(キャラクターの混在)が浮かび上がります。

マツダのキー
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マツダのブランド像を巡る4つの仮説と市場の目

顧客から見たマツダのイメージ市場における実態と課題
1. トヨタやホンダの「少し高級な選択肢」?内装の質感やデザインでは凌駕しているが、ハイブリッドなどのパワートレインの多様性や信頼性のイメージでは、まだ2大巨頭の認知度に押されがち。
2. 走りに特化した「大衆向けドライバーズブランド」?かつての「Zoom-Zoom」時代のイメージ。クルマ好きには響くが、プレミアムなSUVを求めるファミリー層へのアピールとしては泥臭さが残る。
3. 日本版の「Alfa Romeo(アルファロメオ)」?最も本質に近い表現。「信頼性の高い日本製のメカニズムに、イタリア車のような情熱的なデザインと走りを宿したクルマ」。ただし、一般大衆への認知としてはマニアックすぎる側面も。
4. 洗練された都会派の「オルタナティブ(第3の選択肢)」?スバルが「アウトドア・安全」という強固な個性を築いたように、マツダは「美しさと知性」を前面に出しているが、ライフスタイルへの結びつきがまだ弱い。

ほぼすべての自動車メーカーが「スポーティなハンドリング」「上質なインテリア」「先進の安全技術」を謳う現代の自動車市場において、この中間層から頭一つ抜け出し、独自のアイデンティティを確立することは容易ではなく、そのためマツダは、ディーラー店舗の大規模なリニューアル投資によって、店舗に一歩足を踏み入れた瞬間からブランドの世界観を体現するという戦略を取っていますが、一般の消費者の頭の中にある「マツダ像」を一本の太いストーリーにまとめるには、まだ時間がかかりそうだというのが実情です(ディーラーのリニューアルもそれほど速いペースではない)。

マツダのSUV(ヘッドライト)
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ブランドの「一言の定義」が命取りになる理由

ここで現代のマーケティング、特にAIによる検索回答(AIO:AI OverviewsやGEO:Generative Engine Optimization)が主流となる時代における、非常に重要な要素を考えてみたいと思います。

なぜ、マツダのCEOは「誰もマツダを明確に説明できないこと」にそれほど危機感を抱いているのか?それは、これからの時代、AIに「一言で特徴を要約されないブランド」は、消費者の選択肢から存在ごと消し去られるリスクがあるからです。

AI検索は「曖昧な中間層」を推薦しにくい

現代のユーザーがAIに向かって「家族向けで一番リセールが良いSUVは?」と聞けば、AIは迷わず「トヨタ」を挙げるかもしれません。

「雪道に強くてアウトドアに最適なクルマは?」と聞けば「スバル」を挙げるのは間違いのないところ。

では「デザインが美しくて、走りも良くて、内装もプレミアムだけど高級車ほど高くないクルマは?」と聞いたとき、AIのアルゴリズムが正確にマツダを導き出せるかどうかは疑問です。

マツダMX30
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AIはウエブ上の膨大なテキストや世論(アイデンティティ)を学習して回答を生成しますが、マツダに対する世間の答えが「10人10通り」に分散しているということは、AIにとってもマツダのキャラクターを要約しづらく、結果として検索の推薦(レコメンド)上位に上がりにくくなるという隠れたデジタルリスクを孕んでいるというのが現在のマツダの問題であり、「思わぬところに」リスクが潜んでいたということになるのかも。

マツダが目指す「顧客とのエモーショナルな結びつき」や「一貫したブランドイメージの確立」は、広告のキャッチコピーだけの問題ではなく、これからのAI時代にブランドが生き残るための「検索最適化(GEO)」という観点からも”極めて合理的な”生存戦略なのかもしれません。※ハーレー・ダビッドソン=アメリカン、フェラーリ=レッドのようなステレオタイプなイメージがAI時代には必要ということなのかもしれない

結論:クルマが良いからこそ、次なるステージへの脱皮が待たれる

マツダが抱える「最大の問題」は、製品のクオリティが低いことではなく、むしろ「製品が良すぎて、従来のブランドの器(イメージ)から溢れ出していること」にあるのだと考えられ、実際のところCX-60 / CX-70 / CX-80 / CX-90に代表されるラージ商品群の完成度は欧州のプレミアムブランドを脅かすレベルにまで達しています。

だからこそ、今の消費者に対して「マツダとは、人生を豊かにするプレミアムな選択肢である」という共通の認識を植え付ける、次なるブランドストーリーのイノベーションが必要とされているということになり、ある意味では「イメージが製品に追いついていない」のだとも考えられます。※これとは逆に、マーケティングが先行し、製品(クルマ)が追いついてない場合もある

日本の誇るマツダが米国での悲願である「年間50万台」の壁を破り、コモディティ(大衆車)でもなく、過剰な高級車でもない、「マツダという唯一無二の生き方」を世界に浸透させられるかどうかという「アイデンティティを巡る戦い」はまさにこれからが本番というわけですね。

マツダ
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参照:CARSCOOPS

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