
| さすがはメイト・リマック、「他の人が考えつくことは」ほとんど試していた |
その上での最終完成形がトゥールビヨンである
テスラが次世代「ロードスター」の発表時に提示し、世界の自動車業界を騒然とさせた「コールドガススラスター(圧縮空気噴射)」や「ファンによるグラウンドエフェクト」といったSFのようなハイテク技術。
タイヤのグリップ限界を物理的に突破し、0-60mph加速1秒未満を狙うこの破天荒なアイデアではありますが、実はテスラ以外のスーパースポーツブランドも真剣に開発を模索していたことが明らかに。
ハイパーカーメーカー「リマック・アウトモビリ」の創業者であり、現在はブガッティ・リマックのCEOを務めるメイト・リマック(Mate Rimac)氏が、過去に同様の技術を社内で極秘検討していたことをSNS上へと投稿した動画にて明かしており、ここではトップハイパーカーメーカーが「一度は夢見たロケットスラスター搭載EV」の真相、そしてなぜその開発が中止され、官能的なV16エンジンへと舵が切られたのか、その裏舞台について見てみましょう。
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この記事の要約
- テスラが新型「ロードスター」で予告している圧縮空気スラスター(ロケット推進)やファンによるダウンフォース技術について、ブガッティCEO兼リマック・アウトモビリ創業者のメイト・リマック氏も数年前から同様の技術を検討していたことが明らかに
- リマック社では2019〜2020年頃、EVハイパーカー「ネヴェーラ」の次世代プロジェクトにおいて、タイヤの摩擦限界を超えて0-60mph加速1秒未満を達成するためにスラスターの3D設計まで進めていた
- 最終的にこれらのアイデアが市販車へ採用されなかった理由は、同社によるブガッティ買収に伴い、自然吸気V16エンジンを搭載する新型ハイパーカー「トゥールビヨン」の開発が最優先プロジェクトとなったため
リマックが検討していた「スラスター&ファン技術」の概要
メイト・リマック氏が自らのPC内の社内資料をもとに明かした内容によると、同社はテスラやマクマトリー(McMurtry)といった競合他社が脚光を浴びる以前からファンカー技術や圧縮空気スラスターの研究を進めていたといい、2019年の社内メールでは、マクマーティがヒルクライムで記録を更新する2年も前から車体底面の空気を吸い出すファン技術に言及していたことについても言及しています。
さらに2020年の文書では、自社のEVハイパーカー「ネヴェーラ(Nevera)」の次世代モデルに向けて、車体内部に高圧エアタンクをどのようにレイアウトするかを示したCAD 3Dレゾリューション(レンダリング画像)まで作成されていたことが明かされることに。
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つまるところ、これらによって「タイヤの摩擦力(トラクション)だけに依存しない推進力を得ることにより」、テスラ同様に「0-60mph加速 1秒未満」の世界を目指していたことが裏付けられているというわけですね。

開発の背景
リマックが検討していた次世代テクノロジーの構想と、その後に選択されたブガッティ「トゥールビヨン」のスペック比較は以下の通りとなっていて・・・。
- タイヤの限界を打ち破る推進力:現代のハイパーカーが直面する最大の壁は「タイヤのグリップ力」。どれほどエレクトリックモーターの出力を上げてもタイヤが空転してしまえば加速力へ変換できず、しかし圧縮空気スラスターはタイヤ以外の物理的な力を推進力に変換できるため、異次元の立ち上がり加速を可能にする
- ブガッティ買収と「V16」へのリソース集中:これほどの技術検証が進んでいたにもかかわらずプロジェクトが保留された最大の理由は、メイト・リマック氏によるブガッティ(Bugatti)の買収で、名門ブランドの次世代フラッグシップとして開発された「トゥールビヨン(Tourbillon)」プロジェクトが最優先となり、過密な開発リソースを分散させないためにスラスターやファンの開発は一時棚上げされる
- 内燃機関の極致「自然吸気V16ハイブリッド」:スラスターEVの代わりに誕生したブガッティ「トゥールビヨン」は、コスワースと共同開発した8.3L 自然吸気V16エンジンに3基の電動モーターを組み合わせ、システム総合出力1,800 PS(1,775 hp)を発揮。最高速度は445 km/h(スピードキー使用時)に達し、エモーショナルな吸排気音と超絶性能を高次元で融合させている
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| 項目 | リマック スラスターEV構想(2020年検討案) | ブガッティ トゥールビヨン(実演市販モデル) |
| パワートレイン | 純電動(BEV)+ 圧縮空気スラスター | 8.3L V16 自然吸気 + 3モーター ハイブリッド |
| システム最高出力 | 未公表(超高出力マルチモーター) | 1,800 PS(1,775 hp) |
| 0-60mph (0-100km/h) 加速 | 1.0秒未満(スラスター使用目標値) | 0-100 km/h:2.0 秒 / 0-200 km/h:5.0 秒未満 |
| 技術的特徴 | 圧縮空気ノズル、車体底面吸気ファン | コスワース製9,000rpm V16、時計仕掛けのメーター等 |
競合比較・市場での位置付け
「0-60mph加速1秒未満」という前人未到のスペックを巡り、テスラとリマック(ブガッティ)のアプローチには対照的な戦略の違いが見られます。
- テスラ(Tesla)の挑戦:テスラは新型ロードスターにおいて、助手席を犠牲にしてまで高圧タンクを積み込む「Rocket」仕様などを提示し、どこまでも数値性能とインパクトを追求
- リマック / ブガッティ(Bugatti)の判断:リマックはすでに「ネヴェーラ」でスラスターなしの状態で0-60mph 2秒未満を達成。数値上のコンペティションに固執するよりも、伝統のブガッティブランドにおいて「ドライバーの感性を揺さぶるV16エンジンのサウンドと機械美」を提供する道を選択し、結果として、コレクターやハイエンド層から圧倒的な称賛を獲得している

補足情報
メイト・リマック氏の発言からは、今回の決断に対する後悔のなさと、将来的な技術復活の可能性という新しい気付きが得られるかのように思われ・・・。
- 技術の「完全中止」ではなく「優先順位の変更」:リマック氏は動画内で「後悔は全くない」と語りつつも、このスラスターやファンのアイデアを「完全に廃棄した」とは明言せず。ブガッティ「トゥールビヨン」のデリバリーが本格化した後、リマックブランドの次世代EVハイパーカーでこれらのロケット技術が再び浮上する可能性が十分に残されている
- テスラのタイムラインに対するアドバンテージ:テスラは新型ロードスターの生産開始目標を2028年としていますが、テスラは過去にも発売延期を繰り返してきた経緯があり、もしリマックが将来的にスラスター技術の開発を再開すれば、テスラよりも先にこの「ロケット推進EV」を市販化してしまうシナリオさえ否定できない

結論
テスラの独壇場と思われていた「ロケット推進EV」という衝撃的な構想。
しかし、その背景にはEVハイパーカーの第一人者であるメイト・リマック氏らの熾烈な先行研究が存在していた、というのが今回のニュースです。
「最速の加速スペック」ではなく「官能的なV16エンジン」を選択したブガッティの判断は、現在のハイパーカー市場において見事な成功を収めており、そしていつの日かリマックが再び解き放つかもしれない「ロケットスラスター搭載の次世代EV」の登場には期待したいと思います。
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