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リマックがテスラを出し抜く? 「常に世界を改変する男」、メイト・リマックのロボタクシー「ヴェルヌ」が配備目前。「私のほうが先だったな」と勝利宣言

リマックがテスラを出し抜く? 「常に世界を改変する男」、メイト・リマックのロボタクシー「ヴェルヌ」が配備目前。「私のほうが先だったな」と勝利宣言

| ハイパーEVの天才が仕掛ける都市交通の革命 |

リマックが「ヴェルヌ」を発表した後、しばらくは音沙汰がなかったが

最高速度480kmを誇るモンスターEV「ネヴェーラ」を世に送り出した「革命児」、メイト・リマック氏が次に考えているのは「さらなるハイパーEV」ではなくロボタクシー。

同氏は少し前にロボタクシー「ヴェルヌ(ジュール・ヴェルヌからその名が取られている)」を発表しており、その後は目立った動きが報じられなかったものの、今回自身のSNS(インスタグラム)にてその進捗状況を公開することに。

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Image:Verne

ハイパーカーメーカー、リマックがロボタクシー「ヴェルヌ」を発表。その名は「月世界旅行」のジュール・ヴェルヌから、「この車が新しい世界に連れて行ってくれるでしょう」
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メイト・リマックがイーロン・マスクへと「勝利宣言」をつきつける

今回メイト・リマック氏が投稿した内容は「ライバルであるイーロン・マスク氏とテスラの”サイバーキャブ”に先駆け、現実のロボタクシー・フリートを完成させた」というもので、多くの企業がコンセプトや改良モデルでしか自動運転を語れない中、リマック氏は「自動運転車そとして専用設計」された自動運転EVの試作車60台を公開しています。

「先に実現したのは私だ」

ハンドルもペダルもない、まるでリビングルームのような究極の快適空間を提供するリマックのロボタクシーは、テスラの描く未来のモビリティ像を根底から覆す可能性を秘めており、ここでもう少し「ヴェルヌ」について掘り下げてみましょう。

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要約:リマック Verneがテスラより優位な点

  • 実働車両: テスラに先行し、60台の走行検証用プロトタイプを完成させる
  • 専用設計: 既存の車を改造したものではなく、自動運転専用にゼロから設計されたハンドル・ペダルレスのEV
  • 快適性: 室内は2人乗りで、ロールス・ロイスやリムジン以上の快適性と広さを提供
  • 技術提携: 自動運転技術には業界大手のモービルアイ(Mobileye)のレベル4システムを採用
  • ローンチ計画: 2026年春に本拠地ザグレブ(クロアチア)でサービスを開始予定
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Image:Verne

詳細:ヴェルヌの「ハイパーではない」電化の夢

メイト・リマック氏がマルコ・ペイコビッチ氏らと共に数年前に設立した「ヴェルヌ(車両と同じ名前)」は、リマックのハイパフォーマンスEV事業の対極にある*都市型モビリティ・サービス(MaaS)の実現を目指す新会社。

① 究極の「専用設計」と「車内体験」

ヴェルヌのロボタクシーは従来の自動車の設計思想から完全に脱却しています。

  • レベル4/5自動運転: 車両にステアリングホイール(ハンドル)もペダルもないデザインは、ヴェルヌが高度なレベル4(限定条件下での完全自動運転)、あるいは将来的なレベル5(完全自動運転)を目指していることを強く示唆
    • 技術基盤: 自動運転システムには、Intel傘下にあるモービルアイの「Mobileye Drive」プラットフォーム(LiDAR、レーダー、カメラ)を採用し高い安全性を確保
  • 客室デザイン:
    • 小型・2ドア: 外観はコミカルなほど小型ではあるものの、2人乗りに特化することでコンパクトなフットプリントながら広大な室内空間を確保している
    • エンタメ重視: 車内には巨大な43インチのウォール・トゥ・ウォール・スクリーンが搭載され、YouTubeなどの動画視聴サービスが楽しめる
    • パーソナライズ: 専用アプリを通じ、乗車前にシート設定、温度、照明、さらには香り(Scent)までをカスタマイズでき、「自分の車のような感覚」を提供
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Image:Verne

② リマック流の現実主義

リマック氏が自撮り棒を持ち、クロアチアの駐車場でプロトタイプを説明する姿は、テスラが得意とする「洗練された誇大広告」とは一線を画す「現実味が感じられるもの」。

彼は「他の企業が概念的な”シズル(音)”を売る中、自分は”ステーキ(現物)”を売っている」と表現し、ヴェルヌが現在保有する60台の検証プロトタイプは、既存車を改造したものではなく、目的のために製造された実車フリートであり、この点でテスラや他の競合(GMのCruise、Waymoなど)に一歩先んじた現実的な優位性を持つと主張しています。

③ 資金調達とグローバル展開

さらにこのヴェルヌは、メイト・リマック氏の会社だけでなく、起亜(Kia)、EU(欧州連合)、サウジ投資会社のジャミールなどから支援を受け、これまでに約2億ユーロ(約362億円)に近い資金を調達済み。

  • ローンチ計画:
    • 2026年春: 本拠地クロアチアのザグレブでのオンロード走行テストとサービスを皮切りに展開開始
    • その後: 欧州や中東の11都市との提携も進めつつも世界展開を目指す

時間を取り戻す新しいモビリティ哲学

メイト・リマック氏は、ヴェルヌのロボタクシーの最も有効な意義について、熱狂的なハイパーカーファンに理解を求めつつ、「実際のところ、ドライバーにとってほとんどの運転時間は都市での渋滞に費やされている」という最もな指摘を行っています。

このヴェルヌが目指すのは、単なるA地点からB地点への移動手段ではなく、自動運転技術によって、渋滞で失われていた時間を「仕事をする」「学ぶ」「リラックスする」といった個人的な活動に充てさせ、「移動時間を個人の成長や楽しみに変える」という、生活を豊かにする新しい移動の哲学を提供すること。

このユーザーエクスペリエンスに徹底的に焦点を当てたアプローチこそが、技術力だけでなくユーザー体験も重視するリマック氏の「テスラとの差別化戦略」の中核となっています。

結論:テスラの構想を現実に変えたリマックの勝利

メイト・リマック氏は、テスラが「将来の構想」として語るロボタクシー事業を、専用車両フリートという形で「一足先に」現実のものとしており、これは自動運転車の開発において、既存の自動車の制約から解き放たれた「専用プラットフォーム」がどれだけ大きなアドバンテージとなるかを示しています。

「ハイパーEVの王」が次に狙うのは、都市交通の王座というのはじつに意外ではあるものの、メイト・リマック氏の数々の発言、そして実際の行動を見ていると、同氏の行動原理は「速いクルマを作ること」にあるのではなく、「テクノロジーの限界に挑戦し、今までにない製品を提供することによって、人々の認識を変え、新しい世界への扉を開くこと」なのかしれません。※実際、同氏が開いたドアから多くの追随者がなだれ込んでいる

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そしてそのための鍵がコンセプト・ワンやネヴェーラ、さらにはトゥールビヨンであり、同氏が開く次なる扉のキーが「ヴェルヌ」ということになるのかも。

2026年春にサービスが開始されれば、ヴェルヌは世界で最も先進的で、かつ「究極の快適性」を備えたロボタクシーの一つとして世界のMaaS市場の地図を塗り替えるゲームチェンジャーとなる可能性を秘めており、続報に期待したいと思います。

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