
| ランボルギーニ「チェントロ・スティーレ」設立20周年:デザインがブランドの核となった「歴史の証人」 |
ランボルギーニは2005年、正式に「自社のデザインセンター」をオープン
2025年10月は、ランボルギーニのインハウスデザインセンター「チェントロ・スティーレ(Centro Stile)」の公式な設立20周年にあたります。
チェントロ・スティーレはまず2000年代初頭に発足し、2005年に公式に「ひとつの部門」として独立したという背景を持ちますが、スーパースポーツカーメーカーとして初のインハウスデザイン部門でもあり、ランボルギーニらしい形によって、業界のトレンドを牽引してきたことでも知られます。
この設立は、イタリアのスーパースポーツカー業界はもちろん、ランボルギーニにとっても大きな転換点となり、これ以降、「すべての新しいデザイン、モデルバリエーション、特別なコンセプトカー、限定モデル」がチェントロ・スティーレと歴代のデザイン責任者によって指揮されており、数十年にわたるランボルギーニの歴史において、スタイリング面での遺産を形作ってきたわけですね。
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CEOが語るデザインの重要性
ランボルギーニの会長兼CEO、ステファン・ヴィンケルマン氏は次のように述べています。
「ランボルギーニ・チェントロ・スティーレは、私たちのブランドを動かす不可欠なドライバーです。この20年間、デザインの役割を強固なものにしただけでなく、コンセプトカーから限定モデルに至るまで、常に限界を押し広げ、ランボルギーニというブランドに内在する『予期せぬもの』を提供してきました。デザインは私たちの活動のすべてにおいて基本的なものです」
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創業者の哲学から受け継がれるデザインDNA
ランボルギーニ創業者、フェルッチョ・ランボルギーニは、1963年の時点で「最初に世に送り出すGTカー」の形状とスタイリングがブランドにとって非常に重要であることを理解していたといい、そのためデザインにおいては高いプライオリティを置いていたと言われますが、それは後の「ミウラ」「カウンタック」を見ても「火を見るよりも明らか」。
この過程において「シャープなラインとヘキサゴン(六角形)」が誕生し、ランボルギーニのデザイン文化が確立されることになるわけですが、(現在の)ランボルギーニのデザインディレクター、ミッチャ・ボルカート氏は、以下のようにデザイン部門の内製化の意義を強調します。
「ランボルギーニはパフォーマンスエンジニアリングとデザインの上に成り立っており、この2つは密接に関連しています。研究開発(R&D)が内製である以上、デザインも内製でなければなりません。この20年間で、チェントロ・スティーレはランボルギーニのデザインDNA、その構造と機能に関する規範(rule book)を書き上げました」
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歴代デザイン責任者が築いた20年の軌跡
チェントロ・スティーレの歴史は、3人のデザイン責任者が牽引してきました。
1. ルク・ドンカーヴォルケ氏(Luc Donckerwolke):インハウスデザインの基礎を構築
1998年のアウディによるランボルギーニ買収後、インハウスデザイン部門設立への動きが加速し、2003年にデザイン責任者に任命されたドンカーヴォルケ氏は、V12ムルシエラゴ(Murciélago)(2002年)とV10ガヤルド(Gallardo)(2004年)の誕生を監督しています。
彼の生み出したデザインは、よりモダンで力強い、純粋なラインと引き締まった面を持つ、新しいデザイン言語のトーンを設定することとなりますが、ボルカート氏はムルシエラゴを「ランボルギーニのスタイリングの純粋な表現であり、新しい時代の原則を確立した」と評価。
なお、同氏はその後ヒョンデに引き抜かれ、そこでは高級ブランド「ジェネシス」の改革に取り組み、デザイン面での訴求によって「現代の自動車業界における神話」と評されるほどの成功を成し遂げており、ヒョンデグループにおいても重要なポジションを獲得していますね。
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2. フィリッポ・ペリーニ氏(Filippo Perini):限定モデルでデザインの方向性を示す
2006年にデザイン責任者に昇格したペリーニ氏は、驚異的なペースでデザインと開発を推進することに。
特に重要なのは2007年の限定モデル、レヴェントン(Reventón)で、現行プラットフォームを基にしながらも、航空機にインスパイアされたシャープでアグレッシブなデザイン、「Y字」と「ヘキサゴン」モチーフを取り入れたレヴェントンは、”次世代の量産モデルへのデザインのヒントを与える”という今日まで続く限定モデルの伝統を確立しています。
2011年のアヴェンタドール(Aventador)、2013年のウラカン(Huracán)、そして2012年のウルス(Urus)のコンセプトカーの基礎も、ペリーニ氏のリーダーシップの下で築かれたもので、彼はまた、カーボンジオメトリーを追求したセスト・エレメント(Sesto Elemento)、過激なヴェネーノ(Veneno)といったコンセプトカーを通じ、チェントロ・スティーレを「ランボルギーニのDNAをデザインを通じて表現する」という基礎を確立しています。
同氏はその後、ランボルギーニと同じくフォルクスワーゲングループ傘下にあるイタルデザインへと異動となり、その後いくつかの会社を渡り歩いていることが報じられています。
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3. ミッチャ・ボルカート氏(Mitja Borkert):新時代と電動化への移行
2016年にデザイン責任者に就任したボルカート氏は、スタジオスペースを倍増させ、チームを国際色豊かな25人へと拡大。
彼は、ウルス・スーパーSUVのデザインを完成させ、シアン(Sián)などの限定モデルを通じてカウンタックのシルエットを未来と融合させたことでも知られます。
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そして2023年にアヴェンタドールの後継として発表されたレヴエルト(Revuelto)は、彼が「一からデザインした最初のモデル」であり、新しいハイブリッド技術の要求に応えつつ、「パイロットのような感覚(feel like a pilot)」という哲学を持ち込むことに成功しています(我々がデザインするのは宇宙船である、と常に語っている)。
「レヴエルトは、ランボルギーニのデザインDNAが未来のデザインへの扉をどのように開くかを試しています。(中略)象徴的で印象的なY字とヘキサゴンのモチーフが、新しい世代のインテリア全体に特徴的に現れています」
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未来を見据える哲学:AIと「好奇心」
さらにミッチャ・ボルカート氏は、チェントロ・スティーレの役割は「ブランドの原則とルールを維持しながら、ランボルギーニのデザインの到達範囲を拡大すること」だとコメント。
設立20周年を迎えた今、デザインチームは3Dプリンティングから人工知能(AI)へと進化するデジタル技術にも目を向けており、ますます変化が加速するデザインの現場にも対応しつつ、独自の未来を思い描いているようですね。
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「私は物理的なモデルが好きですが、今後20年間の進化を受け入れる姿勢がなければなりません。AIの活用も、もちろん検討していますが、最終決定は常に人間が行うものです。しかし、ランボルギーニ・チェントロ・スティーレの原則は、常に好奇心を持ち、現状に疑問を投げかけることなのです」
2025年夏には、チェントロ・スティーレ20周年を記念し、ブランド史上最もパワフルな限定モデル「V12 HPEV フェノーメノ(Fenomeno)」が発表済み。
これは、真のランボルギーニの伝統に則った限定モデルであり、未来のデザインマニフェストとなっており、今後はフェノーメノの持つディティールが市販モデルへとフィードバックされることとなりそうです。
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参照:Lamborghini