
Image:Cadillac
| たしかにキャデラックは昨年も安定した速さを見せていたが |
キャデラック、ル・マンで102年目の歴史を塗り替える
ル・マン24時間レースの予選でキャデラックが初のポールポジションを獲得し、アメリカの自動車メーカーとしてはフォード以来、史上2社目となる快挙を成し遂げることに。
木曜日に行われたハイパーポール2回目のセッション(H2)において、キャデラック・ハーツ・チーム・ジョタのアレックス・リン選手が最終アタックで3分23秒166を記録してトップに立ち、わずか0.167秒差で同チームのアール・バンバー選手が続いています。
なお、今年はキャデラックがル・マンに初参戦してから75周年の節目でもあり、このポールポジションは大きな歴史的意義を持ちますが、アメリカ車でル・マンのポールを獲得したのはフォード(1965年、1966年、1967年)以来の快挙です。※ただ、意外なことに、キャデラックはこれについてまだ公式プレスリリースを発行していない
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複雑化した2024年ル・マン予選ルール
今年のル・マンの予選は、従来よりもやや複雑な新ルールが導入されており、しかしこのルールのもと、キャデラックは3人のドライバーがそれぞれ安定したタイムを記録し、見事フロントロウ独占を果たしたわけですね。
- 各車3名のドライバー全員がタイムを記録することが必須条件
- 予選初日(水曜日):21台のうちトップ18台が翌日のハイパーポール進出
- ハイパーポール1:各車2人目のドライバーがタイムアタック → 上位10台がハイパーポール2へ進出
- ハイパーポール2:トップ10による最終ポール争い
なおトヨタは7号車がハイパーポール進出ならず、そして8号車はハイパーポールへ進出するもトラブルにてノータイム。
そしてフェラーリはハイパーポールへと駒を進めたものの51号車とAFコルセの83号車がハイパーポール2へと進むことができず、昨年の上位チームが揃って苦戦することとなっています。※昨年の総合優勝はフェラーリ50号車(499P)、2位はトヨタ7号車(GR010ハイブリッド)、3位はフェラーリ51号車(499P)だった
代わりにキャデラック(V-Series.R)がフロントロウを独占し、3番手にはポルシェ 5号車(963)、4番手にBMW 15号車(MハイブリッドV8)、5番手にポルシェ 4号車(963)、6番手にBMW 20号車(M ハイブリッドV8)、そして7番手にはフェラーリ 50号車という並び。
つまり昨年とは異なる様相を呈していますが、昨年も安定性を見せたキャデラック、着実に経験を積んできたポルシェとBMWの存在感が増しており(とくにBMWは今年、”非常に速い”と評されている)、トヨタとフェラーリが「もはや最速チームではない」という状況に。
We have arrived! 😍#Ferrari499P #FerrariHypercar #WEC #LeMans24 pic.twitter.com/wDOjS5PjX8
— Ferrari Hypercar (@FerrariHypercar) June 8, 2025
キャデラックが選んだ「高ダウンフォース」戦略
通常ル・マンではトップスピード重視の低ダウンフォースセッティングが主流ですが、今年は異例の高温コンディションが続いており、タイヤの消耗が大きな課題だと指摘されています。
キャデラックはこの状況を見越して高ダウンフォースセッティングを選択していますが、実際に、キャデラックはポルシェ、フェラーリ、アルピーヌに対し最高速では劣ったものの、コーナリングでタイムを稼ぐことで結果的に予選トップを奪取しており、戦術の巧みさを見て取れます。
- メリット:コーナーでの安定性・タイヤ温存
- デメリット:ストレートの最高速度が約8〜9km/h低い
キャデラックとル・マンの歴史|ブリッグス・カニンガムの挑戦
参考までに、キャデラックのル・マン挑戦は今から約75年前、1950年にまで遡りますが、当時アメリカのレース界の伝説、ブリッグス・カニンガムがキャデラックで初のル・マン挑戦を行ったのがはじまりです。
1950年の出場車両
- #3「プティ・パトー」:キャデラック・シリーズ61・・・10位でフィニッシュ
- #2「ル・モンストル」:キャデラックV8とシャシーをベースに、グラマンの風洞で開発した異形エアロボディを装着・・・11位でフィニッシュ
同年はタルボ・ラーゴが1-2フィニッシュを飾りましたが、キャデラック製エンジンを搭載したアラードJ2が3位に入る健闘を見せています。
まとめ|キャデラックの歴史的新章が始まる
- キャデラック、ル・マン24時間で初ポールポジション獲得
- フォード以来、アメリカ車として史上2社目の快挙
- 高ダウンフォース戦略で異例の高温下でも安定した速さを実現
- 1950年から続くル・マン挑戦の歴史がついに実を結ぶ
2024年のル・マン24時間レースは、キャデラックにとって記念碑的な瞬間になることは間違いなく、レース本番での活躍にも注目です。
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参照:Jalopnik