
Image:Abimelec Design
| クライスラーはかつて「バイパー」や「プロウラー」「PTクルーザー」などアツいクルマを作っていたメーカーであったが |
現時点での「100周年記念」といえるものは「まさかのミニバン」のみ
さて、クライスラーは今年で創業100周年を迎えますが、100周年にあたって特別なイベントやコンセプトカーの発表は(今のところ)なく、唯一発表されたのがミニバン「パシフィカ」の特別仕様車。
それではあまりに寂しすぎる・・・ということでデザインオフィス、アビメレック・デザイン(Abimelec Design)が伝説の(クライスラーによる)コンセプトカー、ME4-12を現代風にリメイクし発表することに。
クライスラー ME4-12(ME Four-Twelve)とは?
まず、クライスラー ME4-12(ME Four-Twelve)は2004年のデトロイトモーターショーで発表されたクライスラーのスーパーカーコンセプト(下の画像)で、その名前は以下の要素の組み合わせに由来しています。
- ME (Mid-Engine):ミッドシップ(エンジンが車両の中央に搭載されている)
- Four:4つのターボチャージャー
- Twelve:12気筒エンジン
Image:Stellantis
主な特徴としては、以下のとおりで、現代でも十分に通じるスペックを持っています。
- パワートレイン: メルセデス製の6.0リッターV12クワッドターボエンジンを搭載し、最高出力は862馬力
- 性能: 0-100km/h加速2.9秒、最高速度は360km/h(一部資料では399km/hの推定値も)と謳われ、当時のスーパーカーの中でも群を抜く性能を持っていた
- 構造: カーボンファイバー製モノコックを採用するなど、軽量化と高剛性を追求した設計を保有
- 量産への期待: 当初は量産も視野に入れて開発されたとされていたものの、コスト面や親会社であるダイムラー・クライスラー(当時)の戦略上の理由などにより、最終的にはショーカーに留まり、市販化はなされず
非常に高いパフォーマンスと魅力的なデザインで注目を集めたものの、諸事情によって「実現しなかった幻のスーパーカー」として人々に記憶されていますが、「Midnight Club 3 Dub Edition」や「Forza Motorsport」といったレーシングゲームにも登場しているため、その存在を知る人も少なくはないかもしれません。
クライスラーといえば、「やらかし」と「伝説」の連続
上述の通り、クライスラーは非常にユニークなクルマを夜に送り出しており、バイパー、PTクルーザー、プロウラー以外だと以下のような「伝説」も。
- Kカー(小型車)ブームを牽引し(意外と売れた)、三菱と提携して小型車の開発にも注力
- ランボルギーニを一時買収し、ランボルギーニの名をもってコンパクトカーやセダン、ミニバンを作ろうとしていた
- タービンエンジン搭載車を本気で開発したことがある
- いきなり世界トップクラスの性能を持つコンセプトカー、ME Four-Twelveを発表して世界を驚愕させる
- クライスラーの代名詞となるV8エンジン「ファイアパワー」、通称「HEMI(ヘミ)」を開発した
- メルセデス・ベンツ(当時はダイムラー・ベンツ)と合併したがその後分離した
- 「アトランティック」「クロノス」なる奇妙なコンセプトカーを公開したことがある
- 2009年にリーマンショックのあおりを受けて経営破綻した→フィアット傘下に入ることで生き延びる
- 2024年にも突如「ハルシオン コンセプト」を発表
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クライスラーが突如「ハルシオン コンセプト」を発表。昔の人が考えた未来のクルマっぽいネオレトロさを持ち、無限の走行距離を実現する「走りながら充電」も
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Image:Stellantis
こういった具合で、「ちょっとやりすぎ」なくらいがクライスラーらしさ。
しかし最近では、その冒険心もやや影を潜めているのが少し悲しいところですが、一時の「やらかし」は自動車業界きってのカーガイであるボブ・ラッツ、そしてやり手として知られたリー・アイアコッカの暴走によるところが大きく(しかし両名が挙げた功績は非常に大きい)、しかし今のクライスラーにはそういった人物が欠けているのかもしれません。
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信じられないが過去にはクライスラーの車を「ランボルギーニ仕様」にして発売するという計画があった!そのプロジェクトを再現したCGが話題に
| かつてランボルギーニはクライスラー傘下にあり、ダッジ・ヴァイパーの開発にも参加した | https://www.flickr.com/photos/110074903@N02/4980300887 ...
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ME4-12「現代版」のアップデート内容:
そして今回公開された「現代版」ME4-12については以下のようなアップデートが施されています。
- ケーニグセグ風リアウィングを追加
- 空力パーツを強化し、実走行も視野に
- 内装を一新、ブルーレザー&アルカンターラ仕上げ
- 伝説のカラー「タービンブロンズ」を採用
- 新デザインホイールで足元もシャープに演出
このカラー”タービンブロンズ”は、1960年代のクライスラー・タービンカー(下の画像)に使われていた象徴的な色であり、つまり今回のレンダリングはクライスラーへの愛が詰まったオマージュということになりますね。
ME4-12、今見ても通用する?それとも古い?
このコンセプトカー、ME4-12は2000年代初頭に発表されたものの、上述の通り市販には至らず。
しかし今こうして手を加えると、全然古臭さを感じせず、むしろME4-12のデザインが持つ“機械美”や“エッジ感”は、逆に新鮮に見えるようにも思えます。
クライスラーの100周年が「ただのミニバン」で終わるのはあまりにもったいなく、いつも「型破り」な挑戦によって世間を驚かせてきたクライスラーだからこそ、ME4-12のような“攻めた夢”を、今こそもう一度見たてみたいと思います。
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参照:Abimelec Design(Facebook)