| ターボチャージャーも昔と違って多様化してきた |
強化される排ガス規制のために開発が遅れていると言われるメルセデスAMG ONEですが、AMGのボス、トビアス・メアース氏が「AMG ONEには電動ターボを使用する。そしてAMG ONEは電動ターボを使用する世界ではじめてのガソリン車になる」と語っています。
ちなみに「電動ターボ」はディーゼルだとアウディQ7 TDIに採用され、ガソリン車でもメルセデス・ベンツS450やAMG 53系に採用済み。
となるとAMG ONEは「ガソリン車初の電動ターボ」とななりえず、それでもメルセデスAMGが「ガソリン車初」と言い切る理由を見てみましょう。
電動ターボは大きく分けて二種類ある
ここで重要なのは、電動ターボは「2ステージ型」と「ハイブリッド型」の二種類がある、ということ。
そして、現時点で電動ターボを採用している市販車(ディーゼル、ガソリンとも)はいずれも「2ステージ型」で、今のところ「ハイブリッド型」は実用化されていない、という状況です。
2ステージ型電動ターボとは
まず2ステージ電動ターボについてですが、これを語るには「ターボ」そのもから説明する必要が。
ターボチャージャーとは、エンジンの排気によってタービンを回し、そのタービンが回して発生させた風をエンジンに送り込むことで「強制的に」エンジンの爆発力を高めるもの。
このタービンは大きければより大きな風量を発生でき、そのぶんパワーが上がることになるものの、大きなタービンを回すには「より大きな排気」が必要。
そして大きな排気とはつまり「高い回転数」を意味し、たとえば低回転からアクセルを踏んでもタービンは回らず、エンジン回転数が上昇して排気(排圧)が高まった後にタービンが回ってようやく加給が始まることに。
この「加給がかかるまでの時間」がターボラグですが、タービンが小さいとターボラグが小さく、しかし過給圧も小さい(パワーアップ幅も小さい)ということに。
逆にタービンが大きいとターボラグも大きく、しかし過給圧が高いのでパワーアップ幅も大きいということになりますが、これはいわゆる「ドッカンターボ」とも表現されます。
そして「ターボラグ」を最小限にして「パワーアップ」を最大限にするのが「ツインターボ」で、たとえば「最初は小さいタービンで加給し」、「その後大きなタービンで加給する」シーケンシャルツインターボ、小さなターボ二個で加給して「合計」の風量を最大化するツインターボとが存在します。※そのほか、可変タービンジオメトリも最近では増えつつある
前置きが長くなりましたが、2ステージ電動ターボとは、従来のタービンによって加給がはじまるまでの間を「モーターでタービンを回してカバーする」もので、シーケンシャルツインターボの「小さいタービン(プライマリータービン)」を電動に置き換え、しかしより低回転から加給をかけることが可能になるもの。
ハイブリッド型電動ターボとは
そして次はハイブリッド型電動ターボですが、これはひとつのタービンを「電動」「排気」両方で回すもの。
エンジンが低回転状、かつ十分な排気がない状態ではモーターによってタービンを回し、エンジン回転数が高まれば排気でタービンを回すというもので、タービン回転時には回生によって発電と蓄電もできるというもの。
これはF1に搭載されるMGU-H(Motor Generator Unit - Heat)が該当し、ポルシェ919ハイブリッド、トヨタTS050ハイブリッドに搭載されるシステムも同様かと思われます。
そして当のメルセデスAMG ONEですが、これはもともとF1由来のパワートレインを積むと言われていたとおり、やはり「ハイブリッド型」電動ターボを積むと思われます。
そして今のところ電動ターボを採用する市販車が存在しないというのは、そのコストがあまりに効果になるということが一因だと思われ、しかし「価格の制約がないに等しい」メルセデスAMG ONEの場合は最適な選択だと言えるのかもしれません。