| 日産の不健全さは以前から指摘されていた |
時事通信によると、日産の2019年4〜6月期における営業利益が前年同期比90%減(つまり1/10)になる、とのこと。
この理由としては、主力の北米市場にて、販売奨励金(インセンティブ)を強化してなんとか販売を伸ばしてきたものの、それでは採算性が悪化するのでインセンティブを削ったところクルマが売れなくなり、結果として販売が減ってしまった、と報じられています(値引きをやめたら売れなくなったマツダとよく似ている)。
日産は自動車を「賞品」としてしか見ていない
ちなみに日産は非常に「ビジネスライク」な会社で、トヨタのように「顧客の要望に応えられるように車種を増やすと開発コストがかかる」ので車種を絞り、そのぶん絞った車種を安く売って台数を稼ぐという手法を取っています。
たとえばミニバンにしても「セレナ」「エルグランド」のみ、SUVだと「エクストレイル」「ジューク」のみで、このあたりはトヨタと比べるとかなり異なる構成。
しかもモデルライフも長く「なかなかモデルチェンジしない」、つまり既存車種のモデルチェンジにすらお金をかけていないということに。
スポーツカーだとフェアレディZやGT-Rはもう登場から10年をゆうに超える年月が流れていて、こうなるともう「まったく自動車に愛が感じられない」と消費者が感じてもおかしくはありません。
日産の販売方法は「不健全」
そして日産は上記インセンティブのほか、「法人販売」についてもけっこう無理をしていて、とくに北米では企業向けのクルマとして相当な値引きを行ってねじ込んでいる、と言われます。
そして、これはリース契約を介していることが多く、リース期間が終了すれば「どっと」安い中古車が市場に出回ることになり、これまた新車が売れない状況を作ることに。
クルマ本体の魅力で販売を伸ばそうとせず、値引きに頼って販売を行い、中古相場が崩れることを気にせずに値段を引いて競合を蹴落としたツケを払うときが来たということですが、「自動車メーカーなのに、いいクルマをつくろうとせず、そもそも自動車も開発せずに何をやってきたんだ・・・」と改めて感じさせられます。
なお、日産はこれを受けてアジアと欧州で4800人、世界規模だと1万人程度の人員削減を行うとしていますが、未曾有の危機が日産を襲うことになり、そしてこれまで新型車を投入してこなかったために「回復する見込みはなく」、かなりヤバいんじゃないかという状況だと思います。
なお、カルロス・ゴーン氏が日産にやってきたとき、利益を大きく改善して「英雄」扱いされましたが、その中身は「魅力あるクルマを作って販売を伸ばした」のではなく、「人員をカットし、製造コストを圧縮して利益を出した」。
つまりその影には、多くの「切られた」人、業務上優位な立場を利用されての不当な値切りによって苦しむサプライヤーがあったということですが(事実、サプライヤーはこの時期を境に入れ替わり、塗料メーカーも変わったのでボディカラーも一新されている)、これもやはり「自動車本来の魅力を向上させることではなく、別の方法で利益を増加させた」ということになります。
こういった行動について、投資家に対する責任を考えると「やむを得ない」部分もありますが、やはり自動車メーカーであるからには、魅力ある商品をつくり、その商品を多くの人に(適正な価格で)買ってもらい、買った人には喜んでもらって「またこのメーカーのクルマを買おう」と感じてもらえるような商品を作って利益を伸ばすのが本筋であろう、と思うわけですね。