| これが実現するとマツダは一気に世界のメインストリームに躍り出る |
マツダが「FRスポーツカー」に関する特許を出願し、それが公開となっていることが判明。
これは「特開2019-151130/151131」にて開示されているもので、タイトルそのものは「車両の衝撃吸収構造」となっています。
ちなみに同時期に出願され、かつ開示となっているものの中には「低温プラズマの生成方法及び圧縮着火式エンジン」「自動変速機(特開2019-143708/143707/143706)」「電動過給器付きエンジン(特開2019-138245)」などがあり、これらはもしかすると「RXヴィジョン・コンセプト(画像)」の市販モデル、もしかすると「RX-9」として、まとめて採用されるかもしれませんね。
この構造を採用するメーカーは非常に少ない
なお、この構造を見るに、フロント部分は「スペースフレームにダブルウィッシュボーンサスペンション」を持つことがわかります。
これが何なん?ということですが、順を追って(ざっと)説明してみましょう。
まず、自動車のシャシー構造にはいくつかあって、大きく分けると「モノコック」「スペースフレーム」「ラダーフレーム」ということになります(それらの組み合わせもある)。
ラダーフレームはオフローダーに多い
まずはラダーフレームですが、文字どおりラダー=はしご形状を持つことが特徴。
構造が簡素、強度が高く、かつ「上モノ(ボディ)」をポンと載せることで車体が完成するので、シングルキャブ、デュアルキャブ、ピックアップ、ワゴンなど様々なボディ形状が要求されるオフローダーに向いています。
画像はトヨタ・ランドクルーザーですが、スズキ・ジムニー、メルセデス・ベンツGクラスも同じ構造を採用。
「フレーム・オン・ボディ」構造とも呼ばれることもありますね。
スペースフレームはレーシングカーに多い
そして次はスペースフレーム。
画像はアリエル・アトムですが、レーシングカーやコンパクトな少量生産スポーツカー、ちょっと前の(モノコックやカーボン関連技術が発達していなかった時代の)スーパーカーによく見られます。
ラダーフレームを3次元的にしたものだとも言えますが、ラダーフレームと異なるのは、スペースフレームはボディの一部を兼ねていること。
よってボディパネルはここに「貼り付ける」ことになります。
モノコックは乗用車に多い
そしてモノコック。
これはフレームとボディとが一体化しているようなイメージです(画像はトヨタのTNGAで、C-HRのもの)。
強度と生産性とのバランスに優れ、量産車に多い構造ですね(特殊な用途のクルマを除き、ほとんどの量産車がこの構造を採用)。
現代のスーパーカーはこうなっている
そして現代のスーパーカーですが、モノコックとスペースフレームとを組み合わせた構造が多くなっています。
このメリットとしては、軽く、強固に仕上がること、サスペンションのレイアウト自由度が高いこと。
反面、乗用車に採用されるモノコックに比較するとコストが掛かり(パーツが多様化するので製造コストが高く、組み立てコストも高い)、かつエンジンコンパートメントが限られ(汎用性がない)、トランクスペースが狭くなること。
よって、ある程度コストを掛けることが許容されるクルマで、荷物や人がさほど乗らなくても良く、使用するパワートレインが狭い範囲で決まっているクルマにしか使用できない、ということに。
こちらはランボルギーニ・アヴェンタドールですが、中央のキャビンはカーボンモノコック、そして前後にはスペースフレームを組み合わせていることがわかりますね。
マクラーレンもカーボンモノコック(カーボンモノセル)とスペースフレームという構造。
ランボルギーニ・ウラカン/アウディR8はキャビンがアルミ+カーボン、そして前後は同じようにスペースフレームを持っています。
NSXはアルミ製モノコックに前後スペースフレーム。
一部、スペースフレームを使用せずに「フルカーボンモノコック」構造を持つクルマ(これはアポロ・インテンサ・エモツィオーネ)もありますが、これはコストや破損時の修復を考えると現実的ではなく、「軽さのためにすべてを犠牲にできるクルマ」のみが採用しうるものですね(市販車では異例中の異例)。
マツダの新型スポーツはフロントミッドシップにトランスアクスル採用か
そして今回のマツダ。
特許の内容自体が「車体前部の衝撃吸収構造」なのでその全容はわからないものの、これを見ると、キャビン部分にスペースフレームが取り付けられていることがわかります。
つまりマクラーレンやランボルギーニ、ホンダNSXと同じような構造を持つということで、国産スポーツで「ここまでやった」例は(おそらく)過去になく、実際に市販化されれば一大事ではないか、と考えています。
横から見るとこんな感じ。
先端はマクラーレン風の衝撃吸収構造を持ち、その後ろのスペースフレームはランボルギーニ・ウラカン/アウディR8に近い構造です。
ただ、上に挙げたスーパーカーたちとマツダの新型スポーツとが異なるのは、マツダの場合「フロントエンジンになるだろう」ということ。
クラッシュ時にエンジンそしてエンジンが室内に押しやられることを防ぐような構造を持っているように見え、しかしエンジンが収まるスペースは「極小」かつフロントアクスル(車軸)よりも後ろ。
つまり小型のエンジンをフロントミッドシップマウントするということになり(小型といえど、ロータリーは期待できない)、小排気量+電動ターボ、もしくはそれに「ハイブリッド」をプラスすることになるのかも。
そしてこのフロントには、トランスミッションが収まるスペースは無いようにも見受けられますが、もしかすると「トランスアクスル(トランスミッションが後ろにある。重量配分が最適化され、後輪にトラクションが掛かりやすい)」を採用する可能性もありそうです。
加えて、2シーターと割り切った場合、トランスアクスルだと(周辺に)十分なスペースが確保できるので、トランスミッション内にモーターを装着することも可能であり、かつ車体後部(リアアクスル付近)にバッテリーを積めば、ガッチリとトラクションも確保することも可能となります。
なお、気になるのは車体後部の構造。
2+2であれば一般的なモノコックを採用する可能性もありますが、フロントでここまでやってリアが「普通」というのも考えにくく(剛性のバランスも取れず、前後サスペンション間でのジオメトリ変化も大きくなる)、よってリアもスペースフレームと考えるのが妥当かもしれません。
参考までに、マツダは過去に「スポーツカー向け」と思われる、格納式スポイラーとドア構造の特許出願を行っており、これらもあわせて新型スポーツ(ここまで来るとスーパースポーツと呼んでいい)に採用されるのかもしれませんね。
マツダは来年1月で100周年
マツダは2020年1月30日に「創立100周年」を迎えますが、まずはこの新型スポーツを東京モーターショーにて「コンセプト」として予告し、2020年1月30日に「市販モデル」を発表する可能性も。
できれば「ロータリーエンジン」復活を告げてほしいと考えるのはぼくだけではないはずで、もしも「前後スペースフレーム、ロータリーエンジン(電動ターボ)搭載、トランスアクスル、ハイブリッド」というパッケージングを持つスーパースポーツが発表されれば、これ以上に嬉しいことはない、と思います。
VIA:J-Platpat