| もう日産が回復することは望めないのか |
何かと話題のカルロス・ゴーン、そして日産ですが、今回Bloombergが報じたところによると、元検事である郷原信郎弁護士いわく「カルロス・ゴーン逃亡前、自分に対し、”日産はあと2~3年で倒産するだろう”と語った」とのこと。
郷原弁護士はカルロス・ゴーン逮捕以後、検察の捜査手法をずっと批判し続けてきた立場の人であり、2019年11~12月にものべ10時間以上にわたってカルロス・ゴーンへのインタビューを行ったばかり(逃亡直前、12月27日にもインタビューを行っている)。
ただし発言は鵜呑みにできない
日産のCEOを長年勤めた人が「日産が倒産する」と語るのは相当な現実味を帯びた話ではあるものの、カルロス・ゴーンは御存知の通り「おおげさな」表現を好む人物であり、恨み節が入っていた可能性も。
さらに当時は日産とルノーとの「アライアンス解消」の話も出ておらず、日産が倒産すればルノー側にも大きな影響が及ぶことになるため、そう簡単に倒産する(させる)とは思えないため。
よって、これは「自分のいない日産は2~3年ももたないだろう(自画自賛)」という意味なのかもしれません。
カルロス・ゴーンの業績は功罪混じっていて、「功績」についてはまず日産を”見かけ上であっても”回復させたこと。
就任以後、”首切りゴーン”と呼ばれたほどの強烈なリストラを行い、さらには製造コストもカットして原価を引き下げ、車種も絞ることで販売効率を上げ、さらには台数の稼げる法人(フリート)販売に集中して利益を確保。
この裏で泣いた人も多数いるとは思いますが、「会社と、残った人々の雇用を守った」ということにはなりますね。
そして「罪」については、自動車メーカーとして応えるべき「消費者の需要」に対応することができず、ラインアップが老朽化してしまったこと、そしてコストカットのツケによって消費者の信頼を失ってしまったこと。
これはブランドの失墜を招くことになり、この回復は一朝一夕にはゆかない状況にまで陥っています。
日産はなぜ「窮状」に陥ったのか!米メディアがその「7つの理由」と「3つの復活の方法」を述べる。なお意図的な「日産タイマー」が本当に仕込まれていた
日産は現実的に破産に向かう?
日産が現実的に「沈みゆく船」であることは間違いなく、すでに利益は大きく減少し、1台あたりの営業利益は2018年の8万円から、2019年では1,300円に。
ただ、これについては「多額の開発資金」を投じたことが理由だとされ、新型ジューク、そして度々プロトタイプが目撃される新型エクストレイルの開発費等に充てられていると考えてよく、将来的に利益となって日産をうるわすことになるのかもしれません。
日本の自動車メーカーの業績悪化止まらず。日産は一台あたり利益が8万円→1,300円、マツダは8.1万円→2万円へ。逆にスバルは利益が増えて業界トップの一位台あたり35万円へ
ただ、日産が「ニューモデルの利益が入ってくるまで」持ちこたえられるかどうかは疑問であり、生き残るにはどこかほかの自動車メーカーと提携するほかに道はなく、よって「ホンダと日産とが提携(合併)」という話も出てくるのでしょうね。
全米の日産ディーラーは不満爆発
あわせて報じられるのが全米ディーラーの日産本社に対する反発。
日産のCEOは西川廣人氏から正式に内田誠氏へと後退していますが、内田誠CEOは米国にて日産ディーラー網と一回目のミーティングを持ったと報じられ、そこで内田CEOがディーラーに対して述べたのが「すべてのネガティブな意見を知りたい。正直になってほしい」ということ。
なお、日産にとって北米は最大の市場であり、多くの自動車メーカーにとってもそれは同様(最近は中国が最大マーケットとなっている自動車メーカーも多い)。
さらに以前より北米市場ではディーラーの発言力が強く、メーカーの運営方針を左右することも珍しくはないようです。
そして言うまでもなく主義主張の強いアメリカのディーラーなので、そこで出てきたのが「日産は安売りブランドのイメージが付いてしまった(北米で最も安価なクルマはヒュンダイではなく日産)」「モデルラインアップが古く競争力がない(日産は18ヶ月以内にラインアップの70%をリニューアルすることで対応)」「”技術の日産”キャンペーンが全然消費者に伝わっていない」「目標達成時のディーラーインセンティブが少ない」等々。
すでにミーティングは終了していますが、ディーラーの多くは内田CEOに対して悲観的で、「彼からは覚悟が感じられない」「彼には日産の”癌”を治すことはできないだろう」という意見が多く、しかし内田CEOは逆に「ポジティブな感触を持った」と述べたと報道されていて、ここにも大きなギャップが感じられます。
参考までに、北米における日産の販売は2019年に前年比9.9%下がっていますが、これは日産によると「(不健全な)フリート販売を抑制したため」。
このフリート販売は多額の値引きを行って企業向けに大量納品を行うもので、これは利益を圧迫する他、一定期間が経過したのち、ドバっと中古車が市場に出てくることになるため、中古相場の下落、ひいてはブランド価値の低下を招く、と言われていますね。
VIA: Automotive News, Bloomberg