| 現段階では、どういった経緯で日本の盗難車がアメリカにまでたどり着いたのかわからない |
さて、昨今より問題となっている「日本で盗まれたクルマが、アメリカにて大量に販売されている件」。
ことの成り行きとしてはおおよそ以下のとおりです。
1.日本で、自分のクルマを盗まれたオーナーが、アメリカの中古車を検索 2.オーナーがアメリカのJ-Spec Auto Sportsという会社が自分のクルマを販売しているのを発見 3.オーナーがその内容をSNSに投稿 4.J-Spec Auto Sportsにて販売されるクルマ、パーツの中に「盗まれた自分のクルマ」を発見するオーナーが続々登場 5.J-Spec Auto Sportsは盗難車を販売していた可能性を認める |
なお、現時点ではどこに問題があったのか判明しておらず、J-Spec Auto Sportsが盗難車だと知って仕入れていたのか、仕入先のひとつであるJDM RACING JAPAN(千葉、求人広告を出している)が直接盗難に関わっていたのか、それともJDM RACING JAPANもまた被害者であるのかは不明。
一般に、中古車を輸出する場合は自動車検査登録事務所にて「輸出抹消仮登録」を行わなくてはならないのですが(輸出相手国によってこれが不要な場合もある)、対米輸出でもこれが必要であった場合は書類も偽造していた可能性が高く、そもそも「ナンバーが付いた状態でなぜ税関を通過できたのか」もちょっとナゾ。
輸出業務を行っていたのがどこなのかによっても諸悪の根源の所在が変わりそうですが、今の段階では事実が明らかになるのを待つしかなさそうです。
J-Spec Auto Sportsは声明文を発表
そして上述の通り、J-Spec Auto Sportは今回の案件について声明文を発表しており、おおまかには下記の通り。
現段階では、基本的には罪を認めるのではなく「そういった疑惑があるのは承知している」、そして被害者に対しても「お詫び」ではなく「同情(アメリカでは謝る=非を認めるなので)」というスタンスであり、かつ多くのコメントを削除しているということもあって、不信感を募らせる人も多いようです。
- 盗難車販売の疑惑については認識しており、日本の当局と連携して捜査を進めている
- 日本車を愛する人々、被害にあった人には心より同情する
- 自社の利益のために自動車愛好家の利益を侵害(この場合は意図的な盗難車販売)することはない
- 自社の利益のためにクルマをカットしてバラ売りすることはない
- JDM Racing japanが唯一の仕入先ではない
- すべての車両は合法に輸入されている
- もし購入した車両に問題があれば、(合法だと証明できる)書類も発行できる
- (問題となっている)シビック・タイプRのオーナーとは連絡を取っている
盗まれたクルマはどうなるのか
そこで気になるのが盗まれたクルマ。
もし本当に「合法に」輸入されているのであれば取り戻すのは難しく、まずは本当に「合法」であったのかどうかを追求する必要がありそうです。
御存知の通りアメリカでは日本車が一つのブームであり、25年ルール対象となり輸入が可能となったクルマは右から左に売れる模様。
ただ「完成車」として輸入すると関税がかかるので、それを回避するために完成車であったも「部品」だと偽って(関税が低くなる)輸入したり、実際に部品に見せかけるために分解して輸出するケースも多いようですね。
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もし完成車を「部品」として輸入していれば脱税行為を問われることになりますが、すでにアメリカ側で通関が完了してしまっているのであれば、それを証明するのは非常に難しい、と思います。
そして上にあげた輸出抹消仮登録において、申請内容に虚偽があればこの責任を(書類を申請し、輸出した会社に)問うこともできますが、これもその会社が逃げてしまえば、これまたどうしようもないという状況に。
今回はけっこう問題が大きくなっていて、「みせしめ」の意味も含めて日本とアメリカ側で厳正な対処を行ってくれればいいのですが、それでも「すでに販売された車両やパーツ」を取り戻すのは非常に難しく、というのも「盗品と知らずに買った人に罪を問うことはできない」ため。
もしJ-Spec Auto Sportsに良心があれば、販売したパーツや車両を買い戻し、それらを正しいオーナーへと返還することも考えられるものの、声明の内容を見るに自社の正当性を主張しているように見え、良心に期待するのは難しいだろうと考えています。
よって、なんらかの法的な判断が下らない限りはJ-Spec Auto Sportsが対応を行うことは無いのかもしれませんね。
そしておそらく、このJ-Spec Auto Sportsは氷山の一角に過ぎず、こういったショップへと販売する(書類の偽造や車体の分解など高度に組織化された)窃盗団が存在すると考えていいかとは思います。
ネオクラシック国産車は高嶺の花に
上述のとおり25年ルールにかかったクルマは常に盗難の可能性を秘めていると考えても過言ではなく、ちょっと前であれば「安くなって買いやすいから」と選ばれていた中古車が「窃盗団のターゲット」となってしまい、これらのクルマに乗る人々は「青空駐車」することができず、シャッター付きガレージに保管するなどの対策を迫られそう。
加えて盗難時にもお金が支払われる保険にも加入しておくのは必須であり、こういった「維持費」がかかることを考えるに、ネオクラシックカーを所有するということは「(本来はコストの低い選択肢であったはずなのに)かなりコストのかかる行為」になってしまったと言えそうですね。
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