| 何が何でも走行不能な状態となってはならないだけに責任重大 |
温度、紫外線、重力、地形、路面状態などすべてが地球とは異なる
さて、ここ最近自動車業界の「宇宙産業への進出」がよく聞かれますが、今回はグッドイヤーが米国アルテミス計画にて運用される月面探査車(ルナローバー)にエアレスタイヤを供給する、と発表。
ちなみにこの月面車はロッキード・マーチン社とゼネラルモーターズ社との共同にて作られる、と報じられています。
月面と地球とでは大きく環境が異なる
グッドイヤーはすでに月を再現した環境にてエアレスタイヤのテストを開始しているといいますが、月面はクレーターだらけ、そして砂地ではその粒子が地球のものよりも遥かに小さいといい、想像を絶する過酷な環境だとも(とくに砂は宇宙服のどこにでも入り込んでしまうくらいで除去が難しく、基地内や船内にも入り込み、宇宙飛行士の目に入ったりしてやっかいなことになるようだ。月に行くことがあればアイボン必須)。
さらに月の気温は夜間はマイナス250℃以下、日中は250℃を超え、大気がないためにモロに紫外線を浴びることになり、もうタイヤにとっては無茶な条件しか無いという感じですね。
参考までにですが、アポロ15号、アポロ16号、アポロ17号に搭載されて月面を走ったルナローバーはポルシェの設計、そしてボーイングの製造だとされていますが、この際に採用したタイヤは「ワイヤーを編んだもの(竹で編んだ籠みたいなイメージ)」で、これは軽量かつ衝撃吸収製、耐摩耗性に優れ、当時かなりいいアイデアだと言われたもよう。※特にペイロード軽減という意味では大いに役に立ったと思われる
当然、この編込みタイヤは地球であれば車体重量に耐えることができず潰れることになるかと思いますが、車体重量210kg、そして重力が地球の1/6である月においては非常に有効だったのでしょうね。
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とにかくこういった具合で「地球とは全く異なる考え方で」作らねばならないのが宇宙に関するモノたちということになりますが、タイヤが破損してしまえば生命にかかわることになり、グッドイヤーの責任はとんでもなく重大ということになりそうです(火星探査車、キュリオシティの活動停止もタイヤの寿命が理由だった。ただしこれは想定よりもずっと長く持ちこたえた)。
グッドイヤー製品が宇宙に出るのはこれが「初」ではない
ちなみにですが、グッドイヤー製品が地球外にて使用されるのはこのエアレスタイヤが初ではないといい、なんでも1969年のアポロ11号の「コマンドモジュールの窓枠、計器盤、(地球到着時の)浮き袋」を提供したことがあるのだそう。
ただしタイヤに限ってはこのエアレスタイヤが「初」となり、グッドイヤーのグローバルオペレーション担当上級副社長兼最高技術責任者のクリス・ヘルセル氏によれば「月の非常に厳しい環境下でのタイヤ製造から学んだことは、すべて地球上でより良いエアレスタイヤを作るために役立ちます」。
参考までに、アポロ15号、アポロ16号、アポロ17号のミッションでは移動できる範囲が制限されており(ルナローバーが壊れても、歩いて帰ることができる距離しか移動が許されなかった)、しかしアルテミス計画ではより長い距離での移動が想定され、そのぶん高い耐久性が要求されることを意味します。
加えて、新型ルナローバーは自動運転やリモートコントロール操作での走行が想定されていて、かつてのアポロ計画でのルナローバーとは比較にならないほどの距離を走ることになるのかも。
もちろんこのルナローバー、そしてエアレスタイヤが月面を走るのはまだ数年先の話ですが、追って公開されるであろう情報を楽しみに待ちたいところですね。
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