自動緊急ブレーキへの過信は禁物？人間の目とは逆に、センサーは夜間において「黒い服を着た人は認識できるが、リフレクター素材を採用した目立つ服を着る人間を”人間であると”認識できない」

Image：IIHS

｜　もしかするとセンサーは「リフレクターのみ」を捉え、人としてのシルエットを認識できないのかも　｜

いずれにせよ、どのような環境下でも、ドライバー本人が最大限の注意を払うべきである

さて、現代のクルマにはさまざまな安全技術が搭載されており、その中でも大きく安全に貢献するのが「自動緊急ブレーキ」。

そして今回、この自動緊急ブレーキに焦点を当てた研究結果が米国保険協会道路安全研究所（IIHS）によって発表されており、その内容によれば「一部のシステムが、暗闇で視認性を高めるためにデザインされた服、具体的には反射テープを使用した服を着た歩行者を検出できない」という異常が見つかったのだそう。

ほとんどの歩行者とクルマとの接触事故は夜間に発生している

IIHSによれば「ほとんどの歩行者事故は夜間に発生している」とのことで、今回の研究は「自動ブレーキシステムが夜間における歩行者にどれだけ効果的かを評価する」という目的のもと実施されています。

そしてその評価のために集められたのは2023年モデルのホンダCR-V、マツダCX-5、スバルフォレスターという3台ですが、「異なる照明条件と服装の種類」という環境下にてテストが行われることに。※できればトヨタも加えてほしかったところである

まず、一定速度（25mph＝時速40キロ）で走行するホンダ車とマツダ車は、その服装に関係なくほとんどの歩行者ダミーと衝突してしまい、服装に反射材（リフレクター）が追加されてもダミーを避けることがなかったという結果が示されています。

Image：IIHS

そして興味深いのは「黒い服を着た歩行者ダミーに対しては少なくとも減速したが、リフレクター付きの服を着たダミーに対しては減速しなかった」ということで、つまり人間の目とは逆に、クルマのセンサーは「見えにくい黒い服の歩行者を認識し、見えやすいはずのリフレクター付きの服を着た歩行者を認識しない」ということに。

そしてもうひとつの「予想外の結果」が外部照明の明るさが及ぼす影響であり、例えば、マツダCX-5は周囲に10ルクスの追加照明があると「（歩行者ダミーを認識し）比較的減速した」ものの、この明るさが20ルクスに増加すると逆に自動ブレーキシステムの性能が悪化しており、これもまた「人間の目とは真逆の」結果です。

一方、スバルは周囲の明るさにかかわらずすべてのテストで歩行者ダミーを避けることができたそうですが、唯一の失敗は「リフレクターを用いた服を着たダミー」。

やはりリフレクター素材を採用した衣類を着た歩行者を認識できないということになり、これについてIIHSは以下のように推測しています。

「パンツやジャケットの関節や手足に取り付けられた反射ストライプは、ドライバーが動きのパターンを素早く認識するのに役立ちます。残念ながら、動くストライプはテストした歩行者用AEBシステムには同じ効果を与えなかった可能性があり、おそらくセンサーに混乱を与えてしまったのでしょう」。

これも推測の域を出ないものの、リフレクター素材だけがあまりに「目立って」しまうことでセンサーが他の部分を認識できず、よってその物体を「人間であると」認識できないのかもしれませんね。

あわせて読みたい、関連投稿