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なぜEVはガソリン車より「500kg」も重い?「静かさと加速、環境性能」の代償、各パーツやタイヤにかかる負担、増加する死亡リスクとは

BMW 7シリーズのフロント(ヘッドライト)

| EVの「重さ」はバッテリーのみによるものではない |

「重くなる」ということはすべてのパーツと機能に影響を及ぼす

「電気自動車(EV)は静かで加速もいい。でも、なぜこんなに重いのか?」そんな疑問を抱いたことがあるかと思います。

実際のところ、一般的なEVは同クラスのガソリン車に比べて約450kg-500kg以上重いのが現状で、この重量差は「バッテリーを積んでいるから」という言葉だけでは片付けられない設計上の大きな課題、そしてぼくらの安全に関わる重要な問題にも関係しています。

ここではEVが抱える「重量ペナルティ」の正体、そしてそれがEVの走りにどう影響するのか、さらには「いつになれば軽いEVを作ることができるのか」を考えてみましょう。

この記事のポイント(要約)

  • 主な原因はやはり「バッテリー」: リチウムイオン電池の主要材料(ニッケル・コバルト等)は非常に高密度で重い
  • 悪循環の構造: 航続距離を伸ばすために電池を増やすと、さらに重くなり、車体剛性やサスペンション、ブレーキの強化で重量が嵩む
  • 意外なデメリット: 重い車体と強力なトルクにより、EVはガソリン車よりタイヤの摩耗が圧倒的に早い
  • 次世代の希望: 「全固体電池」の登場により、将来的に重量問題は劇的に解決される可能性がある
テスラ・モデルYのテールランプ

なぜEVは重いのか?「500kgのペナルティ」の実態

EVが重いのは「バッテリーのみによるものではない」と述べましたが、現在のEVにおいてやはり「主な重量増加の要因」となるのはバッテリー。

そしてバッテリーの容量次第で「それに付随する要素」の重量も増えてゆくという点において、「バッテリーは重量増加の起点」といえるのかもしれません。

実際の重量比較表

同じモデルや同等クラスで比較すると、その差は一目瞭然で・・・。

車種(EV vs ガソリン車)パワートレイン車両重量 (kg)重量差 (kg)
BMW 740i (ガソリン)3リッター直6ターボ約2,090kg-
BMW i7 xDrive60 (EV)エレクトリックモーター約2,690kg+600kg
ポルシェ マカンS3リッターV6ツインターボ約1,950kg-
ポルシェ マカン4S エレクトリックエレクトリックモーター約2,400kg+450kg
ポルシェ マカン 4S エレクトリックのエクステリア(ホワイト、サイド)
ポルシェ マカン 4S エレクトリックのエクステリア(ホワイト、全景)
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バッテリーが重い理由と「重量の悪循環」

なぜバッテリーはこれほどまでに重いのか?その理由とは・・・。

  1. 高密度な金属材料:正極材に使用されるニッケル、コバルト、鉄などの活物質は、化学的に非常に重い物質であり、エネルギー密度を高めようとするほど、これらの材料を大量に詰め込む必要が生じる
  2. 航続距離のジレンマ:「航続距離への不安(レンジ・アンキエティ)」を解消するためにバッテリーを増やすと車体が重くなり、車体重量が重くなると、その巨体を動かすためにより多くのエネルギーが必要になり、さらにバッテリーを積み増すという「重さの負の連鎖」に陥る
  3. 補強パーツの追加:重いバッテリーを衝突から守る堅牢なケース、巨大な質量を支える強化サスペンションや取付け部、そして強大な負荷に耐えるブレーキシステム。これらすべてが、さらなる重量増を招いている
テスラ・モデルSのベアシャーシ
ハマーEVは「環境に優しい」クルマとなるはずだったが・・・。実際はガソリンエンジン搭載セダンよりも多くのCO2を排出し、環境に負荷をかけるという試算結果
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重量がもたらす「走り」と「安全」への代償

クルマが重いことは、単にスペック上の数字が変わるだけではなく・・・。

  • タイヤへの過酷な負荷:J.D.パワーの調査によると、多くのEVオーナーが「タイヤの減りの早さ」に驚いており、重量に加えてEV特有の強力なトルクがタイヤのトレッドを急速に削り取ってしまうことに
  • 道路やインフラへの懸念:2023年にニューヨークで発生した駐車場崩落事故では、現代の重いEVやSUVが古い構造物に与える負荷について議論が巻き起こす結果となる
  • 衝突時の安全性:2011年の研究では車両重量が約450kg増えるごとに、衝突時の死亡確率が47%上昇するという結果も出ており、重いクルマは、歩行者や他の軽量な車両にとって脅威となる側面がある
最新のタイヤに関する調査では「ガソリン車オーナーよりもEVオーナーの方がタイヤに対する不満が高い」。早すぎる摩耗について「事前に知らされていない」という声も
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EVは軽くなるのか?「全固体電池」という希望

現在のEVはまだ発展途上であり、この重量問題を解決する切り札として期待されているのが「全固体電池(ソリッドステートバッテリー)」。

フィンランドのDonut Labsなどの研究では、エネルギー密度を400Wh/kgまで高める技術が発表されており、これが実現すれば、現在のリチウムイオン電池の約半分の重さで同じ距離を走れるようになるという報告も。

ただ、このソリッドステートバッテリーについては当初「2020年代はじめには実用化される」と言われていて、しかし今になっても現実的には実装されず。

一部で「市販車に採用」するという発表もあるものの、現時点では「コストと性能が見合わない」とも言われており、ソリッドステートバッテリーの恩恵を「フルに」受けることができるようになるのはまだまだ先、と思われます。

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全固体電池の効果

  • 軽量化: 100kWhのバッテリーユニットが現在の半分程度の重量(約250kg)になる可能性
  • 高速充電: 液体電解質を使わないため、発熱が抑えられ超急速充電が可能
  • 安全性: 発火リスクが極めて低く、重い消火設備や補強を減らすことができる
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結論

つまるところ、EVがガソリン車より重いのは、現在の技術では「航続距離」と「重量」がトレードオフの関係にあるからで、さらにこの「重さ」はタイヤの摩耗や道路含むインフラへの負荷といった新たなコスト、そして事故の際の(ガソリン車以上の)リスクを生んでいます。

もし今EVを選ぶなら、その圧倒的な加速感や優れた電費の裏に「物理的な質量」があることを理解しておく必要があり、そしていかに「燃料(電気)代が安価」といえど、タイヤの交換費用がかさんだり(一方で内燃機関やトランスミッションがないのでオイル交換費用は発生しない)、リスクに起因して保険料が高くなったりという現実を直視する必要があるのかもしれません。

その一方、全固体電池が主流になったとき、EVは本当の意味でガソリン車を超える「軽やかな未来」を手に入れることになるのだとも考えられ、技術的なブレイクルーが待たれるところでもありますね。

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