
| 少し前より中国では「ドアハンドル(アウター)に関する規制」が報じられていたが |
物理的な対応が必要となり、このリコールへの対処は容易ではないであろう
近年のEV(電気自動車)デザインでは、空力性能の向上やスタイリッシュな外観演出のため、フラッシュドアハンドル(格納式ハンドル)やボタン式の電子制御ドアロックが主流となっています。
しかし今、その「先進的デザイン」が人命を脅かす深刻なリスクとして浮き彫りとなっており、今回中国の国家市場監督管理総局(SAMR)がテスラをはじめ吉利(Geely)、シャオミ(Xiaomi)などの主要自動車メーカーが提出した大規模なリコール計画を発表することに。
対象台数は自動車業界の歴史上でも最大級にのぼるとされ、問題視されたのは、万が一の衝突事故や電源喪失時に自力脱出・外部救助を行うための「非常用機械式ドアハンドル」の視認性と操作性の低さであり、なぜこれほど大規模な事態へと発展したのか、その真相と今後の自動車市場への影響を整理してみましょう。
-
-
テスラの「ポップアップ式ドアハンドル」が事故の際の脱出を阻む?「ドアが開かなかった」ことで15名が死亡していることが明らかに
| 現在、中国では「ポップアップ式ドアハンドル」に関する規制が進んでいるが | この記事の要約 衝撃の調査: 過去10年のテスラ車火災事故を調査した結果、ドアが開かなかったことが原因で少なくとも15名 ...
続きを見る
合わせて読みたい、関連投稿
- 中国市場において、テスラ、吉利、シャオミ、小鵬(Xpeng)など主要メーカーが一斉に大規模リコール(回収・修理)を届け出
- 主因は低電圧バッテリー死没時などに使う「手動の非常用内部ドアハンドル」が内装色と同化し、見つけづらく操作しにくい安全上の不備
- シャオミ「SU7」で発生した炎上事故により大学生3名が逃げ遅れて死亡した痛ましい事案など、実際の事故被害が規制強化の契機に
- メーカー側は対象車両に警告ステッカーを無償貼付するほか、事故後に窓を自動下降させるOTA(ソフトウェア更新)等で対応
- 中国政府(工業情報化部)は2027年1月より外付け機械式ドアハンドルの義務化など新安全基準を導入予定であり、世界的なEVデザインの潮流が変わる可能性

-
-
EVの60%に採用される隠しドアハンドルがついに「正式に禁止」。中国の強硬規制で世界のEVデザインが大きく変わる可能性
| とくにEVにおいては中国市場を無視したデザインはできない | 記事のポイント(要約) 「格納式」が禁止へ: 中国政府が2027年1月からEVの電動ドアハンドル規制を正式発表。 相次ぐ悲劇が背景: ...
続きを見る
なぜ非常用ハンドルが見つからないのか?リコールの背景と危険性
今回の大規模リコールの核心は車内にある「非常用手動ドアレバー」の視認性にあり、多くの最新EVやスマートカーだと通常時はドア開閉を電子ボタン(e-ラッチ)で行います。
しかし、衝突事故などで車両の低電圧(12V)システムが破損・遮断されると、電子ボタンは機能しなくなり、その際には乗員が手動で開錠するための機械式ワイヤーにつながる非常用レバーが装備されているのですが、これがデザイン上の理由から「ドアポケットの奥深くに隠されている」「内装パネルと同色で塗装されている」といった例が多く採用されていたわけですね。
そして緊迫した事故現場や車内発煙時だと、乗員や救助者がこのレバーの場所を瞬時に判別することは極めて困難で、特に中国国内で大きな物議を醸したのが、シャオミの電動セダン「SU7」で発生した痛ましい事故。
事故後に車両が炎上した際、乗車していた大学生3名がドアパネルの収納部に隠されていた非常用レバーを見つけることができず、車内から脱出できないままに命を落とすという悲劇的な事態が発生してしまい、この悲劇が引き金となりって「当局による厳格な調査」と今回の全社的なリコール対応へとつながったのだと報じられています。
影響を受けるメーカーと主なリコール対象台数
今回の届出により、中国国内で生産・販売されたメーカーを中心に広範囲な車種がリコール対象となっていて、中でもテスラは中国生産分・輸入分を合わせて約300万台に達し、最も大きな影響を受けることが明らかになっていて・・・。
主なメーカー別リコール対象一覧
| メーカー / ブランド | 対象車種(一部抜粋) | 対象台数 | 対応策 |
| テスラ(中国生産分) | Model 3, Model Y | 2,975,910 台 | 非常用ハンドル位置の警告ラベル貼付 / 事故時ウィンドウ自動下降機能のOTA適用 |
| テスラ(輸入分) | Model 3, Model X, Model S | 46,041 台 | 同上 |
| シャオミ(Xiaomi) | SU7(2024年モデル) | 390,435 台 | 同上 |
| Leapmotor(零跑汽車) | C01, C11 | 371,200 台 | 同上 |
| 小鵬(Xpeng) | G6, P7+, X9 | 264,842 台 | 同上 |
| 極氪(Zeekr / 吉利傘下) | 007, X | 92,658 台 | 同上 |
| 奇瑞(Chery) | iCar 03, 風雲X3 | 64,488 台 | 同上 |
| 東風汽車(Dongfeng) | Nammi 06, eπ 007/008 等 | 53,452 台 | 同上 |
| 北汽ブルーパーク(BAIC) | ArcFox Kaola | 46,860 台 | 同上 |
| 一汽紅旗(FAW Hongqi) | EH7, 天工08 | 4,035 台 | 同上 |
※中国最大手EVメーカーである比亜迪(BYD)は、今回のSAMRリコール計画リストには含まれていない
実施される改修内容
今回のリコールにおいて、物理的なパーツ変更ではなく車内の非常用レバー位置を目立たせる警告ステッカーの無償貼付が基本対応になるとされ、また、多くの車両に対してはOTA(オンライン・ソフトウェアアップデート)が配信され、重大な衝突検知時に自動的にサイドウィンドウを引き下げて脱出・救助ルートを確保する機能が追加される、とのこと。※こういった場合、ソフトウエア定義車両は便利である
【関連知識】2027年義務化へ「ポップアウト式ドアハンドル」全廃の衝撃
今回のリコールは単なる不具合対応にとどまらず、自動車デザインそのもののルール改定に直結しています。
中国の工業情報化部(MIIT)は、すでに国家基準『自動車ドアハンドル安全技術条件(Technical Requirements for Automobile Door Handle Safety)』を策定しており、2027年1月より正式に施行されるということもアナウンス済み。
2027年新安全基準の主なポイント
- 外部メカニカルハンドルの必須化:すべてのドアにおいて、電源が切れていても外側から手動で開錠・開閉できる機械式構造の装備を義務付け。これにより完全隠蔽型の格納式ハンドルは実質排除される方向へ。
- 内部ハンドルの視認性向上と配置制限:車内の非常用ハンドル、内装色と明確に区別できる視認性を持ち、ドアの縁から300mm以内に配置しなければならない。

中国は世界最大のEV市場であり、ここで決定された規格は世界の自動車メーカーの共通設計プラットフォームに大きな影響を与えることとなり、テスラをはじめとするグローバルメーカーも、中国市場向けだけでなくグローバルモデル全体のドア機構設計を根本から見直さざるを得ない状況となっています。
そしてもちろん、すでに発売したクルマについても「設計を見直す必要」があり、中国というひとつの市場の動向によって海外の自動車メーカーがその方向性を大きく左右されるということに(中国で人気があるからとこれを取り入れたメーカーも少なくはない)。
-
-
中国、格納式ドアハンドルに新たな安全基準案を公表。全ドアに「機械式開閉機構」を義務付けへ、その骨子が公表される
| 長年続いた中国自動車業界のトレンドに節目が訪れる | 「隙間」を突いた新しいトレンドの出現なるか 中国の工業信息化部(MIIT)が2025年9月24日、自動車用ドアハンドルの安全性に関する強制国家 ...
続きを見る
結論
「洗練されたミニマルデザイン」や「空気抵抗の低減」を極限まで追求した結果、万が一の命を守る安全設計がおろそかになっていた──今回の超大型リコールは、急速に進んだEVシフトにおける重大な教訓を投げかけています。
オーナー自身も「自分の愛車の非常用ドアレバーがどこにあり、どうやって操作するのか」を事前に確認しておくことの重要性が改めて浮き彫りとなり、今後の新型車では、スタイルと直感的な安全性のバランスとがより厳しく問われることになりそうですね。
合わせて読みたい、関連投稿
-
-
中国、ドアハンドルの新基準案を公表:事故時の「物理的な開閉」を義務化し「事実上」ポップアップ式は禁じ手に
| 意外と中国のお役所は真面目に仕事をしているようだ | この記事のハイライト 「隠れたハンドル」への規制強化: 中国工業情報化部(MIIT)が事故やバッテリー火災などの緊急時に、電力供給が途絶えても ...
続きを見る
-
-
テスラの「隠しドアハンドル問題」が全米および世界の新型車を変える可能性。米当局が安全規制の抜本見直しへと動いたとの報道
Life in the FAST LANE. | 事故時の電源喪失で閉じ込め?「開かないドア」を巡る問題の真相 | テスラそのものへの「調査請求」は却下、テスラは当面危機を免れる プレミアム感や先進的 ...
続きを見る
-
-
シャオミSU7で衝突炎上事故、ドア開かず乗員が車内に閉じ込められ死亡—EVの安全設計に再度の懸念、一方で飲酒運転の疑いも
Image:Xiaomi | はじめに:テスラだけではない、EVドアシステムの安全問題 | またしてもシャオミに災難が降りかかる ここ最近中国にて報じられる「電子制御(格納式、あるいはスイッチ式)ドア ...
続きを見る
参照:CarNewsChina











