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フェラーリはロードカーをどうやって進化させてきたのか?近代では「ステアリング、アクセル、ブレーキ」の電子化、そして車両制御の統合まで(後編)

【今さら聞けない】馬力とトルクの違いって?トルクが大きい → 「押し出される感じ」馬力が大きい → 「どんどん伸びる感じ」
Life in the FAST LANE.

| さほど論じられることはないが、現代のフェラーリは高度に「電子化され、統合された」電子機器でもある |

そして今後もこの路線を進むことは間違いない

さて、これまで2回にわたり、「フェラーリ初のロードカー」から革新的なSF90ストラダーレに至るまでの進化、そしてフェラーリの歴史における転換点や「初導入」について触れてきましたが、今回はそれらの最終章。

ざっとこれまでを振り返ると、1990年代にはルカ・ディ・モンテゼーモロの手腕によってF1からの技術が市販車へと反映され、そして大きく品質やデザイン性を向上させることになり、その後に定番化した「スペシャルモデル」において”今後の標準となる”デバイスや思想を導入してきたことがわかります。

フェラーリSF90ストラダーレのパドルシフト
フェラーリはF1技術を市販車へと次々転用しロードカーを変革してきたパイオニア。「パドルシフト」「カーボンブレーキ」など28もの革新的技術を見てみよう(中編)

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そして特筆すべきはパワーステアリングの電動化、アクセル・バイ・ワイヤやブレーキ・バイ・ワイヤの導入、そしてE-Diff、SSC(サイドスリップアングルコントロール)によって車両の統合制御を進めたこと。

いわば「ソフトウエア定義車両」のような存在になりつつあるのが現代のフェラーリではありますが、さらに進む電子化そして電動化について見てみましょう。

フェラーリF80のサイド(レッド)
フェラーリはまさに「技術革新の宝庫」である。「フェラーリ初」の革新的技術”28選”を1948年から現代まで年代順に追ってみよう(前編)

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フェラーリのステアリングホイール〜エンジンスターターボタン(ロッソレザー)
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この記事の要約

  • フェラーリはステアリングホイール、スロットル、ブレーキの統合制御加え「アクティブサス」の導入でさらに高度な車両制御を目指す
  • 「ルーチェ」によって新しい顧客層の拡大に挑戦、これまでとは別の世界観へ
  • F80ではこれまでの技術を「高度に統合」、未来のフェラーリの姿を指し示す

「電動化+ソフトウェア+アクティブ空力」

近代のフェラーリは高度に電子化され、車両の「動き」に関わる部分が統合されている

㉔ Purosangue ― 2022年:4ドア・4シーター

これは技術というより「構造上の世界初級」で、プロサングエはフェラーリ初の4ドア・4シーターではあるものの、そこに「観音開きドア」という要素が加わっており、これは(一部限定車を除くと)ほぼ類を見ない構造です。

なお、48Vエレクトリックモーターを使用した最新のアクティブサスペンション(FAST)もプロサングエにてはじめて導入され、これは2006年以降もっとも大きな「フェラーリのサスペンションにおける」進化だとされています。

フェラーリ・レーシング・デイズへと行ってきた(2)。会場ではこんなクルマが展示され、フェラーリの過去と現在、未来を結びつけている【動画】
Life in the FAST LANE

㉕ 296 GTB ― 2021年:フェラーリ初のV6+PHEV

296 GTBは、2.992L 120° V6ツインターボ+電気モーターを採用する、フェラーリのロードカーとして初めて「V6+PHEV」という組み合わせを採用したモデル。

ただ、(ただしフェラーリブランドとしては初のV6ではあるものの)ディーノブランドを含めれば「V6フェラーリ」は1960年代から存在し、「V6+ハイブリッド」というくくりだと、マクラーレン・アルトゥーラが先行してリリースされていますね。

フェラーリ296GTBのサイド(ブルー)
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㉖ F80 ― 2024年:電動ターボ+3モーター+アクティブサスペンション

そして現時点で最も新しい革命がF80。

F80は、以下の要素を組み合わせた「現時点でのフェラーリの集大成」、そして未来を示唆するモデルでもあり・・・。

  • 3.0L V6ツインターボ
  • e-turbo
  • MGU-H
  • 前輪2モーター
  • 後輪モーター
  • 800V
  • アクティブサスペンション
  • アクティブリアウイング
  • S-Duct
  • 3Dプリント製サスペンション部品
レッドのフェラーリF80(フロント)
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この中でも重要な技術が「e-turbo」すなわち電動ターボ。

これはタービンとコンプレッサーの間に電気モーターを配置してターボラグを低減するもので、F80はこの電動ターボをフェラーリとしてはじめて採用するクルマ、そして3Dプリントによるサスペンションアームを初めて採用するフェラーリです(アクティブサスペンションはすでにプロサングエにて導入されている)。

フェラーリ プロサングエのフロントフェンダー
フェラーリの「魔法のサスペンション」はこうやって動作する。プロサングエ、そしてF80の足回りを支えるFAST技術とは【動画】

| セミアクティブサス、流体磁性ダンパーに次ぐ「第三の」革命 | フェラーリは常に最新テクノロジーをもって車両を制御しようと試みる スポーツカーといえば「足回りが硬くて乗り心地が悪い」というイメージを ...

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そしてもっとも重要なのは、これまでフェラーリが培ってきた技術を統合し、かつ電子的に制御しているという点で、もしかすると(フェラーリは公式にアナウンスしていないものの)BMWのノイエクラッセのように、ソフトウエア定義車両、あるいはそれに近いレベルにて車両を設計する段階にあるのかもしれません。

レッドのフェラーリF80(テールランプ)
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フェラーリF80のエクステリア~リア(レッド)
フェラーリ F80はなぜ「1200馬力」でも安全に楽しく走れるのか?そこに採用される驚愕の足回りと空力テクノロジーとは

Image:Ferrari | フェラーリF80の真の凄みは「パワー」よりも「パワーを活かしきる足回りと空力」にある | フェラーリの「スペチアーレ」とは「過去」ではなく「未来」を示す存在である フェ ...

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㉗ ルーチェ ― 2026年:革新的なピュアエレクトリックモデル

2026年にはフェラーリの歴史上もっとも大きな転機が訪れることになり、それが完全電動モデル(BEV)であるルーチェの発表。

このルーチェについては「フェラーリらしくない」という批判が吹き荒れることとなるのですが、このルーチェは「スペチアーレ」とは異なってフェラーリの今後の路線を(直接的に)示唆するものではなく、たとえば「カリフォルニア」で新規顧客の獲得を狙ったように、フェラーリの顧客ベースを多様化させ強化させるための「新しいラインアップ」です。

フェラーリのEV、ルーチェ(ブルー)のエクステリア〜俯瞰図
Ferrari
フェラーリ ルーチェのカーコンフィギュレーター〜エクステリア編(ボディカラー、グリーン)
「批判は需要」?フェラーリ ルーチェが速くも2026年の販売目標を達成したもよう。アンチの声を黙らせた超富裕層のリアルな需要とは

Image:Ferrari | ルーチェに対する関心の高さがそのまま需要に繋がったようだ | ポジティブにしろネガティブにしろ「関心の高さ」は商品にとって重要である フェラーリ初のフル電気自動車(EV ...

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そしてこのルーチェで新しく導入されたのが「完全新設計のEVアーキテクチャ」、そしてそのほか、ざっと以下の「新」要素が挙げられます。

  • バッテリーを車体の構造材とするレイアウト(バッテリーEVにしかできない考え方)
  • バッテリーはじめエレクトリックコンポーネントを常にアップデートできるように予め設計(長期的な価値を維持することを目的としており、フェラーリはそのためにエレクトリックモーターなどエレクトリックドライブトレーンを自社で設計・製造し、サプライヤーに依存しない)
  • 4モーターに加え、F1からフィードバックされたハルバッハ配列を採用
  • エレクトリックドライブトレーンのサウンドを「増幅し」パッセンジャーに届ける「フェイクではない」サウンドシステム
  • フェイクシフトではない「トルクシフトエンゲージメント」による、EVならではのトルク制御

そのほか、プロサングエからは「観音開きドア」や「48V制御によるアクティブサス」を受け継いでいますね。

フェラーリのキー
フェラーリはなぜ「できたはずなのに」ルーチェに疑似MTを採用しなかったのか?「EVにマニュアル・トランスミッションを取り入れるのは”逃げ”です」

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フェラーリのEV、ルーチェのインテリア〜ステアリングホイール
Ferrari
フェラーリ ルーチェのローンチコントロール
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㉘ 12チリンドリ マヌアーレ ― 2026年:マニュアル・バイ・ワイヤ

フェラーリは2026年に「12チリンドリ マヌアーレ」にてDCTに「スティックシフト」と「クラッチペダル」を追加したマニュアル・トランスミッション仕様を追加(限定販売)。

特筆すべきは、マニュアル・トランスミッションとシフト機構とが機械式リンケージを持たず「電子的に」繋がっていることですが、これについては「なぜ機械的なコネクションを持たないのか」という一部からの批判も存在します。

しかしながら、ここまでの流れを見てわかるように、エンジンコントロールを電子化し、駆動力制御を電子化し(E-Diff)、パワーステアリングを電動化し(さすがにステア・バイ・ワイヤではない)、ブレーキを電子化し、これらによって車両制御を統合する(SSC)という流れを見るに、マニュアル・トランスミッションを電子的に制御するというのは非常に理にかなった選択であり、つまりフェラーリは「ただ操る楽しみのためだけ」ではなく、「より高度な制御を行う」という積極的な理由にて”電子式”マニュアル・トランスミッションを採用したのだと考えられます(機械式MTを採用するとファンは喜ぶかもしれないが、それは技術的な進歩、そしてブランドの未来を意味しない)。

フェラーリ12チリンドリ 「マヌアーレ」のインテリア〜シフトレバー
Ferrari
フェラーリ12チリンドリ 「マヌアーレ」のエクステリア(レッド)〜サイドスカットル
フェラーリが12チリンドリ「マヌアーレ」で採用した”電子制御マニュアル”。今後一気に普及し「ハイパワー車を救い、環境規制からスポーツカーを守る」技術革新となるか

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フェラーリの技術革新一覧

そこでフェラーリがこれまで(市販車に)導入してきた新技術を一覧にするとこんな感じ。

モデル技術判定
1948166 Inter5速MT+ロードGTフェラーリ史上重要な構成がはじめて登場
1950s250 GT系ディスクブレーキ
1959250 GT SWB軽量化・レース技術を市販車に導入世界初級
1963250 LMV12ミッドシップフェラーリ初
1964275 GTBリアトランスアクスルフェラーリ初
1968365 GTB/4フロントV12+トランスアクスルフェラーリ初
1975308 GTBFRPボディフェラーリ初
1982208 GTB Turboターボフェラーリ初
1984288 GTOツインターボV8フェラーリ史上重要な「初代」スペチアーレ
1987F40200mph級市販車世界初級
1995F50カーボンモノコック+構造エンジン世界初級
1997F355 F1式パドルシフト
フルボディ・アンダートレイ
フェラーリ初/世界初級
1999360 Modenaアルミスペースフレームフェラーリ初
2002Enzoカーボンセラミックブレーキ
マネッティーノ
フェラーリ初
2004F430E-Diffフェラーリ初/世界初級
2006599 GTB磁性流体ダンパーフェラーリ採用
2007430 Scuderia統合電子制御
2008California7速DCTフェラーリ初
2009458 ItaliaV8直噴フェラーリ初
2013458 SpecialeSSCフェラーリ初
2013LaFerrariHY-KERSハイブリッドフェラーリ初
2017812 SuperfastEPSフェラーリ初
2018488 PistaS-Ductフェラーリ初/F1技術
2019SF90 StradalePHEV+電動4WD
タッチ式インターフェースの本格導入
フル液晶メーター
ブレーキ・バイ・ワイヤ
フェラーリ初
2021296 GTB”Ferrari”ブランドV6+PHEVフェラーリ初
2022Purosangue4ドア4シーター観音開き
48V電子制御サスペンション
フェラーリ初
2024F80e-turbo+3モーターフェラーリ初
2026ルーチェピュアエレクトリックカー(EV)フェラーリ初
202612チリンドリ マヌアーレマニュアル・バイ・ワイヤフェラーリ初 / ほぼ世界初
フェラーリのエンブレム
フェラーリと四輪駆動の歴史:初の4WD試作車「408 4RM」、初の4WD市販車である「FF」から最新ハイパーカー「F80」まで、進化するAWD技術について考える

| フェラーリは1980年代、すでに4WD技術を取り入れてラリーで戦うことを考えていたようだ | そしてフェラーリにとっての「4WD(AWD)」技術のあり方も時代とともに変わってきている フェラーリと ...

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フェラーリFXX-Kのフロントフェンダー
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この一覧を年代順に並べると、非常に綺麗な一本の線になるのが見えてきて・・・。

1950年代

→ レース技術をGTへ

1960年代

→ トランスアクスル・独立懸架

1970~80年代

→ 軽量化・ターボ・複合材料

1990年代

F1技術を市販車へ

2000年代

→ 電子制御

2010年代

ソフトウェア+ハイブリッド

2020年代

電動化+アクティブ空力+AI的車両制御

という流れとなっており、フェラーリは「モータースポーツ(主にF1)で生まれた最先端技術を実践で試し、それを市販スーパーカーへと導入する」という手法を当初から貫いていること、しかしそれが電子化による部分が大きくなってきているということ、さらに「それぞれの要素が高度に統合されていっている」ということがわかります。

そして、この流れの最終到達点が上述の通りF80で、このF80では499P由来のV6、F1由来のMGU-H/e-turbo、電動フロントアクスル、アクティブサスペンション、アクティブ空力を一つのロードカーに統合しているというわけですね。

レッドのフェラーリF80(サイドエアインテーク)
Life in the FAST LANE.
レッドのフェラーリF80(サイド)
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参照:Ferrari

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