
| さほど論じられることはないが、現代のフェラーリは高度に「電子化され、統合された」電子機器でもある |
そして今後もこの路線を進むことは間違いない
さて、これまで2回にわたり、「フェラーリ初のロードカー」から革新的なSF90ストラダーレに至るまでの進化、そしてフェラーリの歴史における転換点や「初導入」について触れてきましたが、今回はそれらの最終章。
ざっとこれまでを振り返ると、1990年代にはルカ・ディ・モンテゼーモロの手腕によってF1からの技術が市販車へと反映され、そして大きく品質やデザイン性を向上させることになり、その後に定番化した「スペシャルモデル」において”今後の標準となる”デバイスや思想を導入してきたことがわかります。
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そして特筆すべきはパワーステアリングの電動化、アクセル・バイ・ワイヤやブレーキ・バイ・ワイヤの導入、そしてE-Diff、SSC(サイドスリップアングルコントロール)によって車両の統合制御を進めたこと。
いわば「ソフトウエア定義車両」のような存在になりつつあるのが現代のフェラーリではありますが、さらに進む電子化そして電動化について見てみましょう。
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この記事の要約
- フェラーリはステアリングホイール、スロットル、ブレーキの統合制御加え「アクティブサス」の導入でさらに高度な車両制御を目指す
- 「ルーチェ」によって新しい顧客層の拡大に挑戦、これまでとは別の世界観へ
- F80ではこれまでの技術を「高度に統合」、未来のフェラーリの姿を指し示す
「電動化+ソフトウェア+アクティブ空力」
近代のフェラーリは高度に電子化され、車両の「動き」に関わる部分が統合されている
㉔ Purosangue ― 2022年:4ドア・4シーター
これは技術というより「構造上の世界初級」で、プロサングエはフェラーリ初の4ドア・4シーターではあるものの、そこに「観音開きドア」という要素が加わっており、これは(一部限定車を除くと)ほぼ類を見ない構造です。
なお、48Vエレクトリックモーターを使用した最新のアクティブサスペンション(FAST)もプロサングエにてはじめて導入され、これは2006年以降もっとも大きな「フェラーリのサスペンションにおける」進化だとされています。

㉕ 296 GTB ― 2021年:フェラーリ初のV6+PHEV
296 GTBは、2.992L 120° V6ツインターボ+電気モーターを採用する、フェラーリのロードカーとして初めて「V6+PHEV」という組み合わせを採用したモデル。
ただ、(ただしフェラーリブランドとしては初のV6ではあるものの)ディーノブランドを含めれば「V6フェラーリ」は1960年代から存在し、「V6+ハイブリッド」というくくりだと、マクラーレン・アルトゥーラが先行してリリースされていますね。

㉖ F80 ― 2024年:電動ターボ+3モーター+アクティブサスペンション
そして現時点で最も新しい革命がF80。
F80は、以下の要素を組み合わせた「現時点でのフェラーリの集大成」、そして未来を示唆するモデルでもあり・・・。
- 3.0L V6ツインターボ
- e-turbo
- MGU-H
- 前輪2モーター
- 後輪モーター
- 800V
- アクティブサスペンション
- アクティブリアウイング
- S-Duct
- 3Dプリント製サスペンション部品

この中でも重要な技術が「e-turbo」すなわち電動ターボ。
これはタービンとコンプレッサーの間に電気モーターを配置してターボラグを低減するもので、F80はこの電動ターボをフェラーリとしてはじめて採用するクルマ、そして3Dプリントによるサスペンションアームを初めて採用するフェラーリです(アクティブサスペンションはすでにプロサングエにて導入されている)。
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そしてもっとも重要なのは、これまでフェラーリが培ってきた技術を統合し、かつ電子的に制御しているという点で、もしかすると(フェラーリは公式にアナウンスしていないものの)BMWのノイエクラッセのように、ソフトウエア定義車両、あるいはそれに近いレベルにて車両を設計する段階にあるのかもしれません。

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㉗ ルーチェ ― 2026年:革新的なピュアエレクトリックモデル
2026年にはフェラーリの歴史上もっとも大きな転機が訪れることになり、それが完全電動モデル(BEV)であるルーチェの発表。
このルーチェについては「フェラーリらしくない」という批判が吹き荒れることとなるのですが、このルーチェは「スペチアーレ」とは異なってフェラーリの今後の路線を(直接的に)示唆するものではなく、たとえば「カリフォルニア」で新規顧客の獲得を狙ったように、フェラーリの顧客ベースを多様化させ強化させるための「新しいラインアップ」です。

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そしてこのルーチェで新しく導入されたのが「完全新設計のEVアーキテクチャ」、そしてそのほか、ざっと以下の「新」要素が挙げられます。
- バッテリーを車体の構造材とするレイアウト(バッテリーEVにしかできない考え方)
- バッテリーはじめエレクトリックコンポーネントを常にアップデートできるように予め設計(長期的な価値を維持することを目的としており、フェラーリはそのためにエレクトリックモーターなどエレクトリックドライブトレーンを自社で設計・製造し、サプライヤーに依存しない)
- 4モーターに加え、F1からフィードバックされたハルバッハ配列を採用
- エレクトリックドライブトレーンのサウンドを「増幅し」パッセンジャーに届ける「フェイクではない」サウンドシステム
- フェイクシフトではない「トルクシフトエンゲージメント」による、EVならではのトルク制御
そのほか、プロサングエからは「観音開きドア」や「48V制御によるアクティブサス」を受け継いでいますね。
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㉘ 12チリンドリ マヌアーレ ― 2026年:マニュアル・バイ・ワイヤ
フェラーリは2026年に「12チリンドリ マヌアーレ」にてDCTに「スティックシフト」と「クラッチペダル」を追加したマニュアル・トランスミッション仕様を追加(限定販売)。
特筆すべきは、マニュアル・トランスミッションとシフト機構とが機械式リンケージを持たず「電子的に」繋がっていることですが、これについては「なぜ機械的なコネクションを持たないのか」という一部からの批判も存在します。
しかしながら、ここまでの流れを見てわかるように、エンジンコントロールを電子化し、駆動力制御を電子化し(E-Diff)、パワーステアリングを電動化し(さすがにステア・バイ・ワイヤではない)、ブレーキを電子化し、これらによって車両制御を統合する(SSC)という流れを見るに、マニュアル・トランスミッションを電子的に制御するというのは非常に理にかなった選択であり、つまりフェラーリは「ただ操る楽しみのためだけ」ではなく、「より高度な制御を行う」という積極的な理由にて”電子式”マニュアル・トランスミッションを採用したのだと考えられます(機械式MTを採用するとファンは喜ぶかもしれないが、それは技術的な進歩、そしてブランドの未来を意味しない)。

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フェラーリの技術革新一覧
そこでフェラーリがこれまで(市販車に)導入してきた新技術を一覧にするとこんな感じ。
| 年 | モデル | 技術 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 1948 | 166 Inter | 5速MT+ロードGT | フェラーリ史上重要な構成がはじめて登場 |
| 1950s | 250 GT系 | ディスクブレーキ | |
| 1959 | 250 GT SWB | 軽量化・レース技術を市販車に導入 | 世界初級 |
| 1963 | 250 LM | V12ミッドシップ | フェラーリ初 |
| 1964 | 275 GTB | リアトランスアクスル | フェラーリ初 |
| 1968 | 365 GTB/4 | フロントV12+トランスアクスル | フェラーリ初 |
| 1975 | 308 GTB | FRPボディ | フェラーリ初 |
| 1982 | 208 GTB Turbo | ターボ | フェラーリ初 |
| 1984 | 288 GTO | ツインターボV8 | フェラーリ史上重要な「初代」スペチアーレ |
| 1987 | F40 | 200mph級市販車 | 世界初級 |
| 1995 | F50 | カーボンモノコック+構造エンジン | 世界初級 |
| 1997 | F355 | F1式パドルシフト フルボディ・アンダートレイ | フェラーリ初/世界初級 |
| 1999 | 360 Modena | アルミスペースフレーム | フェラーリ初 |
| 2002 | Enzo | カーボンセラミックブレーキ マネッティーノ | フェラーリ初 |
| 2004 | F430 | E-Diff | フェラーリ初/世界初級 |
| 2006 | 599 GTB | 磁性流体ダンパー | フェラーリ採用 |
| 2007 | 430 Scuderia | 統合電子制御 | |
| 2008 | California | 7速DCT | フェラーリ初 |
| 2009 | 458 Italia | V8直噴 | フェラーリ初 |
| 2013 | 458 Speciale | SSC | フェラーリ初 |
| 2013 | LaFerrari | HY-KERSハイブリッド | フェラーリ初 |
| 2017 | 812 Superfast | EPS | フェラーリ初 |
| 2018 | 488 Pista | S-Duct | フェラーリ初/F1技術 |
| 2019 | SF90 Stradale | PHEV+電動4WD タッチ式インターフェースの本格導入 フル液晶メーター ブレーキ・バイ・ワイヤ | フェラーリ初 |
| 2021 | 296 GTB | ”Ferrari”ブランドV6+PHEV | フェラーリ初 |
| 2022 | Purosangue | 4ドア4シーター観音開き 48V電子制御サスペンション | フェラーリ初 |
| 2024 | F80 | e-turbo+3モーター | フェラーリ初 |
| 2026 | ルーチェ | ピュアエレクトリックカー(EV) | フェラーリ初 |
| 2026 | 12チリンドリ マヌアーレ | マニュアル・バイ・ワイヤ | フェラーリ初 / ほぼ世界初 |
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この一覧を年代順に並べると、非常に綺麗な一本の線になるのが見えてきて・・・。
1950年代
→ レース技術をGTへ
↓
1960年代
→ トランスアクスル・独立懸架
↓
1970~80年代
→ 軽量化・ターボ・複合材料
↓
1990年代
→ F1技術を市販車へ
↓
2000年代
→ 電子制御
↓
2010年代
→ ソフトウェア+ハイブリッド
↓
2020年代
→ 電動化+アクティブ空力+AI的車両制御
という流れとなっており、フェラーリは「モータースポーツ(主にF1)で生まれた最先端技術を実践で試し、それを市販スーパーカーへと導入する」という手法を当初から貫いていること、しかしそれが電子化による部分が大きくなってきているということ、さらに「それぞれの要素が高度に統合されていっている」ということがわかります。
そして、この流れの最終到達点が上述の通りF80で、このF80では499P由来のV6、F1由来のMGU-H/e-turbo、電動フロントアクスル、アクティブサスペンション、アクティブ空力を一つのロードカーに統合しているというわけですね。

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参照:Ferrari











