
| 1990年代後半に入り技術革新の速度がいっそう速くなる |
この時期に「最大級の革命」、パドルシフトが導入される
フェラーリはこれまでにも様々な「勝つため」の技術をF1へと導入し、そこで検証された技術を市販車へフィードバックしてきたという流れを「前編」にて紹介しましたが、これらを見るにフェラーリの本質はやはりモータースポーツにあるのだと理解することが可能です。
そのスタンスはエンツォ・フェラーリの死後も変わることなく受け継がれ、しかし技術革新のスピードの速さにあわせて「さらに新しく、さらに多くの」技術が市販車へと反映されることとなり、ここで1990年代後半から現在に至るまでの「エポックメイキングな技術やコンセプト」を見てみましょう(今回はSF90ストラダーレが登場した2019年まで)。
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フェラーリはまさに「技術革新の宝庫」である。「フェラーリ初」の革新的技術”28選”を1948年から現代まで年代順に追ってみよう(前編)
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この記事の要約
- 1990年代後半、フェラーリはF1と市販車とが「急接近」
- エアロダイナミクス、快適性が大きく向上
- E-Diff(電制デフ)、マネッティーノなど「電子化」が大幅に進む
- スペシャルモデルで画期的なデバイスや装備を先行して導入し、それがほかのロードカーに反映されるという流れが構築される

【第3期】1990年代後半~2000年代
「F1が市販車を変え始める」
⑪ F355 F1 ― 1997年:最大級の革命、パドルシフトを市販車へ
これは今回の28項目の中でも最重要クラスの革新であり、F355 F1ではF1式セミオートマチック+ステアリングパドルを”はじめて”市販フェラーリに導入しています。
ただしこれは「世界初のパドルシフト市販車」ではなく(驚くべきことに前例があるそうだ)、ここで「フェラーリが世界初」といえるのは「F1のセミオートマチック技術をロードカーへ本格的に移植したこと」。
そしてこれは後にトランスミッション形式によらず広く(ミニバンまでに)採用されるに至っており、文字通りの革命と言って良いかと思います。
さらにF355はフェラーリではじめて「フルボディ・アンダートレイ(フラットボトム)」を採用したクルマでもありますね。

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フェラーリF355シリーズは今年で発売30周年。フェラーリいわく「おそらく、F355はもっとも特別、そしてもっとも重要なV8モデルです」。その理由とは
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なお、こういった「F1由来の」技術や考え方が市販モデルに流れ込んできた背景には、1991年にルカ・ディ・モンテゼーモロ氏がフェラーリCEOに就任したことが大きく関係しているのだと考えられ、そして同氏は1974年よろ1980年代までスクーデリア・フェラーリのスポーティング・ディレクターを努め、ニキ・ラウダとともにF1ドライバーズタイトルを獲得した実績を持つ人物。
よって同氏がF1での成功をロードカーへと持ち込もうと考えたのは自然な流れであったのかもしれませんね。
⑫ 360 Modena ― 1999年:オールアルミ・スペースフレーム
360 モデナではアルミニウム製スペースフレームを採用し、これは従来のスチール構造に比較して・・・
- 約40%高剛性
- 約28%軽量
という大幅な進化を実現したもの。
ただし、世界初のアルミ製自動車ではなく(ただし量産車としてはごく初期であるのは間違いない)、「フェラーリ初」にとどまります。
なお、360モデナでは快適性と品質面での大きな向上が見られており、「日常的に乗ることができるフェラーリ」がここに誕生した、と言っても良さそうです。
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⑬ EnzoFerrari ― 2002年:カーボンセラミックブレーキ
エンツォフェラーリではカーボンセラミックブレーキを採用し、これはF1由来のブレーキ技術をロードカーへ持ち込んだ代表例ではありますが、やはりカーボンセラミックブレーキを世界で初めて採用した市販車ではなく、ここで重要なのは「スーパーカーの標準的な高性能ブレーキへ進化させる流れを作った」ということ。
エンツォフェラーリの前にも同様の例はあるものの、それは極めて特殊なケースであり、しかしフェラーリがこれを採用することで「他のメジャーメーカーもこれに倣う流れができた」のだとも考えられます。
なお、フェラーリにおいてカーボンセラミックブレーキをはじめて採用したのはエンツォフェラーリがはじめてではなく、オプションではありますが2002年の575M マラネロに「GTCパッケージ」の一部としてC/SiCブレーキを採用しています。※ただ、標準装備としてカーボンブレーキを採用したのはエンツォフェラーリがフェラーリ初だと考えられる

そしてもうひとつ重要なのは「マネッティーノ」が導入されたことですが、フェラーリはスペシャルモデルにおいてなんらかの革新的な装備やデバイスを導入し、それが「その後のモデル」に波及する、という流れが多いようにも思います。
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⑭ F430 ― 2004年:E-Diff
F430のE-Diffは、現代フェラーリの大きな転換点。
フェラーリ自身も「E-Diffは2004年のF430に登場し、F1からロードカーへ移行した技術」だと述べていますが、これもやはりF430が「世界初」ではなく「フェラーリ初」。
それでもやはり「フェラーリが市販車へと普及させる道を作った」ことは間違いなく、高く評価されるべきチャレンジです。

⑮ 599 GTB Fiorano ― 2006年:SCM磁性流体ダンパー
599 GTBではSCM(磁性流体式)電子制御ダンパーを採用し、磁性流体の粘度を電磁的に変化させることでダンパー特性を瞬時に変更します。
ただし磁性流体ダンパー自体はフェラーリが発明したものではなく、これもやはり「世界初ではないがフェラーリ初」ということになりますね。
⑯ 430 Scuderia ― 2007年:Manettino+電子制御の統合
430 Scuderiaでは、E-Diff、F1-Trac、サスペンションなどを統合的に制御することとなり、ここからフェラーリは、「メカニカル面をもってクルマを速くする」という考え方から「ソフトウエアを活用してクルマを速くする」という傾向を強めることに。
これは現代フェラーリの思想を決定づけた重要な転換点です。

⑰ California ― 2008年:フェラーリ初の7速DCT
カリフォルニアでは7速デュアルクラッチトランスミッションをフェラーリとして初採用。
それまでのF1ギアボックスからDCT時代へと移行することになりますが、V8エンジン搭載のライフスタイル系フェラーリを投入したこと(ラインアップを拡充し、客層を厚くすることに狙いがあった。実際にカリフォルニア購入者の7割は非既存フェラーリオーナーであった)、「カリフォルニア」という名称を復活させたことも特筆に値します。
【第4期】2010年代
「電子制御が機械を超える」
⑱ 458 Italia ― 2009年:フェラーリV8初の直噴
458 イタリアでは4.5L V8エンジンに直噴を採用し(フェラーリ初ではあるが世界初ではない)、自然吸気V8ながら「570馬力、許容回転数9000rpm」という驚異的な性能を実現。
⑲ 458 Speciale ― 2013年:Side Slip Angle Control
458 スペチアーレでは「SSC(Side Slip Angle Control)」を初採用し、フェラーリ自身もSSCの第一世代が458 スペチアーレにて導入されたと説明していますが、これは単なるトラクションコントロールではありません。

車両の横滑り角を推定し、
- E-Diff
- F1-Trac
- エンジン制御
などを統合するというスグレモノで、つまり、滑らせない」のではなく「滑っている状態をコンピューターで最適化する」という発想によって車両を制御するものであり、フェラーリ初であることはもちろん、「世界初」レベルの車両運動制御技術だと捉えられています(これを発展させたものが現在各社が採用するドリフトコントロールだといっていい)。
このあたりから、「まずスペシャルモデルでなんらかの新規技術やデバイスを導入し、それを以降のモデルへと反映させる」という流れが発生し定着してきたようにも思えます。
⑳ LaFerrari ― 2013年:フェラーリ初のハイブリッド
ラフェラーリはフェラーリ初の量産ハイブリッドカーで、V12+エレクトリックモーターによるHY-KERSシステムを搭載し、重要なのは燃費のためではなく性能向上のためのハイブリッドだったこと。
これは(ハイブリッドシステムの構成こそ異なれど)現在のSF90〜849テスタロッサ、296シリーズ、F80へとつながっています。

㉑ 812 Superfast ― 2017年:フェラーリ初のEPS
812 スーパーファストはフェラーリ初の電動パワーステアリング(EPS)採用車。
さらにはリアアクスルステアリング「Virtual Short Wheelbase 2.0」も取り入れており、フェラーリはステアリングそのものを電子制御システムの一部として考えるようになり、これはのちの「ブレーキ・バイ・ワイヤの採用」にも通じるところかもしれません。
なお、この電動パワステは「油圧から電動に」パワーステアリングコンポーネントを置き換えただけではなく、EPSを利用してドライバーに「アンダーステアの発生」を伝えるトルク制御を行っている点に注目すべきであり、SSC 5.0と連携してステアリングのトルクを変化させるなど、「電動パワステを車両運動制御のためのセンサー/アクチュエーターとして積極的に利用し始めたフェラーリ」であると位置づけることも可能です。

㉒ 488 Pista ― 2018年:F1由来Sダクト
488 ピスタでは、Sダクトを市販フェラーリとして初採用。
F1由来の空力技術により、フロントから入った空気をボンネット上へ導いてダウンフォースを発生させるというもので、これも既存の技術をフェラーリが「488ピスタで初採用した」というもの。

㉓ SF90 Stradale ― 2019年:フェラーリ初のPHEV+電動4WD
SF90ストラダーレはフェラーリの歴史において非常に重要なクルマであり、V8ツインターボエンジン+③エレクトリックモーターにて「初の1,000馬力」に到達したロードカーであり、初のPHEV、そして初の電動4WD。
この技術はのちにル・マン・ハイパーカーである499Pへと移植され、ル・マン24時間レースを席巻することになるわけですね。
そしてもうひとつ、インテリアにおいて「フル液晶メーター」「タッチ式(静電式)」インターフェースが導入されたことも大きなトピックです。

さらにSF90ストラダーレではブレーキ・バイ・ワイヤをフェラーリとして初導入しており、これによって「スロットル、ステアリングホイール、ブレーキ」を電子的に制御できるようになっていて、車両の電子化が大きく進み、できることが「より多くなる」ことに(その意味でもSF90ストラダーレはフェラーリの歴史上、非常に重要なクルマである)。
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参照:Ferrari











