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中国、格納式ドアハンドルに新たな安全基準案を公表。全ドアに「機械式開閉機構」を義務付けへ、その骨子が公表される

中国、格納式ドアハンドルに新たな安全基準案を公表。全ドアに「機械式開閉機構」を義務付けへ、その骨子が公表される

| 長年続いた中国自動車業界のトレンドに節目が訪れる |

「隙間」を突いた新しいトレンドの出現なるか

中国の工業信息化部(MIIT)が2025年9月24日、自動車用ドアハンドルの安全性に関する強制国家基準案「自動車ドアハンドル安全技術要件」を公表。

この基準案は2025年11月22日までパブリックコメントを受け付けていますが、この新基準は、電動格納式や電子制御式ドアハンドルの普及によって高まった安全上の懸念に対応するもので、各自動車メーカーに最低限の安全設計を求めると同時に、より安全なドアハンドル設計を促すことを目的としています。

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参考までに、この「安全上の懸念」とは、単にポップアップ機構が故障によって作動せずドアを開けることができない(救助活動の際には致命的な事態にも陥りかねない)、寒冷地ではドアハンドルが凍ってポップアップしない等の問題を指しており、実際に中国では「少なくない数のトラブル」が発生していて、そのため工業信息化部(MIIT)がこの状況に対応することとなったわけですね。

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主な基準案の内容

  • すべてのドア(トランクを除く)に、機械的に解放可能な外部ハンドルを設置すること
  • バッテリーの熱暴走など事故時には、非衝突側のドアを外部ハンドルから工具なしで開放できること
  • 外部ドアハンドルには、最低60mm×20mm×25mmの操作空間を確保すること
  • すべてのドアに、工具不要で開放できる内部機械式ハンドルを設置すること
    電動式内部ハンドルを採用する場合は、必ず機械的なバックアップハンドルを併設すること
  • 内部ハンドルは明確に視認でき、ドア端から300mm以内に配置すること。
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つまり、外板だけではなくドアのインナー側にまで規制が及ぶことがわかりますが、そうなると現在多くのプレミアムカーが採用を進めている「ボタンを押すだけでドアが開く」電動式ロック解除機構についても見直しが必要ということになりそうです。

そしてもちろん、現在多くの自動車メーカーがこの「ポップアップ(リトラクタブル)式」ドアハンドルを導入しているため、今後の自動車業界においてなんらかの混乱が起きるのは間違いないものと思われます。

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背景と狙い

中国汽車標準化研究院の副院長・栄輝氏は、中国メディア、CNAutoNewsの取材に対し、次のように説明しています。

「電動格納式ドアハンドルは電動化の進展とともに急速に普及しましたが、操作方法や構造が多様化する中で新たな安全リスクも顕在化しています。今回の基準は、技術革新に対応しつつ、安全性を確保することを目的としています」

こういった状況に対してMIITは230車種以上のドアハンドル構造を調査し、20モデル以上で実証テストを実施。

さらに100以上の自動車メーカー、部品サプライヤー、試験機関が基準策定に参加したことについても触れられています。

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テスラが火付け役、しかし安全性に課題

格納式ドアハンドルの象徴的存在となったのは、2012年のテスラ・モデルS。

電動モーターでポップアップするフラッシュハンドルは未来的なデザインとして多くのメーカーが追随することで一大トレンドへと成長しています(そのほか、テスラは”グリルレス”、インテリアだと「インフォテイメントディスプレイで車両の機能を操作する」など、いくつかのトレンドを作り出している)。

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しかしこのデザインは、車両の停電や電欠、ソフトウェア不具合、寒冷地での凍結時に「乗員が車外に出られない」事態を招き、子どもが閉じ込められ窓を破壊して救出される事故も報告されています。

こうした問題を受け、テスラのチーフデザイナー、フランツ・フォン・ホルツハウゼン氏は2025年9月に「緊急時により直接的かつ確実に機械的開放ができるよう、ドアハンドルの再設計を進めている」とも公表していますね。

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まとめ

自動車の未来的なイメージを象徴してきた格納式ドアハンドル。しかし、安全性への懸念が強まる中、中国は世界に先駆けて明確な安全基準を打ち出すことに。

今後は他国でも同様の規制が広がり、デザインと安全性の両立がメーカーに求められることになりそうです。

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参照:CarNewsChina

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