| まさかここまでアストンマーティンが苦境に陥るとは想像していなかった |
アストンマーティンが2020年第一四半期に1億4600万ドルもの損失を出した、との報道。
アストンマーティンはつい先頃、レーシングポイントF1オーナーにして実業家でもあるローレンス・ストロール氏の6億6300万ドルもの出資を受け入れたばかりですが、それがなければ恐ろしい額の赤字であった、ということになりそうです。
なお、この出資はアストンマーティン初のSUVであるDBXの生産資金、ハイパーカー”ヴァルキリー”の開発と生産に充てられるそうですが、これらは今までのアストンマーティンのクルマとは全く異なる設計とコンポーネントを持つだけに「お金がかかる」のも仕方がなさそう。
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アストンマーティンの売り上げは前年比1/3規模に
参考までに、「売り上げ」ベースだと前年同期比で30%近くまで落ち込んでいると報道されており、しかし体感上は(日本での販売を見る限り)そこまで減っているようには見えず、この現象はちょっと「謎」。
もしかすると、アストンマーティンはFRそしてクーペとオープンばかりという「同じようなクルマ」ばかりを揃えており、そのため顧客や市場がこれに「飽きて」きんじゃないかとも考えています。
なお、イギリスの自動車メーカーは同じような車ばかりを作る傾向が強く、アストンマーティンしかり、マクラーレンしかり、ロータスしかり、ランドローバーしかり。
よって、アストンマーティン以外のメーカーも遅かれ早かれ「アストンマーティンと同じ状況」に陥る可能性を内包しているのかもしれません。
今後はDBXとヴァルキリーの納車に期待
ただ、DBXは夏から納車が開始されると言われ、その後にはヴァルキリーのデリバリーも始まるはずなので、これらには大きな期待がかかるところ。
ヴァルキリーは一台5億円、そして限定150台なので750億円の売り上げが見込め、さらには一台1億3000万円の「ヴァルハラ」も500台が完売しており、こちらは全部で650億円。
生産完了までには数年を要すると思われ、もちろん売り上げ=利益ではないのでこの金額がアストンマーティンの懐に残るわけではありませんが、おそらくアストンマーティンにとっては今が一番苦しい時だと思われ、ここから先は「Jカーブを描いて戻すだけ」と信じたいところですね。
ちょっと気になるのは「DBX」で、これらがどのくらい受注を集めているのか。
今後のアストンマーティンの状況はDBXにかかっていると言っても過言ではなく、もしこれが売れなければ、今よりも厳しい窮状に陥るのかもしれません。
自動車会社の経営は難しい
こうやってみると、実に自動車会社の経営は難しいということになり、効率化を考えて既存のプラットフォームやエンジンを使い回すと顧客に飽きられ、しかし新しいことにチャレンジして「現金化」するまでには何年というタームで取り組まなくてはならないので資金が必要。
そして資金を外部から受け入れると自分たちの思うようなことができなくなり、リスクヘッジのために新規市場へと出て行ったり「SUV」を作ったりすると市場やファンから批判される、といった始末です。
「じゃあ一体どうすれば」ということになりますが、この状況で生き残ってゆくには、(開発コストを平準化し資金的なバックアップを得るため)やはりどこかのグループに属するしかなく、その意味ではブガッティやランボルギーニは、それらのブランド価値を大切にしてくれ、かつ伸ばすためのバックアップをしてくれるいい親元を見つけた、ということになりそうですね。
参照:Automotive News Europe