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4年前に世界を驚かせた「小さな巨人」、マクマートリー「スピアリング」の市販モデル、”ピュア”がついに発売目前。ただし1充電で走れるのは「25分間だけ」

マクマートリー スピアリング「ピュア」のティーザー画像

Image:McMurtry Automotive

| 驚異のプロトタイプからパーツを95%リファインし、ついに量産開始へ |

公道へと解き放たれることで今度は「一般人をも」驚かせることに

「EVの加速がどれだけ鋭くなろうとも、タイヤのグリップ限界(物理の壁)がある以上、これ以上のタイム短縮は不可能だ」

自動車工学の世界でそう囁かれていた常識を、文字通り“力技”で粉砕したイギリスのハイパーカー・マニュファクチャラーが存在し、それが英国の「マクマートリー・オートモーティブ(McMurtry Automotive)」。

2022年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(FoS)にて、元F1ドライバーのマックス・チルトンのドライブにより、従来の記録を完璧に塗り替える39.08秒という前人未到のヒルクライム記録を叩き出したあの「小さな怪物」をリリースしたガレージブランドです。

このクルマのスゴい(恐ろしい)ところは「静止状態でも2トンのダウンフォースを発生すること」で、この2トンというのは車体重量を超える数字でもあり、そのため「壁だろうが」「天井だろうが」どこにでも張り付いてしまうことができるというわけですね。

そしてこれまでぼくらがYouTube等で目にしてきた、ひっくり返ったプラットフォームに吸い付いた(奇妙な)姿はあくまで実験用のプロトタイプにしか過ぎず、2026年6月、同社はついに市販量産モデルとなる「スピアリング・ピュア(Spéirling PURE)」の最終ティザー画像を公開することに。

コンポーネントの95%を新設計し、2026年末のデリバリーに向けてカウントダウンが始まったこの「地上で最も小さな、そしてもっとも大きなダウンフォースを発生するハイパーカー」の異次元のスペックに迫ってみましょう。

「小さな巨人」、マクマ―トリー・スピアリングが強烈なダウンフォースを発生し”逆さ走行”に成功。ついに空想が現実に【動画】
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| マクマ―トリー・スピアリングはあらゆる意味で「常識を覆してしまう」存在である | 更に恐ろしいのは、このクルマがいままさに「市販されようと」していることである ときどき「理論上の過程として」聞かれ ...

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この記事の要約

  • 伝説のファン・カーが市販化: グッドウッドやトップギアで圧倒的なコースレコードを叩き出した、イギリスの「マクマートリー(McMurtry)」による怪物EVプロトタイプが、ついに量産最終モデルとしてベールを脱ぐ
  • 驚異の「停車時2トン」ダウンフォース: 車両底面のファンを23,000rpmで超高速回転させ空気を強烈に吸い出すことで、静止状態から車重を超える2,000kgのダウンフォース(地面への吸着力)を発生。理論上、逆さまの天井をそのまま走行可能
  • 中身はほぼ別物の進化: 一般公開される量産モデル「シェファリング・ピュア(Spéirling PURE)」は、プロトタイプから実に「95%」のコンポーネントを刷新。最大の弱点だった極狭なコックピットの快適性と空力造形を大幅に改良
  • 異次元の戦闘力と限定100台の価格: リア駆動(RWD)でありながら、0-60マイル(約96km/h)加速はわずか1.5秒(一部測定では1.38秒)。世界限定100台、価格は99万5000ポンド(約1.3〜1.4億円)から、2026年末までに最初の顧客へデリバリー開始

マクマートリー スピアリング:詳細

マクマートリーのファクトリーがあるのは、モータースポーツの聖地と呼ばれるイギリス・コッツウォルズ近郊の「ウートン=アンダー=エッジ」という由緒ある町です。

大富豪であり発明家でもあるサー・デヴィッド・マクマートリーによって設立されたこの新興メーカーは、現代のハイパフォーマンスカーが「どんどん大きく、重くなっていく」トレンドに対し、基本原則に立ち返った「超軽量・超コンパクト」というアプローチで挑んだことから生まれたもので、そのサイズも文字通り「極小」となっていて、というのもダウンフォースを発生させるための「要素」が(走行風を利用した)エアロパーツではなく、強制的に回転させて車体を地面に貼り付ける「ファン」だから。

よって広い面積を持つウイングやスプリッターが不要になり、かくしてこの珍妙なスタイリングを持つに至ったというわけですね。

なお、量産版「ピュア」は来週(2026年7月9日〜12日開催のグッドウッドFoS直前)に世界初公開がなされる予定となっていて、生産されるのは世界でわずか100台のみ。

今回公開された上面からのティザー画像によると、量産モデルはプロトタイプの特徴だった「あまりにも細長く、全幅が狭すぎる戦闘機のような異様なプロポーション」から一転、ルーフラインがフラットかつワイドに成形され、ボンネットベントやリアウィングの空力ディテールがより洗練された造形へとアップデートされており、これは大柄なドライバー(最大195cmまで対応)がレーシングスーツとヘルメットを着用した状態でも、サーキットでGに耐えられる居住空間を確保するための極めてロジカルな改良であると考えられます。

車種概要

量産モデル「スピアリング・ピュア」最大のハイライトは、もちろんのこと時速0km、つまり「ガレージに停車している状態」から2,000kg(2トン)ものダウンフォースを発生させられる独自の「ファン・システム(Downforce-on-Demand)」。

車体床下に設けられたスカート(ゴム製のカーテン)で密閉空間を作り、2基のファンを23,000rpmで超高速回転させることで床下の空気を瞬時に後方へと吐き出すというシステムを持ち、これによって車体の下を強烈な低圧(真空に近い状態)とすることで車体を強引に地面へ吸い付けることになるのですが(掃除機でモノを吸うような感じ)、車両重量が約1,300kgであるのに対し、吸い付ける力が2,000kgあるため、先述の通り「天井に張り付いたまま静止し、そのまま前進すること」が容易に可能となっています。

マクマートリー・シェファリング・ピュア(Spéirling PURE)詳細スペック

項目市販量産仕様(Spéirling PURE)スペック
パワートレインピュアEV(電動ツインモーター「e-Axle」)
最高出力1,000 bhp(1,000 馬力)
駆動方式RWD(後輪駆動) / トラクションコントロール&モータースポーツABS搭載
車両重量約 1,300 kg
ダウンフォース量最大 2,000 kg(時速0km時点から発生可能)
0-60マイル(0-97km/h)加速1.55 秒(条件により1.38秒を記録)
最高速度298 km/h※ギア比による制限
バッテリー容量 / 電圧100 kWh / 800Vアーキテクチャ
走行可能時間サーキットでの「GT3ペース」で約 20 〜 25分間
充電時間350kW急速充電器を使用して約 25分
生産台数 / デリバリー世界限定 100台 / 2026年後半より順次開始
ベース価格(英国)995,000 ポンド(日本円:約1億3,500万円〜 ※諸税・輸送費除く)

なぜ他のEVハイパーカー(リマックなど)より速いのか?「トラクション制限」のブレイクスルー

現在、ハイパフォーマンスEVの世界では、2000馬力級の出力を4輪で制御する「リマック・ネヴェーラ」や「ピンファリーナ・バッティスタ」などが絶対王者として君臨しています。

しかし、サーキットのラップタイム、あるいは静止状態からの瞬間的な蹴り出しにおいて、マクマートリーはそれら「2000馬力の4WDハイパーカー」すら凌駕する数字を持っていて、その秘密こそが前述のファンによる「静止時2トンのダウンフォース」。※ニュルブルクリンクの王者、メルセデスAMG Oneよりも速いラップタイムをホッケンハイムにて記録している

現代のハイパースポーツは、どれだけパワーを上げても「タイヤと路面の摩擦力」が限界を迎え、ホイールスピンを起こす「トラクション制限(Traction-limited)」に陥ってしまい、さらに通常、ダウンフォースは速度が上がる(時速150kmや200kmに達する)ことで空力ウィングが機能し始めますが、これでは低速コーナーや静止時からの発進(0km/h)ではもちろん役に立ちません。

しかしマクマートリー・スピアリングはスタートした瞬間から2トン分の車重が上から乗っているのと同じだけの強烈なグリップ力を極細のミシュラン製スリックタイヤ(フロント210mm、リア240mmという普通の乗用車並みのサイズ)に対して強制的に発生させ、結果として、リア駆動(2輪駆動)というトラクションに圧倒的に不利な構造であるにもかかわらず、パワーを無駄なく路面に100%伝えることができ、4WDの怪物たちを置き去りにする驚異の「0-60マイル:1.5秒以下」を達成しているというわけですね(ただ、強力な掃除機が作動しているようなものなので、車内はとんでもなくうるさいようだ)。

F1の歴史を変え、そして「禁止」された悪魔の技術

この「ファンを使って路面の空気を吸い出す」というアイデアはマクマートリーがゼロから発明したものではなく、元々は1970年代のモータースポーツ界にて活躍した天才デザイナー、ゴードン・マレーが手がけたF1マシン「ブラバム・BT46B(通称ファン・カー)」、そしてアメリカの「シャパラル 2J」という伝説のレーシングカーがルーツです。

1978年のF1スウェーデンGPに登場したブラバム・BT46Bは、初戦で他を圧倒する速さで優勝したものの、あまりの速さと「後方に小石やゴミを猛烈な勢いで撒き散らす」という安全上の理由、そしてライバルチームからの猛抗議により、わずか1戦のみでレギュレーションによって「禁止」されるてしまうのですが、その後ゴードン・マレーは自身の名を関した自動車メーカー、GMA(ゴードン・マレー・オートモーティブ)から「ファンを内蔵した」GMA T.50を発売したのも記憶に新しいところですね。

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マクマートリーは、モータースポーツのレギュレーションという縛りのない「富裕層向けの究極のサーキット用のおもちゃ」というクローズドな市場を見出すことにより、40年以上の時を経てこの“悪魔の技術”を現代の最先端EVテクノロジー(800V高電圧バッテリーと高速デジタル制御)とともに完璧に蘇らせたということになり、ファンが回るその音は、(外から聞いていると)まるでジェット機が離陸するかのような強烈な風切り音を響かせ、五感を強く刺激するたぐいのサウンドです。

結論

マクマートリー「スピアリング・ピュア」の量産化は、「1億円超の富裕層向けコレクターズアイテムがまた一つ増えた」というだけの話ではなく、これは、自動車の速さが「パワー(馬力)」や「タイヤの太さ」だけで決まる時代が終わり、独自のアイデアと物理法則のハッキングによって、全く新しいドライビングプレジャーの領域に到達できることを証明した「自動車史のターニングポイント」にほかなりません。

100kWhの大容量バッテリーを搭載しながらも、カーボンコンポジットモノコックの徹底的な最適化により、車重を「GT3レーシングカー(約1,300kg)」と同等に抑え、さらにGT3マシンと同等以上のペースでサーキットを20分間以上周回できる実用性をも確保した量産仕様。

2026年7月のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、この市販モデルが再びあの伝説のヒルクライムコースに挑む姿が見られるはずで、自らが打ち立てた39.08秒という「壁」に挑み、95%の部品を刷新した量産版のスピアリングが打ち破る瞬間を、世界中が固唾を呑んで見守ることとなりそうです。

タイヤの限界を超えた「コーナリング時に横Gが3.5G(一線級のフォーミュラカー並み)もかかる」という未知の重力体験。もし1億3,000万円の予算、そしてこの異次元の乗り物とサーキットを共にする技量があるならば、この“地球を吸い込む thunderstorm(稲妻)”をガレージに迎え入れてみるのもいいかもしれませんね。

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参照:mcmurtryautomotive

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