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| TVRは2017年に「オール英国」にて再起動、予約金を受けグリフィスの発売を目指していたが |
TVR、再び復活へ—今度こそ本物?
「不死鳥のように蘇るブランド」——そんな表現が最も似合うのがTVRかもしれません。
2013年にレズ・エドガー氏が経営権を取得し、2017年には「グリフィス」の復活を試みたものの実現しなかったこの英国スポーツカーブランドが、再び新たな所有者のもとで動き出すと報じられています。
今回TVRを買収したのはチャージホールディングス(Charge Holdings)。
同社は、2022年にEV化したフォード・マスタングのレストモッドを発表したチャージカーズ(Charge Cars)を傘下に持つ企業であり、その技術と経験はTVRの再生にも大きく寄与すると言われています。
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グリフィス復活計画。「電動化」がキーワードに
興味深いことに、Charge Holdingsは(まったくのニューモデルではなく)2022年に公開されたTVRグリフィス・コンセプトを生産化する計画を進めているとされ、かつてのコンセプトモデルは、5.0リッターV8(500馬力)を搭載した純ガソリン仕様であったものの、今回の復活プロジェクトでは “電動化パワートレイン” が中心となるもよう。
Top Gearによれば、この動きは「段階的な再構築計画」の一環であり、TVRは声明の中で次のように述べています。
「TVRは新型グリフィスのデリバリーを最優先し、高性能な内燃機関スポーツカーのレガシーを継続する。」
このコメントを見る限り、完全EV化ではなく ハイブリッドあるいは部分電動化 の可能性も残されていると考えられます。
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詳細は2026年初頭に公開予定
チャージホールディングスCEO、ポール・アバクロンビー氏は「より詳細な発表を年明けに行う」とコメントしており、ようやく“実現可能なTVR復活”の青写真が見えてきた段階ではありますが、これまでの経緯を考慮すると「まだまだ余談を許さない」状態。
TVRはこれまでも何度も再出発を試みてきたものの、資金調達や製造パートナーの問題から頓挫してきたという歴史を持っており、しかし、今回の新体制はEV技術を持ち、製品化経験のある企業によるものだけに、ブランド復活の本命 と見る向きもあるようですね。
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背景:なぜTVRは蘇り続けるのか?
TVRは1950年代から続く英国らしい“軽量×ハイパフォーマンス”の独立系スポーツカーブランドで、タスカン、サーブラウなど“個性の塊”のようなモデルでファンを魅了してきたという背景も。
その一方で、
- 小規模ゆえの不安定な生産体制
- 財政基盤の弱さ
- モデル開発の遅れ
などの理由から、倒産と復活を繰り返した歴史があり、それでもなおTVRを愛するファンが多いのは、他メーカーにはない 過激な走りとデザイン哲学 があるから。
電動化されるグリフィスがその精神をいかに継承するのか、非常に興味深いところでもありますね。
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電動化TVRに期待されるもの
電動化に際しては以下のような期待そして不安が入り混じった状態ではありますが、TVRファンにとっては「新時代の到来」となるのは間違いなく、いずれにせよ続報を待つしかないという状態です。
- EV技術による“瞬時のトルク”でTVRらしい過激な加速が実現する可能性
- 小規模メーカーでも電動化技術を使うことで競争力を維持できる
- 車体レイアウトの自由度が上がり、新しいTVRデザインが生まれる可能性
- ただし“軽量性”を維持できるかは最大の課題
TVRの挫折と栄光とは
そこでTVRの歴史についてざっと振り返ってみたいと思いますが、TVRは、1947年にトレバー・ウィルキンソン(Trevor Wilkinson)により、イギリスのブラックプールで創業された、長い歴史を持つスポーツカーメーカーで、その歴史は、いくつかの重要な段階を経ています。
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1. 創業と初期(1947年〜1980年代初頭)
- 創業と特徴(1947年): 創業者トレバー・ウィルキンソンの名(TreVoR)からTVRと名付けられる
- 初期モデル: TVRは、当初は小さなコーチビルダー(車体製造業者)であったものの、鋼管チューブラフレームにFRP(繊維強化プラスチック)製ボディを被せるという軽量ハイパワーなライトウェイトスポーツカーの製造を特徴として人気を獲得
- 初の市販モデル: 1957年にグランチュラを発表。その後、強力なエンジンを搭載したグリフィス(初代)なども登場し、この時期は経営権が何度か交代するなど、不安定な時期でもあった
2. ピーター・ウィラー時代と黄金期(1981年〜2004年)
- 経営者の交代: 1981年にピーター・ウィラーが社長に就任し、TVRは大きく躍進
- 成功作の登場: 1990年代には、2代目グリフィス(グリフィス500)やキミーラといった立て続けの成功作を世に送り出し、イギリス最大の独立系スポーツカーメーカーとなる
- 自社製エンジンの開発: この時代には、それまでの他社製エンジン(ローバーV8など)に頼る体制から脱却し、AJP8やSpeed Sixといった自社開発エンジンを搭載するサーブラウ(Cerbera)やタスカン(Tuscan)を発表し、高性能化を極める
- TVRの哲学: 「スポーツカーは大馬力で軽量であればそれでいい」という思想のもと、エアバッグ、ABS、TCSなどの安全装備や電子デバイスを一切搭載しないという硬派な車づくりを貫いたことでも知られている
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3. 経営の混乱と再建の試み(2004年〜現在)
- ロシア資本への買収: 2004年にロシア人実業家に買収されるものの経営は混乱し販売は激減。2006年12月には経営破綻に至る
- 再建の動き: 2013年に上述のレズ・エドガーへと経営者が代わって再建が図られ、2017年には久々の新型車となる3代目グリフィスが発表される
- 現在: チャージホールディングスのもとで再建が図られる
まとめ:今度こそ本当に復活するのか?
チャージホールディングスによるTVRブランドの取得は、これまでの“言うだけ復活”とは異なる現実味があり、EV技術を持つ企業が主導することで、ようやく量産に手が届く可能性が出てきた、というのが現在の状況。
2026年初旬の詳細発表、そして電動化された新型グリフィスがどのような姿で登場するのか——。
TVRファンはもちろん、スポーツカー好きであれば目を離せないフェーズへとTVRは突入したのかもしれません。
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