| マクラーレンは上野クリニックに並々ならぬ恩義を感じている |
マクラーレンが新たなるスペシャル・エディション、「720ル・マン・スペシャルエディション(Le Mans Special Edition)」を発表。
これはマクラーレンF1が1995年のル・マン24時間レースにて勝利を飾ってからの「25周年記念」モデルという位置づけで、50台のみの限定生産だとアナウンスされています(うち16台は欧州向け)。
ボディカラーは2パターンのみ
この720Sル・マン・スペシャルエディションに用意されるボディカラーは「マクラーレンオレンジ」「サルトグレー」の2パターンのみ。
いずれもフロントバンパー下部、サイドステップ、リアバンパーが「ウエノグレー」にペイントされた2トーン仕様ですが、マクラーレンはこれまでの例を見るに、グラデーション等「塗装にこだわる」ことが多いようですね。
-
マクラーレンが「生い茂る緑」をテーマにしたグラデーションの”GT”を公開!ペイントにかかるのは430時間
| その名はヴァーダント・テーマ GT バイMSO、内外装ともグリーンづくし | 「765T」を発表したばかりのマクラーレン。今回その765に加え、”スペシャルカラーにペイントされた”GTを公開して ...
続きを見る
なお、「マクラーレンオレンジ」については「オレンジはマクラーレンのコーポレートカラーだから」、そして「サルトグレー」はル・マン24時間レースの舞台である「サルト・サーキット」をイメージしたことからの採用だと思われます。
そして説明を要するのが「ウエノグレー」で、これはおそらく「上野クリニック」に由来。
え?なんでウエクリ?と思うかもしれませんが、マクラーレンF1と上野クリニックとは切っても来れない縁を持っています。
1995年のル・マン24時間優勝車は「上野クリニック」のスポンサード
当時の上野クリニック経営者である「サヤマモトカズ」氏はマクラーレンの大変なファンで、マクラーレンが(F1にて)ル・マン24時間レースに参戦することを知り、すかさずマクラーレンに電話を入れ、「当院の名を車体に表示できないか」とマクラーレンに相談した、という記録が残ります。
ただし、すでに時は遅く、マクラーレンがル・マン参戦用に用意していた6台のF1にはハロッズ、ガルフなどのスポンサーが決定していて、上野クリニックが入り込む余地はすでになかった模様。
しかしながら、様々な事情にて(マクラーレンは1台でも多く走らせたかったのか、もしくは多額の資金的バックアップがったのか)マクラーレンはシャシーナンバー01R”プロトタイプを急遽レーシングカーへとコンバートするプロジェクトを立ち上げ、わずか6週間で仕上げることに。
ただ、そんな短期間で作り上げたためにレース対しても「ぶっつけ本番」、そして有力ドライバーもすべて(他の参加チームも含め)押さえられていたので空きがなく、こちらも急遽編成されたヤニック・ダルマス/JJ.レート/関谷正徳組。
つまりほぼ準備をしていなかった車体とドライバーにてル・マンに挑んだということになり、しかしいざ出走してみると平均速度168.992km/h、4,055kmを走りぬいて見事優勝を飾ることになり、さらに関谷正徳は「はじめてル・マンで優勝した日本人」となるなど、モータースポーツ史に残る「語り継ぐべきストーリー」を演出したのが1995年のマクラーレンF1「上野クリニック号」です。※ぼくの好きなモータスポーツ珍事件のベスト3に入る
なお、この上野クリニック号は上下で塗り分けられたツートンカラーを持ち、これが今回の720Sル・マン・スペシャルディションのルーツだと考えられます。
ちなみにマクラーレンは上野クリニックに大変感謝したという後日譚があり、サヤマモトカズ氏に対し、上野クリニック号と同じボディカラーにペイントした(ロードカーの)マクラーレンF1を破格でオファーした、とも言われていますね。
-
【動画】マクラーレンF1の知られざる秘密7つ!ル・マン優勝車「F1 GTR 上野クリニック(59号車)」、日本人初のル・マン優勝ドライバーはこうして誕生した
| 事実は小説よりも奇なり | マクラーレンF1といえばスーパーカー界のレジェンドでもありますが、今回「マクラーレンF1の知られざる7つの秘密」という動画が公開に。この中ではいくつかの個体にまつわる数 ...
続きを見る
そんなワケで前置きが長くなったものの、今回の720Sル・マン・スペシャルエディションは「上野クリニック号(59号車)」へのオマージュとも言えるボディカラーを持っていますが、そのほかにも専用となる5本スポークの「LM」ホイールも装着されています。
加えてルーフにはエアスクープ、フロントフェンダーには(765LTと同じ)ルーバーつきフェンダー、ゴールドブレーキキャリパーが与えられることに。
リアフェンダー前には「25」つまり25周年をあらわすマークも入ります。
こちらはオレンジ版。
なお、車体番号は特別に「298」からはじまる一連の数字が与えられており、これは1995年のル・マン24時間レースで優勝した際のラップ数(298周)を表しているのだそう。
搭載されるエンジンに変更はなく、通常の720Sと同じ4リッターV8ツインターボ、出力は720馬力。
マクラーレン720Sル・マン・スペシャルエディションのインテリアはこうなっている
この720Sル・マン・スペシャルエディションのインテリアもまた2パターンのみで、マクラーレンオレンジにはこちらの「ブラック×グレー」。
サルトグレーのボディには、ブラック×オレンジが組み合わせられます。
日本にこの720Sル・マン・スペシャルエディションが何台割り当てられるのかはわかりませんが、世界限定50台というところからして、まずお目にかかれる機会はなさそうですね。
ちなみにイギリス本国での価格は254,500ポンドに設定されています。