
| さすがはロールス・ロイス、言うことが違う |
ロールス・ロイスは「台数を追わない」──生産拡大しないラグジュアリーブランドの哲学
ほとんどのプレミアムブランドは近年、販売台数を着実に拡大し、より幅広い市場への進出を進めていますが、ロールス・ロイスはこの流れとは真逆の戦略を選択しています。
ロールス・ロイスの北米新社長であるジョン・コルベス氏は、「販売台数を追い求めることは“底辺への競争”だ」と語り、台数ではなく“ビスポーク(完全オーダーメイド)”でブランド価値を高めることに注力しているという方針を明かしました。
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販売台数は過去3番目、でもあえて“増やさない”
ロールス・ロイスは2024年に5,712台を販売。これは過去3番目の販売実績であり、2023年の5,063台から大きく増加しています。
ラインナップには電気自動車の「スペクター」や人気SUVの「カリナン」が揃っており、生産を拡大すればさらに販売台数を伸ばせる状況にも関わらず、ロールス・ロイスは今回「あえて増やさない」ことを選択するとコメント。
ロールス・ロイスは工場拡張に約550億円を投資、それでも生産台数は据え置き
同社は現在、イギリス本社工場の拡張に約3億7,000万ドル(約550億円)を投資中ですが、この工場拡張も「生産台数を増やすためではなく、ビスポーク専用設備を拡大するため」だと説明しています。
「私たちは“誰でも乗れるクルマ”を作りたいわけではない。」
「工場を拡大しても生産台数は増やさないブランドなど他にあるだろうか?」
──ジョン・コルベス(ロールス・ロイス北米社長)
台数を追えば「底辺への競争」に陥る
コルベス氏は、もし販売台数を追い始めればどうなるかを次のように指摘し、彼はこれを「ラグジュアリーブランドが陥る“底辺への競争”」と表現したうえで「ロールス・ロイスはこの道を断固として避ける」とも。
- 台数が10,000台になれば、次は15,000台を目指すようになる
- 工場をさらに拡張し、生産を維持する必要が生まれる
- 結果、価格や希少性が下がり、ブランド価値が損なわれる
ビスポーク(完全オーダーメイド)で利益を拡大
ロールス・ロイスは現在、Bespoke(ビスポーク)プログラムに最も注力しています。これは顧客一人ひとりのために、世界に一台だけのロールス・ロイスを作る究極のオーダーメイドサービスで、販売台数を増やさなくても、顧客一人当たりの単価を上げることで十分に利益を確保できるのがロールス・ロイスの強みです。
さらには生産台数を絞ることで、中古市場でのリセールバリュー(資産価値)が維持される点も、顧客にとっては大きな魅力となるわけですね。
「近年は、特にロールス・ロイス・プライベート・オフィスの導入以降、個性やビスポークへの要望が急速に高まっている。」
ブランド哲学:控えめで、過剰に主張しない
ロールス・ロイスはデザイン面でも“控えめなラグジュアリー(クワイエットラグジュアリー)”を貫く方針で、マイバッハのように「ロゴを積極的にアピールする派手なデザインを用いず、ロゴを過剰に使わず、あくまで上品でさりげない美学を追求する」とも。※マイバッハは近年その主張を強めており、エアインテークなどいたるところにマイバッハロゴが散りばめられる
「私たちの製品やアクセサリーには、ロールス・ロイスのロゴが目立つように貼り付けられているわけではない。」
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大型スクリーンは「導入しない方針」
さらには自動車業界全体が大型デジタルスクリーンを多用する方向に進む中、ロールス・ロイスは「敢えてこのトレンドに逆らう」とし、“過度に未来的なインテリアは、顧客体験を損なう”という考えを述べ、大型スクリーンの導入は今後も見送る見込みです。
「私たちの顧客は、物理的なノブやスイッチを操作する tactile(触覚)体験を非常に大切にしている。」
「エアコンの吹き出し口が曇ったり、手触りを楽しむような細やかな体験が、ロールス・ロイスらしさだ。」
まとめ:ロールス・ロイスは「台数より顧客価値」を選ぶ
- 販売台数を増やさず、真の希少性と顧客体験を最優先
- 工場拡張の目的は「生産増」ではなく「ビスポーク強化」
- 派手なブランドアピールやトレンドに流されない、控えめで上質なデザイン哲学
- デジタル化よりも「触れる楽しさ」を重視したインテリア作り
ロールス・ロイスは「数字を追わない勇気」を持った、唯一無二のラグジュアリーブランドということになりそうですね。
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参照:CARSCOOPS